猛吹雪
しばらくソリで登っていると、雪が激しくなってきた。
「急に降ってきましたね。山の天気って本当に変わりやすいです」
ヒカリは手袋をした手に息を吹きかけながら言った。
「風も吹いてきたわ。確実に吹雪になるわね」
サヤは耳をすませながら言った。
「とりあえず吹雪を避けられる所を探すか。どこかに洞窟でもあればいいんだがな」
しかしそう都合よく吹雪をしのげる場所は見つからなかった。そうしている間に吹雪が激しくなって行く。
「マジックベール」
おれは魔法のベールでパーティーを包んだ。
「助かりますわ、イドルお兄様。だいぶ楽になりましたわ」
「それでもかなり厳しいでありますな。テントを張ろうにも、この風では飛ばされそうであります」
エリザは震えながら顔をしかめた。
「ふっ。まさか姫の私がこんな猛吹雪にあうとはな…」
「変な所で姫アピールするのう、お主。まあ下手したら忘れそうになるのも事実じゃが」
メルはロベリアにツッコミを入れた。
「そんなこと言ってる場合か!このままじゃ遭難するぞ」
カネダが珍しく割とまともなことを言った。
「いざとなれば城下町に転移すればいいから大丈夫だ。ソリから落ちない限りどうとでもなる」
おれはカネダを諭した。
「どっかにクマの巣穴でもあったら楽なんだけどね。…思考が地球にいた頃からだいぶ変わって来てるわ」
サヤはハッとしたような顔で口元を押さえた。
「そうですね。元の世界じゃ実物のクマとか恐怖の対象でしかなかったです」
ヒカリもサヤの意見にうなずいた。
「強くなったら意識が変わるのはよくあることでありますよ。自分にも経験があるであります」
エリザが言う通り多かれ少なかれ誰にでもあることだろうな。
「まあ何にせよこのままじゃどうしようもないわね。どうにかする手は」
そこでサヤは言葉を切り、目を閉じて集中した。
「何か悲鳴が聞こえるわね。雪に何かぶつかる音も聞こえるから戦闘中なのかしら」
サヤは耳を澄ませながら言った。
「ちょっと手綱借りるわ。行くわよ」
サヤは手綱を持ち、ブリザーディアたちに指示を出した。
「「「ブモッ!」」」
ブリザーディアたちはサヤの指示に従って駆け出した。
「や、やめてよ!ぼく悪い雪だるまじゃないよ!」
サヤがソリを走らせていると、雪だるまが氷の魔人に囲まれているのが見えた。
「知るか。雪の女王の手下は誰だろうと殺せというのがウェザディオス様からの命令だ」
氷の魔人の一体はそう言いつつ冷気を放った。
「助けたら色々話が進みそうね。ダークカッター」
サヤは氷の魔人たちに黒い円盤を放った。
「な、何だ?!」
氷の魔人は黒い円盤に切り刻まれた。
「そうだな。フレイムタワー」
おれは氷の魔人の欠片の下から炎の搭を出現させた。
「う、うぎゃああ!」
氷の魔人は跡形もなく消え失せた。
「じゃあちょっと詳しい話を聞かせてもらおうかしら、雪だるまさん」
サヤはそう言ってニヤリと笑った。
だいぶ雑な展開になってしまいました。次は雪だるまとの会話から始まります。