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構陣師  作者: ゲラート
第1章 サミュノエル動乱
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決闘

「ふっ。逃げずによく来たな」

ぼくは歩いてきたイドルに向かって言い放った。

「当たり前だろう。勝てる勝負から逃げるバカがどこにいる」

イドルは精一杯の強がりを言った。

「せいぜい今のうちにほざいておくんだね。君は無様に負けるんだからさ」

「その言葉そのまま返してやる。お前のその根拠のない自信ごと焼き払ってやるよ」

イドルはそんな捨てセリフを吐いて闘技場の控え室に入って行った。


『さあ、いよいよ決闘です!まずは我らの希望の星!私たちに大金をもたらす男!『構陣師』イドォォル・マァギスゥゥニカ!』

何だかプロレスみたいなテンションで魔法使いの名前が呼ばれた。

「頼むぜ『構陣師』様!おれたちのために勝ってくれ!」

「ただの勇者なんて燃やし尽くしちまえ!」

「キャー!イドル様ー!」

会場中にイドルコールが響き渡った。まあいいさ。ぼくが出れば空気が変わるだろう。

『次に入場するのはえーと…名前何だっけ?ま、いいや。ただの勇者です』

実況はものすごく失礼なことを言った。…まあ仕方ない。入場してあげるよ。

「貴族派の犬め!おれたちの金のためにさっさと負けろ!」

「『落涙』様がいればお前なんかいらねえんだよ!元の世界に帰れ!」

「とっとと棄権しろタダノ!」

観客席からぼくに向けてものすごいブーイングが浴びせられた。 

「黙れ!ぼくは勇者だぞ!後ぼくは金田英雄だ!」

ぼくは観客に向けて叫んだ。


「勇者としての力も心も証明出来てないからこうなってるんだろう。ヒカリがいるのに勇者という肩書きだけ誇っても無様なだけだぞ」

イドルは淡々とした口調でぼくを侮辱した。

「イドルゥ!」

「さんをつけろやデコ助野郎!」

「それ違う金田さんが言われた時に返すセリフですよ!」

イドル側の貴賓席にいる光さんと沙夜さんが何だかよくわからない漫才を始めた。

「なぜ勇者なのにそっちにいるんだ!」

「決まってるじゃない。コバチの仲間にされたくないからよ。それにイドルと一緒にいられなくなるのはいやだしね」

沙夜さんは冷たい目でぼくを見た。

「私も貴族派の味方は出来ません。それにイドルさんと離れたくないです」

光さんはまっすぐな目でぼくを見た。

「…そいつに騙されてるんだね。すぐに倒して目を覚まさせてあげるよ」

ぼくは光さんと沙夜さんに流し目を送り、大剣を構えた。

「それではルールを確認します。『構陣師』様が使っていいのは火属性の魔法のみ。棄権か気絶したら負けです。殺したら厳しい罰則があります」

つまりぼくは殺さなければ何でもしていいんだね。楽勝じゃないか。


ーー


『両者位置につきましたね。それでは…始め!』

実況がスタートの合図を叫んだ瞬間辺りは煙に包まれた。

「ゲホッ。何だこの煙は…」

煙にむせている間に上から小さな火の玉が飛んできた。目をこすって見上げるとイドルが足から火を噴出して空を飛んでいた。背中には炎の翼が見える。

『あの翼は不死鳥でしょうか。『火葬鳥姫』様を彷彿とさせますね』

『火を放出して維持してるんですね。翼にも様々な術式が施されているようです』

実況と解説がやり取りしている間にも羽から細かい炎の羽毛が降ってきた。

「その程度のほの…ぐはっ!」

イドルが指を鳴らすと羽毛はすごい威力で爆発した。

「遅い。ヒカリなら避けてるぞ」

イドルは小さい魔法陣から小さい火の玉を放った。

「ふん。そんな下級魔法」

火の玉は着弾した瞬間燃え上がった。

「ぐわーー!何で小さな魔法陣でそんな威力が?!」

鎧の上から熱が伝わってくる。何なんだこれは?!


「本当に旧世代の魔法しか習ってないんだな。まあ教えるのがあいつだから当然か」

今度は目の前に魔法陣が出てきて炎を放った。

「バカな!何で目の前に魔法陣が?!」

「いちいち驚き過ぎだ。鎧に着られて縮こまってないで少しは反撃したらどうだ?」

イドルがそう言って指を鳴らすと腹辺りで爆発が起きた。それから程なくして炎の羽根が飛んできた。

「くっ。ライトシールド!」

ぼくは光の盾の魔法陣を使ったが出なかった。羽根は鎧に突き刺さった。

「な、なぜ出ない?!」

「さあな」

イドルがそう言って指を鳴らすと羽根が爆発した。更に魔法陣から熱線を放ってきた。

「ライトシールド!ライトシールド!ラ・イ・ト・シールドー!」

ぼくは魔法陣を使おうとしても何も出ず、ただ熱線が鎧をかすめて行った。


「審判!さっきから魔法が出ないのはイドルが妨害魔法をかけているからだろう?なぜ反則にならない!」

ぼくは聡明な頭脳が導いた結論を審判にぶつけた。

「イドル様には火属性以外の魔法陣に魔力を込めたら警告音が鳴る魔法具を装備してもらっています。反応してないということは不正はないです」

審判は淡々とした口調で有り得ないことを言った。

「ふざけるな!正々堂々戦え!」

「本当に正々堂々を求めるならネルキソスが火属性以外使えないように制限するよう要求した時点で止めるはずだろう。なのにお前はおれが納得した時に自分がなめられた形になったことにしか怒ってなかったな。それどころかこっちが納得したのをいいことに自分が不利になった途端押し付けた制限で反則負けを主張する始末。お前の言う正々堂々というのは自分の都合がいい状況を相手に強制するための手段なのか?」

イドルはぼくを見下ろしながら言った。


「うるさい!下りてきて戦え!」

「文句言う暇があったらここまで来い。ヒカリならひとっ飛びでここまで来るぞ」

イドルは火の玉を放ちながら言った。

「言ったな!だったら飛んでやるよ」

ぼくが足を踏み出すと足元ですごい爆発が起きた。

「うわ!」

思わずつまずいて倒れると、地面についた所が爆発した。

偽りの雛(フェイク・チック)

イドルは今度は炎の小鳥を5羽放った。 

「くっ」

ぼくは回避しようと転がるとそこが爆発した。

「ここもか!」

慌てて立ち上がろうとした所に小鳥が突き刺さった。

「ぐはっ」

横に倒れたらまた爆発した。どれだけ仕掛けてるんだ?!

「ヒカリなら一発も当たらずに躱してるんだが…。勇者と言ってもそこまで差があるのか」

イドルはぼくを見下ろしながら言った。

「黙れ!ぼくはヒカリさんとは違う」

「そうだな。お前なんかと比べること自体ヒカリに失礼だ」

イドルは上から火の玉を放った。

「あそこなら爆発したから大丈夫なはずだ!」

ぼくは前爆発した所に足を踏み出すと思い切り爆発した。

「ぐわーー!」

倒れたらすぐ爆発が来る。

「どうした?転がってても勝てないぞ?」

「く、クソがーーー!」

ぼくの雄叫びが闘技場に響き渡った。

次回予告は沙夜が前話でやったから必要ないですね。

さすがに一方的になり過ぎたかもしれません。

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