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構陣師  作者: ゲラート
第1章 サミュノエル動乱
29/185

決着

「さすがお兄ちゃん。タダノなんて目じゃないね」

「あの羽とひよこちゃんいいね。後でイドくんに術式教えてもらおっと」

レイティスとミアーラの姉妹はイドルの活躍を見てはしゃいでいる。やっぱり家族が活躍してるのを見るとうれしいでしょうね。

「避けないとああなるんですね。やっぱりイドルさんはすごいです」

光は貴賓席から決闘をじっと見ながら言った。

「すごいハメ技よね。全部避けたあんたが言っても説得力はないけど」

避けた先には地雷があるし、かと言って回避しないとまともに攻撃を食らうことになる。そもそも攻撃自体目の前で爆発したり誘導されているから回避手段がないに等しいわね。


「それにしても何で金田の魔法陣発動しないのかしら。さっきから使おうとしてるのはわかるんだけど」

あたしは知ってるだろう面々を横目で見ながら呟いた。

「私がイドルさんと特訓してる時は普通に使えたから常時発動型のスキルじゃないんでしょうけど…。あるなら私の時は何で使わなかったんでしょう?」

光はそう言って首を傾げた。

「使うわけありませんわ。ヒカリ様はまだ魔法に関してはド素人ですわ。そんな魔法初心者の勇者にあれをやって魔法を使えないトラウマを植え付けるとか戦犯になってしまうじゃありませんの」

チェリルはそう言ってニヤリと笑った。

「…金田さんに魔法を使えないトラウマを植え付けるのはいいんですか?」

「タダノは当分の間は敵であります。弱体化するくらいがちょうどいいでありましょう。最悪ヒカリ殿がいれば光属性が使えなくても弾除けくらいにはなるでしょう」

エリザは冷たい目で金田を見ながら言った。

「ヒカリに負担が増えるのは心苦しいがあいつは正直どうなっても構わん。別に戦力にならなくても問題はない」

ロベリアも金田はどうでもいいみたいね。比較対象がいるとこうなるのかしら。


「魔法が出ないなら遠距離系のスキルで攻撃すればいいのに。何かないのかしら」

あたしは魔法が出せずになす術もなく焼かれてる金田を見ながら言った。

「無理でありますな。貴族派の宮廷剣術に遠距離攻撃はないであります。武器の熟練度で出ないこともないでしょうが、訓練で使うのが木の大剣な以上それも期待できないのであります。普通ヒカリ殿のように武器がスキルをすぐ習得しないのであります。…武器の申し子で熟練度最大で基礎スキルは使える自分が言うことでもないでありますが」

エリザはちゃっかりチートな発言をした。

「紅雪があってよかったです。白峰流に遠距離攻撃なんてありませんから」

でしょうね。元の世界でそんな剣術あったら笑うしかないわ。


「もう金田さんが勝つにはイドルさんの魔力切れ狙うしかないんでしょうか」

光は割と当たり前な指摘をした。

「そうですわね。わたくしたち魔法職は魔力が全て。魔法が使えなくなれば終わりですわ」

チェリルはしみじみと言った。

「レイは魔力切れしないけどね。魔力には自信あるもん」

「レイちゃん魔力すごいよね。入学式で水晶破裂してたし」

水晶が破裂するって…。普通に勇者よりすごいってことじゃない。

「まあイドルの魔力切れを期待するのは得策ではないな。周りが化け物揃いだからあまり目立たないがイドルは並の上級宮廷魔導師程度の魔力量はあるし、魔力管理が他の追随を許さないくらい上手い。今もほとんど消耗してないだろう」

ロベリアは冷静な口調で言った。

「ならそろそろ金田の心が折れる頃ね」

あたしはボロボロになりながらも立ち上がろうとしている金田を見ながら言った。


ーーー


「しぶといな。腐っても勇者ということか」

宙に浮いたイドルがぼくを見下ろしながら言った。

「フン。そんなこと言ってられるのも今のうちだ!魔力が切れればお前なんか…」

ぼくはイドルに指を突きつけた。

「そういえばお前はステータスとやらが見えるんだったか。いつ魔力切れするか見てみたらどうだ?」

イドルはそう言って指を鳴らして至近距離で爆発させた。

「ハッ!そんなの大分減っているに決まって」

ーーーイドルの魔力量はほとんど減ってなかった。

「ば、バカな!最大値からほとんど減ってないだと?あんな高い攻撃力の魔法の消費魔力が1発2だけなわけがない!」

ぼくは壊れたとしか思えないステータスを見ながら言った。

「あれで2なのか。だったらこれは?」

イドルが指を鳴らして爆発させると1だけ減った。

「うわあああ!ライトスラッシュ!ハイライトボール!スーパーレイ!」

ぼくはイドルを叩き落とすために魔法陣を出しまくったけど何も出なかった。

「ふざけるな!こんなの認められるかー!」

踏み出したぼくの足元で凄まじい爆発が起きた。


ーーー


「…あれ?」

「どうしたの?光」

私が思わず呟くと沙夜ちゃんの地獄耳が反応しました。

「いえ、さっきから金田さんの魔法陣に黒い点がいきなり出て来るんです。ハエか何かなんだと思ってたんですけど出た途端魔法陣が不発になるのが少し気になって…」

「点?…確かに魔法陣の外周部分に何か出るわね。本当にただの点みたい」

沙夜ちゃんはあごに手を当てて考え込みました。

「属性魔法陣…点…不発…。まさか」

沙夜ちゃんは何かを呟きながらじっとイドルさんを見ました。

「何か気付いたんですか?」

「まだ仮説だけどね。…これ次回予告どおりじゃないかしら」

沙夜ちゃんの言葉に闘技場に目を向けるとイドルさんの掌に鳥が舞っていました。


ーーー


『で、出たー!『火葬鳥姫』様の十八番の不死鳥!』

『サイズは小さいですね。さすがに単色重奏の火力を再現するのは厳しいでしょうか』

実況と解説が好き勝手なことを言い出した。

「そろそろ終わりにするか。…偽りの(フェイク・)不死鳥(フェニックス)

イドルはそう言って不死鳥を放った。

「うおおお!」

ぼくは大剣を振り上げて応戦したが、上から圧力がかかる。

「ぐっ。負けるか!」

どうにか押し返そうと力を入れた時、鎧にヒビが入った。

「なっ?!なぜ鎧にヒビが?!」

「あれだけ食らっていたらダメージが蓄積するのは当たり前だ。特に羽根は鎧の表面に刺さっている。爆発させたら細かい傷が広がるというわけだ」

イドルがそう言って指を鳴らすと足元で魔法陣が光った。

「なぜ!ぼくは踏んでないぞ!」

「遠隔で爆発させることも出来る。そもそもこれは踏んだ瞬間に魔筆から魔力が補填される魔法だ。踏んだら勝手に発動するわけじゃない」

イドルがまた指を鳴らすと爆発が続けざまに起きた。力が抜けると不死鳥と爆発が迫ってくる。

「ぬわーーー!」

鎧が粉々に砕けるのと同時にぼくは炎に包まれた。


ーーー


「やったか?!」

「それやってないフラグよ」

沙夜ちゃんはロベリアの言葉に冷静に返しました。

「いや、いくら何でもあんな炎に巻き込まれたら気絶するでしょう」

「でも勇者だから最後っ屁をかます可能性はあるわ」

沙夜ちゃんが言うと金田さんの手の中にに大きい魔法陣が展開されました。徐々に術式が書き込まれていきます。

「あれ?今術式がものすごい早さで書かれたような…」

そんなことを言っている間に魔法陣が大きく光り、大きな星が出てきました。

「サテライト・キャノン!」

金田さんが高らかに魔法名を叫びました。

「月も出てないのに?…というかあれが月なのかしら」

沙夜ちゃんはわけがわからないことを呟きました。


ーーー


ぼくは薄れ行く意識の中で魔法陣を書いた。なぜか知らない魔法が頭の中から出て来る。

「サテライト・キャノン!」

魔法を唱えるとぼくの上に大きな光る星が現れ、光をチャージし始めた。

『不発にならない?ということは』

『ええ。間違いなくあれです』

実況と解説が何か言っているがもう止められない。これで逆転してやる!

「行けー!」

叫んだ瞬間イドルの姿が光で見えなくなった。


ーーー


カネダが放ったサテライト・キャノンとやらはおれではなくカネダの方に矛先を向け、カネダに向けて光線を放った。カネダは光に包まれた。

「すごい威力だな。出させておいてよかった」

おれは光が収まるのを待って高度を下げた。下りたらどうなるかわからないからな。

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。勇者タダノ戦闘不能!勝者、『構陣師』イドル!」

カネダが倒れてからカウントダウンした審判の勝利宣言とともに大歓声が上がった。おれは地雷を解除して闘技場に降り立ち、歓声に応えた。

視点変えすぎました。

次回で解説しますのでもう少しお付き合いしていただけたら幸いです。

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