クウラ山
「着いたわ。周りに敵は…いないわね」
サヤは転移してすぐ耳を澄ませながら周りを見回した。
「ハハハハ。こんなにすぐ攻め返されるなどやつら思いもしないでありましょうな」
エリザは高笑いを上げた。
「だからこそ迅速に動かないとな。気付かれないうちに距離を詰めよう。今は城より高い所にいるからこいつだな。水中を飛ぶ翼よ、氷上を舞い踊れ。サモン。エンペラーペンギン」
おれは巨大なペンギンを召喚した。
「みんな早く乗ってくれ。一気に突っ込むぞ」
おれが号令をかけると一瞬固まってたパーティーメンバーも一斉に乗り込んだ。
「しっかりつかまれよ。行け、ペルト」
おれは全力でペルトを突っ込ませた。すると目の前に城門が見えてきた。
「ヒカリ」
「はい。ライトベール!」
ヒカリは衝撃を抑えるために光を展開した。それからしばらく経ってペルトが城門を突き破った。
「ぺ、ペェン…」
門を突き破ったペルトは目を回して倒れた。
「よくやったペルト。ゆっくり休んでくれ」
おれはペルトの傷を治し、送還した。
「な、何だ?!敵襲か?!」
「どうやって気付かれずにここまで来やがった貴様ら!」
音を聞きつけたのか多くの敵が集まってきた。炎だけじゃなくて氷や水等のエレメントもいる。
「数が多いな。さすがに面倒だ」
ロベリアはぼやきながら槍を構えた。
「あんな派手な突入だと仕方ないですわね。出来れば消耗は避けたい所ですが…」
チェリルは小さなモミの木を魔法陣から出しながらぼやいた。
「フッ。我に任せよ!万物を飲み込む漆黒の闇。光すら届かぬ深淵の底に沈み永遠に彷徨え。そして永久に後悔するがいい。我に刃を向けたことを。…闇に飲まれよ!」
ヒルデが魔法陣を出して詠唱すると巨大な黒い穴が出現した。その穴の中に敵がどんどん吸い込まれて行った。
「う、うわあああ!何だこれはぁ!」
「や、やめろ!やめてくれー!」
エレメント達が吸い込まれると黒い穴は消滅した。
「ブラックホールって…。あたしとイドルがいない時に使われなくてよかったわね。リン経由で止められたとは思うけど万が一があったかもしれないわ」
サヤは冷静に分析した。
「ブラックホール?」
「簡単に言うと宇宙のどこかにある何でも吸い込む星みたいな物かしら。光まで吸い込むから黒く見えるのよ」
そんな恐ろしい物が存在するのか。宇宙の神秘はすごいな。
「ヒルデさんが本当に敵だったら酷いことになってましたね…。ひとまず先を急ぎましょう」
ヒカリが促すから進むと、壁にあからさまに怪しい矢印があった。
「明らかに誘導しておるな。どうする?」
メルは冷めた目で言った。
「どの道戦わなければいけない相手です。罠があるなら攻略すればいいんですよ。私たちは今までそうやって勝って来ました」
ヒカリはベニユキを握り締めながら言い切った。
「そうだな。行こうか」
矢印をたどって行くと外に繋がる門が見えてきた。
「やっぱり空が見える闘技場で戦うみたいね。こっちに来るよう挑発してみる?」
サヤは悪どい笑みを浮かべながら言った。
「時間の無駄じゃよ。あの臆病者が乗ってくるとは思えん」
「うむ。奴に敵の戦場に上がる度量などあるわけがない」
かなり辛辣だな。仕方ないからおれたちは外へ出た。
「フッ。よく来たな愚民共」
外に行くと頭上から偉そうな声が聞こえた。
もう章ボス出てきてしまいました。
この章は短くなりそうですね。