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構陣師  作者: ゲラート
第1章 サミュノエル動乱
31/185

襲撃

「そろそろ領地に入るな。みんな、気を引き締めろよ」

金貨輸送車の護衛についている商会の用心棒が神妙な面持ちで言った。

「任せろ!おれたちAランク冒険者がついてたら楽勝だぜ!」

「Sランクがいなくても貴族派の私兵なんておれらの敵じゃねえよ!」

サヤが言うところのフラグを立てまくってるな。何か来たらどうするつもりなんだ?

「まあ『構陣師』様の召喚獣もいるから大丈夫だろう。よほどのイレギュラーがなければ索敵だけだろうが」

用心棒と冒険者たちは周りに漂っているデビルズアイとブラッククロウを見ながら言った。


『うーん。やっぱり索敵しか期待されてないのかなー。私たちそれなりに戦えるんだけど』

デビルズアイのアイの念話が飛んできた。

『見た目が見た目だからな。学生時代にダンジョン潜ってた時もそこまで戦闘員としては使ってなかったししかたないだろう』

『あー。確かにそれはあるかもね』

アイは納得したように念話を返してきた。  


『それにしてもこの襲撃計画確かなの?ここの領主って貴族派の副派閥長だよね。反乱前に戦力を減らすよりは温存した方がいいんじゃないの?』

アイは最もな疑問を投げ掛けてきた。

『貴族派派閥長が全責任を副派閥長に押し付けたからな。このチャンスを逃したら後がないと誰かが吹き込んだんだろう』

『なるほどー。あの人なら笑ってそういうことするだろうね』

アイは呆れたような口調で言った。

『一応副派閥長の所だから最大限注意は払うが…。何もない限り出る幕はなさそうだな』

『そうだね。とりあえず索敵がんばるよ!』

アイは元気よく返した。


ーー


「2時ノ方向、敵影アリ!数、500!」

ブラッククロウのナイアがデビルズアイの念話を代弁した。

「了解。魔法隊、弓隊、銃隊撃て!」

護衛のリーダーの言葉と共に近付いて来ていた敵に攻撃が放たれた。

「な、何だ?!」

「奇襲したはずなのになぜ…」

攻撃を受けた私兵たちは動揺して動けないようだ。

「続ケテ5時ノ方向カラ300、7時ノ方向カラ300、11時ノ方向カラ400!」

「遠距離攻撃部隊は各自3方向に分かれて攻撃!」

護衛隊長の指示で各自迎撃している。即席の割に連携が取れてるな。

「冒険者隊はパーティー単位で迎撃に移れ!護衛部隊は漏らした敵を返り討ちにしろ!」

「「おう!」」

冒険者と護衛が勢いよく返事して迎撃していく。


「パワー・スラッシュ!」

黄色い鎧を着た冒険者が剣を振るってまとめて私兵を蹴散らした。

「バカめ!隙だらけーぐわ!」

斬りかかった私兵に火の玉が炸裂した。うまい連携だな。

「また無意味に大技連発して…。少しは考えて戦いなさい」

赤いローブを着た女魔法使いが黄色の鎧に食ってかかった。

「そんな必要ないだろ。おれにはお前がいるんだから」

「は、はあっ?!そんなこと言われてもうれしくなんかないんだからね!少しは注意しなさい!」

典型的なツンデレというやつか。わかりやすいな。

「はいはい。わかってるわかってる」

黄色の鎧はわかってない様子で流した。まあ周りから見るとあれだが本人からしたら単なる罵倒だから気付かないのは無理もないのかもしれない。


それから冒険者と護衛は数の不利もものともせず貴族の私兵を蹴散らしていった。

「何だこいつら…。たったこれだけの相手に何でこんなにやられてるんだ」

「Aランクってのは化け物かよ」

私兵たちは呆然と立ち尽くしている。状況が状況だから無理もないか。

「おいおい。貴族の私兵ってのは弱いな。それだけいるのに少数の冒険者に負けるなんてよ」

ハゲの大男が私兵たちをバカにしながら言った。

「お前はBランクで新人潰されのカマセルヌ!」

「なぜ冒険者なのに貴族派につく?!」

新人潰され…。要はサヤが言うところのテンプレのやられ役だな。

「チッ。バカか。そんなの大穴狙いで勇者に賭けて大損したからに決まってるだろ!」

かませハゲはそう言って拳を振り上げた。

「勇者が大穴っていつの話だよ。冒険者なんだから後でいくらでも『構陣師』様に賭けられただろうが」

大きな盾を持った男が冷静に問い掛けた。

「おれはあんな紙切れの存在なんて知らなかった!ちゃんと伝えないギルドが悪い!」

「え、ギルドの掲示板に大々的に貼り出されてたじゃん。完全に自己責任じゃん」

槍を持った女の冒険者は呆れながら言った。


「うるさい!てめえらにはおれのストレス解消に」

かませハゲが喋ってる時何かがかませハゲに向かって飛んでいった。

「ぐわあああ!」

右腕に矢が刺さったかませハゲは絶叫を上げた。傷が変色してるってことは何か盛ってるな。

「な、何だ?!体が痺れるぞ!

男は体を震わせながら矢を引き抜く。

「ふふっ。『魔眼』お姉さまリスペクトの麻痺毒の味はどうですか?」

ボウガンを構えた女が木の陰から出てきた。見ず知らずの冒険者にまでお姉さま呼ばわりされるなんてさすがサヤだな。

「同じ冒険者のよしみで命だけは助けてあげます。さあ、皆様。そこの哀れなハゲを引っ捕らえなさい」

「いや、『魔眼』様リスペクトなら自分で縛れよ」

ボウガン女の言葉に戦士や武闘家といった前衛がかませハゲに詰め寄った。


「くっ。こうなったらここの領主にもらったこれを使うしかねえ!」

左手で懐から何かを取り出したかませハゲが叫んだ瞬間銃声が2発響いた。

「ぐぎゃあああ!」

2発の銃弾のうち1発は手から注射器のようなものを弾き飛ばし、1発は左腕を撃ち抜いた。

「はっ。あんなこと叫びながら取り出した物を黙って見てるわけあるかよ」

カウボーイハットを被ったガンマンはそう言って銃口を吹いた。

「…っておい!あの注射器あいつに向けて落ちてねーか?!」

冒険者が言う通り注射器はかませハゲの肩に目掛けて落ちてくる。

「ちっ!」

「この!」 

すかさずボウガン女とガンマンが同時に矢と銃弾を放つ。だが位置が悪かったのか矢と銃弾がぶつかり合った。

「邪魔すんな嬢ちゃん。すっこんでろ」

「はあ?おじ様こそ邪魔なんですけど」

「言ってる場合か!ああっ!」

注射器はかませハゲの肩に突き刺さり、中の薬が注入された。


「おおっ!力がみなぎって来たぞおぉぉ!」

叫ぶかませハゲの筋肉がふくれ上がり、上の服がビリビリに破れた。

「ちっ。嬢ちゃんがよけいなことしたからこんなことになったんだ」

「は?そもそもおじ様が早撃ちを自慢して注射器を弾いたのが悪いでしょうが!」

ガンマンとボウガン女が言い争う間にかませハゲの肌が緑色になり、耳が尖っていった。

「トロル?!あの薬そんなヤバい代物なのかよ!」

「見た目変わってないな。ハゲのままだし」

Aランクは余裕を持っているトロル相手は慣れてるのかもしれない。

「ブーーー!ブーーー!」

かませハゲトロルは叫びながら拳を振り上げた。すかさず盾を持った冒険者が盾で受け止めたが、遠くに飛ばされた。

「並のトロルのパワーじゃないぞ!腐ってもBランクが変化しただけはある」

「だったら毒矢の出番ですね」

ボウガン女はトロルを狙い撃った

「ブブブー!」

トロルは不意打ちにも関わらず矢を避けた。

「速い?!でかいのにスピードもあるんですか?!」

ボウガン女は驚きの声を上げた。

「だったら範囲攻撃よ。フレイムスパイラル!」

「ギガントロック!」

今度は炎の渦と巨大な岩がトロルを襲った。

「ブブーブ!」

トロルは炎の渦を受け止め、巨大な岩を砕いた。

「効いてない?!何なんだよこのトロル!」

「おれたちじゃどうしようもないのかよ…」

冒険者たちは絶望したように呟いた。


『しかたない。アイ、ブルー。魔筆を借りるぞ』 

『『了解!』』

了解を得たからおれはアイとブルーの魔筆を使い召喚魔法陣を書き上げた。

『よし。魔力を注いでくれ』

『オーケー、マスター!』

魔力を注がれた召喚魔法陣は蒼く輝いた。

『蒼き氷の牙よ。絶対零度の眼差しで目に映る全てを凍てつかせろ。リンクサモン。コキュートス・フェンリル』

口上を唱えると召喚魔法陣から蒼い狼の耳と尻尾をつけた少女が現れた。

『…マスター。状況は?』

『敵が薬を打ってトロルになった。冒険者と護衛が危ないから原型をとどめたまま無力化してくれ』

おれはコキュートス・フェンリルのリンに説明した。

『了解。すぐ凍らせてくるね』

リンは頷いて姿を消した。


「ブーブッブッ!ブブーブブ」

トロルはトロル語で何か言いながら笑っている。通訳がいないと全くわからんな。

「うるせー!人の言葉を喋れよ!」

「何で薬飲んだだけで人の言葉喋れなくなってるんだ!」

元々頭がトロル並だからじゃないか?よく知らんからわからんが。

「ブブブブー!」

トロルは叫びながらパンチを繰り出した。

「くっ。盾にヒビが…」

盾男は何とか攻撃を受け止めたがそろそろ限界のようだ。 

「ブーーー!」

トロルは盾男に殴りかかった。

「ギガフリーズ」

戦場に声が響くとトロルの腕が凍りつき動けなくなった。 

「大丈夫?」

盾男の後ろからリンが現れた。

「な、何だお前」

「イドル・マギスニカの最初の召喚獣リン。コキュートス・フェンリルだよ」

リンは右手に刻まれた契約紋を見せた。

「ブーーー!ブブブブー」

「ブーブーうるさい」

リンはトロルに近付くと、トロルの口と鼻を手でふさいだ。

「アブソルート・ゼロ」

リンは掴んだ掌から絶対零度の冷気を肺の中に流し込んだ。呼吸が出来なくなったトロルは一瞬で絶命した。

「アイ。このトロルの魔石は?」

『胸の真ん中にあるよ』

アイの言葉を受けてリンはトロルの胸を爪で貫いた。そのまま魔石を取り出して冒険者の方に投げる。

「はい、魔石。じゃ、マスターにこいつ渡してくるから。後はよろしく」

リンはおれが書いた転移魔法陣に乗って帰って行った。


「あっさり倒して行ったな…。で、お前らはどうする?」

護衛隊長がトロルが出たあたりから固まっていた私兵に言った。

「こ、降参だ!これ以上やってられるか!」

「あいつみたいに化け物にされたらたまったもんじゃねえ!」

私兵たちはいっせいに武器を捨てた。

「完全に領主に愛想が尽きたようだな。まあ無理もないが。これからどうする?」

神官の男が周りに聞いた。

「とりあえず任務達成の報告をして魔石をギルドに届けよう。後は国が何とかするさ」

冒険者のまとめ役はどこか投げやりな様子で答えた。


ーー


「マスター。片付けたよ」

転移してきたリンはトロルを放って飛び掛かってきた。

「よくやったな。リン」

おれはリンの頭を撫でた。

「ふふっ。それほどでもないよ」

リンは尻尾をぶんぶん振りながらドヤ顔をした。

「本当にありがとう。また何かあったら喚ぶよ」

「いつでも喚んでね。私はマスターの召喚獣だから」

魔力の供給が切れたリンは召喚獣の領域に帰って行った。

「さて、とりあえずこのトロル何とかするか」

おれはトロルを中心に転移魔法陣を書いた。

「他の場所では何も起きなきゃいいがな」

おれは視覚共有で送られてくる情報に気を配りながら、王宮研究室に転移した。

だいぶ雑になってしまいました。次は貴族派との本格的な戦いが始まる予定です。

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