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構陣師  作者: ゲラート
第1章 サミュノエル動乱
35/185

切り崩し

「これっぽっちだと?!ふざけるな!」

兵糧を配給された兵士は叫んだ。

「我慢してくれ。補給線がズタズタで補給が来ないんだから仕方ないだろう」

兵糧担当の兵が他の兵士をたしなめた。

「クソ!忌々しい下民どもが!」

「卑しい盗賊のような真似をしおって!」

貴族派の兵士たちは次々に不満を漏らした。


ーー


「敵は相当食料がなくなってるようです。配給も少なくなって来ています」

密偵がデビルズアイが送ってきたのと大体同じ情報を参謀に伝えた。

「ご苦労様です。オークキングの動きはどうですか?」

参謀は密偵に尋ねた。

「しばしば使者が出入りしています。ですが動く気配はないですね」

別の密偵が淡々とした口調で言った。

「デビルズアイを通して聞いたがオークキングとの交渉はすでに成立している。。おそらく密偵にオークとの交渉が難航しているのを印象づけるために使者を出入りさせてるんだろう」

おれは密偵の情報に補足した。

「ならなぜ動かないんでしょうか?」

 ヒカリはそう言って首を傾げた。

「タイミングを見計らってるか、それとも弱った所をまとめて始末したいのか…。どっちにしろ互いに利用しようとしてるのは確かね」

サヤは冷静に分析した。


「今はオークキングのことは後回しにするしかないですね。とりあえず貴族側の士気を下げることを考えましょう」

参謀はそう言って衛生兵長を呼んだ。

「捕虜のケガの様子はどうでしょうか?」

「はっ!今日負傷した兵もすっかり回復しております」

衛生兵長は敬礼して答えた。

「やはりうちの癒術士は優秀ですね。これなら作戦に入れますね」

参謀はそう言ってニヤリと笑った。


ーー


「おい。何かいい臭いしないか?」

貴族派の兵士が隣の兵に話しかけた。

「は?空腹で頭おかしくなったのか?」

別の貴族派の兵士はその兵士に辛辣な言葉を投げ掛けた。

「だったらここに来て嗅いでみろよ!」

兵士はそう言って別の兵士を引っ張った。

「…本当だ!どこからしてくるんだ?」

「何か上の方から来てないか?」

兵士たちが城壁を見上げると、兵たちがバーベキューしているのが見えたようだ。


ーー


「ちょっと沙夜ちゃん!肉ばかり取りすぎですよ!」

ヒカリが肉を食べてるサヤに注意した。

「いいじゃない。毒出すの割とダルいんだもの」

サヤは肉を頬張りながら言った。

「わたくしの出した野菜も食べてほしいですわ」

チェリルはとうもろこしやピーマンを生み出しながら言った。

「すごいですねチェリルちゃん。これなら兵糧が尽きようがないです」

ヒカリはタマネギを食べながら言った。

「お肉はどうしようもないですが植物なら魔力切れするまで出せますわ」

チェリルは手からパプリカを出しながら胸を張った。


「ほら、あなたたちも食べて下さい」

ヒカリは捕虜になった貴族派の兵に肉を差し出した。

「い、いいのか?おれたちは国を裏切ったんだぞ」

貴族派の兵は震え声で言った。

「仕える人が裏切ったなら逆らえないのも無理はないです。いちいち責めても仕方ないでしょう」

ヒカリはそう言って微笑んだ。

「それにあなたたちはせっかく命を拾ったんです。無駄にしないためにはまず食べましょう」

ヒカリはそう言って肉にかぶりついた。

「…ありがとうございます勇者様!」

「よし!食うぞ!」

捕虜の貴族派の兵たちは競い合うように肉を食べ出した。


「やれやれ。仮にも戦場でのんきなものだ」

おれは肉を取りながら呟いた。

「見張りはいるから平気よ。それに捕虜に食べさせるのが目的だしね」

サヤはおれの独り言を拾ってきた。

「わかってる。それにしてもうまく言いくるめたな」

おれは肉にむさぼりついてる貴族派の兵士たちを見た。

「うまい!最近ろくなメシ食ってなかったからありがてえよ!」

「あいつらが見たら悔しがるだろうなあ」

そんなことを言ってる間におれは風で臭いを貴族派の兵に送った。


ーー


「クソ!あいつらこれ見よがしに」

「おれたちは腹空かしてるのにズルいぞ!」

城壁の下から貴族派の兵たちが騒いだ。

「どうやらかかったようね」

サヤは矢に手紙を巻き付け、兵たちの近くに射た。

「こ、これ矢文か?」

「なになに…。『武器を捨ててつるに掴まって降伏すればバーベキューに参加させてやる』だと?!」

矢文を読んだ兵たちは騒ぎ出した。

「さあ、救いを求めるならつるを掴みなさい」

チェリルは手紙通りつるを下ろした。

「おれは降伏するぞ!こんな負け戦に付き合ってられるか!」

「おれたちにもバーベキュー食わせろ!」

兵たちは我先にとつるを掴み出した。


ーー


「ネルキソス様。城を取り囲んでいる兵が次々と降伏しております」

伝令の兵がネルキソスに伝えた。

「全く。初めから食料くらい用意してないからこうなるんですよ」

ネルキソスは取り分けられた豚の丸焼きを受け取りながら言った。

「こういう時のための空間魔法ですよね。備えてないなんてバカすぎます」

ネルキソスの部下も相づちを打った。

「どうせ最初から彼らには期待していません。作戦のカギはオークですからね」

ネルキソスはうさんくさい笑みを浮かべた。

「フフフ。やつらに絶望を見せてやりましょう」

部下は悪どい笑顔を浮かべて焼豚を食べた。

かなり雑になってしまいました。

次でオークが出る予定です。

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