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構陣師  作者: ゲラート
第1章 サミュノエル動乱
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残る主力

「伝令!貴族派はクルデタヌ領に撤退しました!」

伝令兵は軍議の場に入ってきて情報を伝えた。

「ご苦労様です。下がって下さい」

「はっ!」

伝令兵は敬礼をして軍議の場から出ていった。


「やつらは多くの兵を消耗し、オークとの同士討ちによる被害も多い。ここは一息で押し潰すべきです!」

血気盛んな将軍が声を荒らげて言った。

「そう簡単な話ではないです。何せ貴族派の主力を張る面々には全くダメージがないんですからね」

参謀は深刻な顔をして言った。

「主力…。ネルキソスさんや『味方殺し』さんたちですね」

ヒカリは真剣な顔で返した。

「そうですね。今戦場で最も注意すべきなのはその2人でしょう。皆様わかってるとは思いますが『落涙』様のためにも改めて説明しますね」

参謀はそう言って前にある黒板に何か書き出した。


「まず最も警戒すべきなのは『虚言師』ネルキソスですね。貴族派軍の核を担っているのは間違いなく彼です」

参謀はまずネルキソスの名前を書き、隣にニヤケ面の男の絵を描いた。

「彼が名を上げたのは家督争いの時ですね。家督を争っている弟の有能な部下を次々と調略し、敵方が疑心暗鬼に陥った所を一気に潰す戦略は本当に見事でした」

参謀はネルキソスを称賛した。

「でも今回ばかりは調略とか無理だろ。貴族派に寝返るメリットがなさすぎる」

「それどころか逆にこっちに寝返られる始末だ。案外大したことないんじゃないか?」

将軍2人が冷静な発言をした。


「そうですね。彼らしくない所は確かにあります。ただオークを倒した罠は侮れません」

参謀は神妙な顔で言った。

「でも結局我々は引っ掛からなかったから意味ないですよね」

「それどころか全部オークが引っ掛かりましたよね。罠の場所とか伝わってなかったんでしょうか?」

将軍たちはわけがわからないという顔をした。

「それについてですが、オークキングの焼き豚からこんな物が見つかりました。おそらくオークはこれを元に攻め寄せたのかと」

参謀は燃え残った地図らしき物の切れ端を配った。

「この矢印は…。『魔眼』様が作った罠が仕掛けられた場所を通るようになってます!」

副参謀は驚きの声を上げた。

「オークキングは偽の情報を掴まされていた。だから攻め寄せるオークは味方であるはずの貴族派の罠に掛かってしまったんです」

「それって完全に中に入り込まれてるってことだろ?いくら何でも杜撰過ぎだろう」

将軍の1人が呆れたように言った。


「大体破壊部隊の侵入経路じゃなくてオークの退路に勇者を配置するって何だよ。それに密偵からの報告によるとわざわざオークに攻撃したって話だしよ。オークを切り捨てるにしてもタイミング悪すぎだろ」

別の将軍がそんな疑問を口にした。

「そうですよ。ただの勇者とぶつけてやればよかったんです。そうすれば少しは消耗して被害も少なくて済んだのに!」

修復部隊の隊長はそう言って拳を机に叩きつけた。

「それは無理でしょう。あの破壊部隊にかかれば勇者タダノなど跡形もなく消滅するでしょうから」

だろうな。あの鎧を爆弾に変えられて終わるだろう。

「まあ侵攻ルートの見極めが出来なかったのは確かでしょうね。偶然勇者が伏せていた所にオークが来てしまった。それだけでしょう」

参謀はそう言って話を締め括った。


「次に『味方殺し』ですね。彼らの強さはやはり機動力の高さです。気が付いた時にはすでに背後から潰される。そのせいで潰された貴族は数知れないです」

参謀は『味方殺し』のことを黒板に書いた。

「知らないうちに攻められるのは怖いな。今までまともに当たってなかったのは運がよかった」

将軍の1人が神妙な顔をした。

「とはいえ『構陣師』殿の索敵能力の前では無意味だろ。警戒されてない時に貴族派を倒すのとはわけが違う」

他の将軍は楽天的な意見を出した。

「我々の方が貴族派とは錬度も違います。動きを捕捉しつつ数で抑えれば封殺出来るでしょう」

参謀は余裕な笑みを浮かべながら言った。


「まあとりあえずまず迎撃して来るだろう三名家と宮廷騎士団長をどうにかしましょうか。傲慢で虚栄心に満ちた彼らは全く活躍出来なくて焦ってるらしいでしょうね」

参謀は今度は布陣図を取り出した。

「三名家?」

ヒカリは知らなかったのか首を傾げた。

「それぞれ剣、槍、弓の名手として知られる貴族を祖とする一族です。まあ今の当主は素質はあっても鍛練を怠っているそうですが」

参謀はヒカリの方を見て言った。

「…何だか紅雪が剣の名家さんの血を求めているんですが。どうしましょう?」

ヒカリはそう言って白い糸を蠢かせているベニユキを掲げた。

「貴族派は魔王軍と繋がっていたのがはっきりした。『落涙』が出ても他国としては文句が言えないだろう」

武闘派のレオナルド王子が政治的な意見を口にした。

「なら自分は宮廷騎士団長を倒すであります」

「私は槍の名家をやろう」

エリザとロベリアも名乗りを上げた。

「ならあたしは弓の名家を狙い射つわ」

サヤは黒弓を構えて言った。

「勇者パーティーが出るのは心強いが…。まだ主力が出る前に出して大丈夫か?」

元帥は神妙な面持ちで言った。

「大丈夫であります。瞬殺すればよけいな体力は使いません」

エリザは胸を張って言った。

「わかりました。おまかせします」

参謀は作戦を了承した。

「ふむ。後は細かい作戦を詰めよう」

それから軍議が進んで行った。

繋ぎ回は取っ掛かりがなくて難しいです。今回はモブの将軍が多すぎてわかりにくいかもしれません。

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