ヒルデの目覚め
「ふわあぁぁ…。…ん?ここ、どこ?」
目を覚ましたヒルデは気が抜けた声を出した。
「ふむ。どうやら正気に戻ったようじゃな」
メルはヒルデに話し掛けた。
「えっ、メルちゃん。…はっ?」
メルの声で現実に引き戻されたヒルデは周りを見回した。
「見回す限りの極寒の大地…。周りを囲む人間…。眠りに落ちている間に拐かされたか?」
そう芝居がかって言うヒルデの頬は赤く染まっている。初対面の相手に素を出してしまった気恥ずかしさがあるのかもしれない。
「落ち着けヒルデ姫。まずは何があったか思い出してみるのじゃ」
唯一知り合いのメルがヒルデを説得した。
「わかった。アカシックレコードを紐解こう…。悪逆非道卑劣血の繋がりがあると思いたくもない汚物愚王の戯言を聞いてから意識がないな」
相当な言われようだな。魔王はどれだけ娘に嫌われているんだろう。
「つまり汝が我を正気に戻したわけか。礼を言うぞ」
ヒルデはそう言って頭を下げた。
「気にするな。魔王の娘を確保すれば何らかの使い道はあると思っただけだ。…どうやら人質としての価値はなさそうだが」
おれは単刀直入に言った。取り繕っても意味なさそうだしな。
「そうだな。あの冷血な愚王は眉一つ動かさぬだろう。…所で我はなぜこのような雪景色の中におるのだ?」
ヒルデは辺りを見回して言った。
「ここはフリザイスじゃ。ヒルデ姫はウェザディオスの手先として雪の女王を襲撃しておったのじゃよ」
メルは冷静に状況を説明した。
「我が地獄の業火を欲したか。天候爵ごときが…。必ずその罪の報いを受けさせてやる」
ヒルデはそう言って拳を握り締めた。
「だったら私たちと一緒にウェザディオスを倒しに行きませんか?ヒルデさんが味方にいたら心強いです」
ヒカリがヒルデに提案した。
「フン。魔王の娘なんか信用できるか」
カネダは不満げに鼻を鳴らした。お前が言うなとは思うが、さっきまで敵だったやつを警戒する気持ちはわかる。
「どの口が言うのよ。あんたが一番信用も信頼も出来ないでしょうが」
そう言うサヤはすごい速さで指を動かしている。ドローンの操作でもしてるんだろうか。
「よし。城が見えたわ。…決戦するならあの屋外闘技場かしらね。空がよく見えるもの」
サヤはMephoneを見ながら分析した。
「出来るだけ接近してみるわね。…あっ。雷でやられちゃったわ」
サヤは淡々とドローンが撃墜されたことを報告した。
「ま、位置情報わかれば転移出来るから問題ないわ。もうマーキングしてるから吹き飛ばされても問題ないわよ。出来れば回収してくれたらありがたいんだけどさすがにそれは無理かしら」
サヤはそう言って転移アプリを起動した。
「これでいつでも行けるわ。あんたも来るなら来なさいな」
サヤはそう言ってヒルデに手を伸ばした。
「…よかろう。しばし共闘してやろうではないか」
ヒルデは勢いよくサヤの手をとった。
Mephone便利過ぎますね。
次はウェザディオスの城に乗り込みます。