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構陣師  作者: ゲラート
第1章 サミュノエル動乱
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秘密の共有者

「では老害の教えを受けた勇者など取るに足らないと?さすが『構陣師』様ですね」

取材をしている日刊予言の記者は羽根ペンを走らせた。

「そこまでは言ってないですよ。ただ魔法陣の大きさと位置で翻弄出来るのは事実ですけどね」

「旧魔法にはない部分で勝負するとは鬼畜ですね。あれがあるから近づかせなければ勝てるから楽でしょう」

記者はニッコリ笑って聞いてきた。

「問題はどう足止めするかですけどね。相手は魔法耐性がある鎧を着てますから上級魔法を使う必要があります」

「火属性で鎧ごとプライドを焼き尽くしてやる。イドルさんは拳を握り締めて決意を新たにしました」

相変わらず好き勝手書いてるな。この記者が適当なことを書くせいでおれの世間でのイメージがおかしなことになっている気がする。


「うーん。どうもネタが弱いなー。みんな弟くんが勝つと思ってるだろうし。私も賭ける気になれないもん」

記者---ロレイナ先輩はダルそうに机に突っ伏した。

「もちろん負ける要素は極力潰すつもりですけどね。大穴狙いが全然いなくて賭けが盛り上がらないってチカゲも嘆いてましたよ」

「しかも使うのが火属性だしね。シスコンの弟くんがミアーラの得意属性で不覚をとることはないというイメージがついてるんじゃないかな」

ロレイナ先輩はニヤニヤ笑いながら言った。

「誰のせいですか。あんたが適当なこと書くから学校でもみんなにシスコン扱いされたんですよ」

「でもシスコンとブラコンなのは事実じゃない。だってそうじゃなきゃミアーラのために新しい魔法理論を発見したり、妹ちゃんを最強にすることなんて出来ないもん」

…本当に姉さんの親友というものは厄介だな。知られたくないことを完全に把握されてるんだから。


「で、城内にいる私の後輩たちはどうかな?元気でやってる?」

ロレイナ先輩は声を潜めて聞いてきた。

「言えるわけないでしょう。どこで誰が聞いてるかわかりませんしね。大体あんたの雑誌で政治やスキャンダルは扱ってないでしょうが」

「そうなんだよねー。魔法とか弟くんの色恋沙汰に付き合うのは面白いからいいんだけど色々コネ使ったり抱えてる秘密暴露しちゃいたくなるよ」

ロレイナ先輩は軽い口調で物騒なことを言った。

「悪い冗談はやめて下さい。あんたに今バラされたら姉さんの親友だろうが先輩だろうが関係なく消さないといかなくなります。あんたが今生きてるのはおれとあんたの信頼関係があるからなんですから」

「だよねー。弟くんが色々誑し込んでなければ多分政治関係の記事を書かないないように圧力かけられるだけじゃすまなかったよ。記者やれてるだけでも儲け物だよね」

ロレイナ先輩は軽い口調で言った。そんなに気にしない性格だから学校でも色々人脈築けたんだろうな。


「課長。城内にこのような怪文書が出回っています」

ルーシーが入って来て話がうやむやになった。

「私弟くんに1銀貨賭ける!…っとこうしちゃいられないね。さっそく記事にしなくちゃ!」

ロレイナ先輩は目を金貨にしながら羽ペンを走らせた。


ーーー


「一人最低10白金貨を金田に賭けろって…。貴族派ほぼ死ぬじゃない」

城内に貼られた文書を見て沙夜ちゃんは呆れた顔をしました。

「これってスパイの仕業ですよね?」

「普通に考えてそうね。ハリガネムシたちは金田が勝つなんてこれっぽっちも思ってないはずよ。そんな命令出しても貴族派に損害を与えるだけでメリットはないわ」

沙夜ちゃんは淡々とした口調で答えました。

「ですよね。白金貨は100金貨ですから1000金貨賭けないといけませんから。いくらなんでもそれは賭け過ぎです」

「スパイとしては賭けの払い戻し金を吊り上げて経済効果をもたらす気なのかしらね。倍率が凄まじいことになるもの」

ですよね。貴族派が1人白金貨10枚賭けたらいくらイドルさんに賭ける人が多くても払い戻しがすごいことになります。

「でもこれウソなんですよね?白金貨10枚払う貴族派の人なんていないんじゃないですか?」

「さあ、それはどうかしらね」

私の言葉に沙夜ちゃんは意味深に微笑みました。

「ここからがヒメバチの本領発揮だもの」

沙夜ちゃんの言葉は私にはよく聞き取れませんでした。


ーーー


「何だこれは!わしはこんな物を出した覚えはないぞ!」

貼り出された紙を見た貴族派派閥長は声を荒らげた。

「落ち着いて下さいお父様。派閥長がそんなに動揺してどうするのです」

ヴィレッタは扇で口元を隠して貴族派派閥長を咎めた。

「そうですよ派閥長。少しは落ち着いて下さい」

「お前こそなぜそんなに笑っていられるのだ!少しは緊張感を持て!」

貴族派派閥長はいつものうさんくさい笑みを浮かべるネルキソスを怒鳴りつけた。

「ふっ。軍師というのは常に全て計画通りという顔をしないといけないものなのですよ。いちいち取り乱していては部下が動揺しますからね」

ネルキソスはうさんくさい笑顔で言い切った。

「そこはせめて想定内と言ってほしいわね。わざと味方を窮地に追い込むのが計画とか言われたら殺意しかわかないわ」

ヴィレッタは扇の先をネルキソスに向けて辛辣な言葉を言い放った。


「それは失敬。ですが心配はご無用です。あんな偽物とわかりきった紙切れを真に受けて動く人間なんて1人しかいませんから」

ネルキソスが話していると部屋の扉が勢いよく開け放たれた。

「お喜び下さいネルキソス様ァ!不肖ジェノス指示通り勇者に賭けないと抜かした輩を滅ぼして参りましたァ。ヒャーッヒャッヒャッ!」

『味方殺し』のジェノスは狂喜の笑いを浮かべてネルキソスの前に膝まずいた。

「ご苦労様です。あなたのおかげで貴族派は皆勇者様に賭けるか賭けずに貴族派から離脱するか覚悟を決めるでしょう。粛清されたい者など誰もいないでしょうからね」

ネルキソスはうさんくさい笑みを浮かべてジェノスを褒め称えた。

「ありがたき幸せです。これからも貴族派の誇りを汚す者を粛清しますねェ!では失礼します!」

ジェノスは敬礼をして去って行った。


「なぜ粛清を加速するような真似をする!わしがその紙切れを否定すればいいではないか!」

貴族派派閥長は真っ赤な顔をしてネルキソスを怒鳴りつけた。

「残念ながらそれは手遅れかと」

ネルキソスの言葉に答えるようにドアが勢いよく開け放たれた。

「これ見たよ。白金貨10枚賭けるってことはぼくに期待してくれてるんだね!」

カネダは鼻息を荒くして息巻いた。というか字が読めたんだなあいつ。

「もちろんです。そのための貴族派派閥長印が押してあるのですから。払わない者は貴族派の資格はありません」

ネルキソスがうさんくさい笑みを浮かべて指差した貴族派派閥長印を見て貴族派派閥長の顔を青ざめた。どうやら気付いてなかったようだ。

「そうだね。ぼくを支持しない者は必要ない。正義の勇者に従わないやつらはみんな悪だからね」

カネダは満面の笑みを浮かべて言い切った。なぜそこまで自分が正しいと思い込めるんだろうな。


「あ、そろそろ貴族派流剣術の訓練の時間です。参りましょう勇者様」

「ああ。勇者の力を見せつけてやるさ」

カネダは大剣を担いでネルキソスと並んで歩いて行った。

「なぜ貴族派派閥長印が…。ま、まさか副派閥長が裏切ったのか!」

貴族派派閥長は手を机に叩きつけた。

「考えたくはないですが私たち以外に貴族派派閥長印を持っているのは代行できる彼だけです。仮に副派閥長本人でなくとも管理不行き届きなのは明らかです。念のため調べてみましたが我らの屋敷の警備の誰も不審な人物を目撃してないどころか警報装置が作動した形跡もありませんでした。となると副派閥長が何らかの隠蔽をしているのでしょう。つまりこの怪文書の全責任は副派閥長にあるということになります」

凄まじい責任転嫁だな。確かに全責任を押し付けるのにはうってつけの存在なのは認めるが。

「あの役立たずめ!わしが取り立ててやった恩を忘れたのか!」

貴族派派閥長は全身の脂肪を怒りに震わせた。

「まあまあ。粛清は勇者が負けてからゆっくりやることにしましょう。今は貴族派の瓦解を防ぐためにゴルディックス家に援助を求めるのが先決です。選別は全て私が行いますがよろしいですね?」

ヴィレッタは扇を手で叩きながら尋ねた。

「うむ。よきにはからえ!」

貴族派派閥長は完全にヴィレッタの言いなりだな。その方が確実に良策が出てくるから厄介だが。

「かしこまりました、お父様。全て私におまかせ下さい」

ヴィレッタは優雅にお辞儀をして貴族派派閥長に微笑んだ。

金田のせいで貴族派に被害はありますがヘイト回なんでしょうかねこれ。ざまぁ回というのも何だかあれですし。とにかく金田を利用しようとしたら自業自得で金田と共倒れするのが基本スタイルになります。

とりあえず金田は味方にいるより敵に回ってくれた方が役に立つのは確かです。

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