捕獲作戦
「さて、生け捕りにするとして、一体どうやったらいいんでしょう?」
ヒカリはそう言って頭をひねった。
「…サヤ。あのヒルデが出てくる前に魔物球が開く音がしたのは確かなのか?」
おれはサヤに尋ねた。
「何か落ちた後に開く音がして、何かが着地して歩き出したっていうのは確かよ。それを勝手にあたしの頭の中で魔物球に結びつけただけだから正しいかどうかはわからないわ。魔物球に戻すという手段がとれる保証はないわね」
サヤは冷静におれの考えを読み取った。
「魔物球にも戻す機能あるんですね…。ですがあるかどうかわからない物を雪の中から見つけ出せるでしょうか?」
ヒカリは不安そうな顔で周りを見回した。
「あたしが探すわ。ドーターもいるからすぐに見つかるでしょ。本当にここらへんに魔物球があるならの話だけどね」
『自分から魔物球がどうとか言っておいてそれはなくない?ま、ご命令とあらば探すけどね』
サヤの言葉にドーターが呆れたように返した。
「おれも一緒に探す。どの道魔物球に刻まれた主の情報を改竄してから魔物球に戻すつもりだしな。そうすれば洗脳を解く時に暴れられずに済む」
「…えっ?魔物球の情報を書き換えたらそんなことが出来るのでありますか?」
エリザが質問すると同時に全員がこっちを見てきた。
「妾が入っていた魔物球で検証を重ねたから間違いない。実際魔物球に刻まれた名前を書き換えられる前は出し入れされる度に何とも言えぬ気持ち悪さを感じたしな」
メルはそう言いながら顔をしかめた。
「あるかもわからない物を探し出すこと前提の、個人の感想を元にした裏技頼りの捕獲法…。かなり杜撰な作戦ですわね」
チェリルはそう言って溜息を吐いた。
「それでも魔物球を見つけたら身柄を楽に確保出来るのは確かだ。最悪中に閉じ込めたまま戦後の交渉材料として確保することは出来るだろう」
ロベリアは真顔で黒いことを言い放った。
「…わかりました。魔物球で捕らえる作戦で行きましょう。沙夜ちゃんとイドルさんが魔物球を見つけるまでの時間稼ぎは私たちにまかせて下さい」
ヒカリは力強く宣言し、刀を引き抜いた。
「頼む。後防衛のためにこいつを残しておく」
そう言いつつおれは召喚魔法陣を書いた。
「蒼き氷の牙よ。絶対零度の眼差しで、目に映る全てを凍てつかせろ。サモン、コキュートス・フェンリル」
口上を唱えるとリンが召喚魔法陣から現れた。
「久しぶり呼び出されたらすごくヤバいのがいるね。あいつ凍らせればいいの?」
リンはおれに尋ねながらヒルデを見た。
「その時が来たら知らせる。基本はあいつの炎から城と雪だるまを守りつつ援護してくれ」
「了解。それじゃ久々に暴れさせてもらうね」
リンは手から冷気を出しながら言った。
「程々にしろよ。行くぞサヤ」
「ええ」
後をヒカリたちに託し、おれとサヤは魔物球探しに向かった。
話が進みませんでした。次は魔物球探しと戦闘をする予定です。