光対オークキング
「なんだ。剣を抜かないのか?」
オークキングは紅雪を鞘に納めたままの私を見下すような目で見ながらいいました。
「私が剣を抜くのはしかるべき時です。今はその時ではありません」
我ながらすごくもったいぶってますね。自分の手の内を明かさないためとはいえ大げさに言い過ぎました。
「ブヒャヒャヒャ。その言葉すぐに後悔させてやるわ!」
オークキングは棍棒を振り上げて殴りかかってきました。
「ふっ!」
私はすかさず紅雪を抜いて棍棒を弾きました。
「なっ?!」
オークキングが驚いてる間に右腕に袈裟切りしました。
「ブヒィ!」
…浅いですね。やはりまだ戸惑いがあるからでしょうか。
「貴様ぁ!そんなに早く抜くのは卑怯だぞ!」
オークキングは切られた右腕を押さえながら叫びました。
「ウソは言ってませんよ。単に紛らわしく言っただけです」
私は横目でオークキングの血で紅雪に追加された能力を見ながら答えました。…ちゃんとイドルさんに習って勉強しましたからね?
「なら剣を鞘に納める前に倒すだけだ!オークタックル!」
オークキングはわかりやすい技名を言って突進して来ました。
「とっ」
私は突進してくるオークキングに足払いをかけました。
「ブヒッ?!」
バランスを崩している間にすかさず背中を横で一閃します。
「白峰鏡月流、過月」
沙夜ちゃんからは『恥月』と呼ばれてますけどね。海賊漫画の剣士にとっては背中の傷は剣士の恥ですから。
「くっ。おのれぇ!」
オークキングは棍棒を振り上げて叩きつけてきました。
「とっ」
私は横に飛び、シールドをトランポリン代わりに上空に飛び上がりました。
「ふっ!」
わたしは上空にシールドを出し、紅雪を両手に持ちました。
『紅雪、パワースラッシュです』
私は紅雪の糸を通して指示を出し、オークキングに切りつけました。
「ぐっ!」
オークキングは棍棒で受け止めようとしましたが、紅雪は左肩を切り裂きました。
「ぐわあーーー!」
オークキングは肩を押さえて倒れました。
「勝負あり、ですね」
私は紅雪をオークキングの首筋につきつけました。
ーーー
「ま、待ってくれ!命だけは!」
わしは目の前の勇者に向かって命乞いをした。
「そう言った人たちの声を聞き入れたことはあるんですか?」
勇者は静かな口調で言った。
「頼む!もう二度と人間に手出しはせん!だから見逃してくれ!」
わしは勇者に向けて頭を下げた。
「…約束ですよ。二度と悪いことはしないで下さいね」
勇者は剣を鞘に納めて背を向けた。
「あ、ありがとうございます!」
…ふっ。バカめ!あんなのウソに決まっているだろう。戦いぶりから甘さを感じたから泣き落として正解だったな。逃げたら悪行の限りを尽くしてやるわ!
「そんなことはいいから早く行って下さい。人が来たらどうしようもないですから」
勇者はそう言って背を向けた。
「わ、わかった」
…いや、待てよ。油断している隙に倒してしまえば手柄になる。魔王軍での出世は間違いなしだ。今ならわしのノーズフレアでやれるはずだ。どうせなら城門ごと焼き払ってやる!
「いつか必ずこの礼をさせてもらう」
わしはそう言って鼻に息を吸い込みーーー
「ノ」
ーーー吐こうとした瞬間自分の腹が目に入った。
「ごめんなさい」
勇者の呟きと共にわしの体は激しく燃え出した。
だいぶあっさりになってしまいました。中ボスに苦戦する実力でもないから仕方ない面もありますが。