フリザイス
それからしばらく列車での時間を過ごしていると、窓の外で雪が降っているのが見えた。
「そろそろ近付いて来たようね。ここまで積もってると極寒って感じがするわ」
サヤはそう言ってココアを飲んだ。
「こんなに積もってるの初めて見ました。東京じゃこんなに降りませんから」
ヒカリは感動しながら言った。
「わたくしもこんなにすごい雪は初めてですわ。それでも砂漠よりは使える植物はありそうですわね」
チェリルは木属性らしい発言をした。
「問題は足が滑りやすい所でありますな。一応装備は整えましたが不安であります」
エリザはそう言って足元を確かめた。
「私も一応雪の中を歩いたことはある。ヒールだから物凄く滑ったがな」
「いや、そこは履き替えなさいよ」
ロベリアの言葉にサヤがツッコミを入れた。
「はっ。雪だから弱くなるなんて情けない。ぼくにそんなの関係ないね」
カネダは意味不明な自信を見せた。
「でしょうね。あんたどこでも役立たずだもの」
サヤは辛辣な意見を言った。
「なっ。誰が役立たずだ!」
カネダはサヤに怒鳴った。いつも通りのやり取りだな。
「事実を言われたからってそんなに怒るな」
「何だと!ぼくを何だと思ってるんだ」
そんなカネダの文句を聞き流していると、フリザイスの駅に着いた。
「とりあえずまずは国王にあいさつだな。…魔王軍が国で活動していることを把握しているかはしらんが」
ロベリアは微妙な顔をして言った。
「動いてない七魔将のことなんて知る手段ないしな。天候を操るやつがいるなんてメルがいなきゃ知る由もなかったよ」
おれがそう言うとメルは得意そうな顔をした。
「そうじゃろ。もっと妾を褒めてもよいぞ」
こういう所は見た目相応だな。実際はかなり年がいってるんだろうが。
「今失礼なこと考えんかったか?」
メルは冷たい目で見てきた。
「気のせいだろう。じゃあ城に行くか」
おれたちはフリザイス城に向かった。
ーー
「何と。最近続いている異常気象は魔王軍のせいと申すか」
謁見したフリザイス王は目を丸くした。
「こちらの吸血鬼の真祖のメルによるとそうらしいです。そうだよな、メル」
おれはメルに促した。
「うむ。サヤによると急激な気温の上昇もあったようじゃからほぼ間違いなくウェザディオスの仕業じゃ。そこまで天候を変化させられるのはそうはおるまいて」
メルは自信を持って言い切った。
「出来れば大事件が起きる前に討伐したいんです。…どこか潜んでいそうな場所とかないでしょうか」
ヒカリはダメ元という感じで聞いた。魔王軍の侵略に気付いていない時点で情報があるとは思えないが少しでも情報は欲しいからな。
「むう…。もしかしたら雪の女王なら何か知っておるかもしれぬ」
フリザイス王は少し考えてからそう言った。
「雪の女王?」
「デスブリザードマウンテンの頂上の城に住む雪の精霊だ。余も子どもの時山で遭難した時に助けられたことがある」
フリザイス王はうっとりした顔で言った。もしかしたら初恋なのかもしれない。
「わかりました。行ってみることにします」
「雪が深くて危険だから注意した方がいいぞ。後くれぐれも雪の女王に失礼がないようにな」
フリザイス王は念を押すように言った。どうやらかなり雪の女王に心酔しているようだ。
「ご忠告感謝します。お忙しい中ありがとうございました」
ロベリアに続いておれたちもお辞儀して、玉座の間から出た。
「どうする?列車で会った登山家でも探す?」
城を出た後サヤはそんな軽口を言った。
「そんな時間あるか。まあ山で出くわす可能性はあるがな」
おれたちはまず城下町に出て、登山のための準備をすることにした。
なぜかわからないけど流れで雪山に入ることになりました。次から登山になる予定です。




