時間稼ぎ
「さて、探すにしてもどこから探すか…。雪が溶けてて足跡も残ってないぞ」
おまけに溶けている範囲もかなり広い。やって来た場所を特定するのは難しいだろう。
「なら空から探せばいいのよ。ドーター」
『はいはーい』
サヤが指示を出すと大量のドローンが出現した。
「とりあえず見つかるまで待ちましょ。やみくもに動いても遭難するだけよ」
サヤはそう言って雪の上にシートを出した。そしてその上に座った。
「そうだな。今は待つとするか」
おれはサヤの隣に腰を下ろした。
ーーー
「焼き尽くせ、地獄の業火」
ヒルデさんが詠唱してから黒い炎を放って来ました。
「ヘル・ブリザード」
向かって来る黒い炎をリンさんが吹雪で受け止めました。
「光閃嵐」
技がぶつかり合う中、私は光魔法を込めた斬撃をヒルデさんの足に向けて放ちました。
「ふっ。効かぬわ!」
ヒルデさんの言う通り私の斬撃は弾かれました。
「えっ。何で素肌狙ったのに弾かれたんですか?」
私は驚きのあまり思わず声を出してしまいました。
「闇の衣の効果は服だけではない。体にまで及んでおるんじゃよ」
隣のメルさんが解説してくれました。
「足ぶった切るつもりだったの?マスターが殺すなって言ったの聞いてた?」
リンさんは冷たい目を向けて来ました。
「わかってます。ただ足に重傷を負わせて機動力を奪おうとしただけです。動きを鈍らせた方がボールに戻す光を当てやすいじゃないですか」
私はリンさんに説明しました。
「着眼点は悪くないな。じゃが魔族には高い再生能力がある。足を切断した所ですぐ生えてくるわい」
メルさんがまた解説してくれました。
「頑丈ですね。ひとまず紅雪に血を吸わせることを優先しますか。…光閃嵐」
私は空高く飛び上がって後方宙返りしてから、ヒルデさんの頬に向かって光魔法を込めて光閃嵐を放ちました。
「ふっ。甘い」
ヒルデさんは余裕の笑みを浮かべて袖を顔にかざしました。次の瞬間私の手には布と肌を切り裂いた手応えが残りました。
「なっ。我が闇の衣が破られただと?!」
頬を触ったヒルデさんは手袋についた血を見て驚きの声を上げました。
「今度は切っ先を当てましたからね。距離をうまく調整すれば切れない道理はありません」
「不安定な体勢で落下しながら放って当てられるとは…。さすがヒカリ殿でありますな!」
エリザさんがそう言って拍手してくれました。
「なかなか楽しませてくれる。我も本気を出すとするか」
そう宣言するヒルデさんの手から禍々しい闇が出てきました。
「悪いですがこっちは模擬戦のつもりでやらせていただきます。えっと、…カードスラッシュ」
私がスキルリンカーで読み取ったスキル名を言うと紅雪が変形し、カードが出現しました。
「…どう戦えばいいんでしょう?」
「さあ。戦いの中で導き出すしかないんじゃない?」
リンさんは冷たい口調で言い放ちました。
さすがに緊張感がなさすぎますね。次でヒルデ戦は終わらせる予定です。