雪山
「あれがデスブリザードマウンテンの頂上…。すごく高いですね」
デスブリザードマウンテンの麓に来たヒカリは呟いた。
「チートなかったら登れる気しないわね。まあチートあっても素人だからきついのかもしれないけど」
サヤもうんざりした顔で言った。
「おれも徒歩で登る気はない。祝福を背に乗せ、空を駆けろ。サモン。ブリザディアー」
おれはトナカイを5頭出した。
「エリザ」
「あ、あれを出せばいいのでありますな」
エリザは空間魔法からソリを出した。
「エリザの空間魔法って本当に何でも入ってるわね」
サヤは半ば呆れながら言った。
「一番使うのは自分でありますからな。色々ぶち込んでおけば何かに使えるかもしれないであります」
エリザは胸を張って返した。
「何にせよ余計な体力使わないのはいいですわね。雪山にも魔物はいるでしょうし」
「太陽の照り返しを直に受けないのはいいな。妾真祖じゃから肌が弱くてのう」
サングラスをかけたメルは憂鬱そうに言った。
「ただのヴァンパイアなら普通に死んでるだろうな。まあとにかく乗るか」
おれたちはソリに乗り込んだ。
「ウホ!ウホホ!」
しばらくソリに乗って山に登っていると、イエティが4体現れた。
「わー。雪男だー。…ファンタジー世界で会ってもそこまでテンション上がらないわね」
サヤは複雑そうな顔で言った。
「元の世界ならUMAに会ったら感動するんですけどね…。異世界だからですかね」
「珍しく意見が合うね。やっぱりシチュエーションは大事だよ」
ヒカリとカネダも微妙な顔をしている。
「会う世界によってイエティの捉え方は変わるものなのか?」
おれは不思議になって聞いてみた。
「あたしたちの世界では実在するかどうか議論されてる未知の存在なの。だから実物を見たら驚くし、テンションも上がるってわけ。でも異世界では会っても『まあそういう魔物いますよねー』感が先に来ちゃうのよね。未知のUMAから今までさんざん戦ってきた魔物という存在になっちゃうとここまで感慨が沸かないものなんだと自分でも驚いてるわ」
サヤがそう言うとヒカリは大きくうなずいた。
「うまく言葉に出来ませんけど大体そんな感じです。イエティ出てきてもやっぱりいるんだ感があります」
…やっぱりよくわからんな。マシニクルのせいで異世界の科学技術に触れる機会が多い世界だからなのもあるかもしれない。本にある物は大体存在するからな、この世界。
「ウホ!ウッホッホ!」
話している間にイエティが襲いかかってきた。巨体なのに速いな。
「イエティの話は後ですわ。まずは撃退しますわよ!」
チェリルはそう言って花を咲かせた。割と雪の中でも咲く花はあるんだよな。
「太陽が出てるとこんなことも出来ますのよ。ソーラーレイ!」
チェリルは花に太陽光を集め、ビームを発射した。
「ウホー!」
イエティは全身を焼かれて倒れた。やっぱり恐ろしい技だな。
「そうだな。フン!」
ロベリアはソリの上から思い切り槍を投げた。
「グハアッ!」
槍を食らったイエティは倒れた。
「向かってくるならやむを得ないであります。食らえ!」
エリザもソリの上から銃を撃った。
「ウギャア!」
銃弾が当たったイエティは動かなくなった。
「遠距離なら雪の上とか関係ないわね。はっ!」
サヤは矢を放った。
「グギャアア!」
イエティはしばらく毒で苦しみ、泡を吐いて息絶えた。
「…やっぱり雪の上でも戦えるように練習した方がよくないですか?」
ヒカリは不安そうに言った。
「それならイエティの毛皮でも剥ぎ取るか?防寒対策にもなるしな」
「何だか追い剥ぎみたいね…。まあついでに埋めとけば許してくれるでしょう」
おれたちはソリを下り、少し雪の上で動く練習をすることにした。
何だかイエティのことばかりで話進みませんでした。しばらく登山が続く予定です。