列車
「これが列車でありますか…。思ったより長いでありますな!」
エリザは列車を見ながら言った。
「わたくしも初めて見ましたわ。ですが飛行機よりは安心できますわね」
チェリルは車輪が付いているのを見てほっとしながら言った。
「私は何度か乗ったことがあるぞ。護衛に囲まれて窮屈だったがな」
ロベリアは遠い目をして言った。外交で飛び回ってた頃のことを思い出してるのかもしれない。
「予想はしてたけど蒸気機関車なのね。リアルで乗ることなんてないと思ってたわ」
「観光地でしか乗ることないですもんね。ほとんどの所は電車ですし」
サヤとヒカリは物珍しげに列車を見ていた。
「電車ということは電気で動くのか」
「ええ。基本的に外部から電気を集めることで動いているわ」
つまり世界中に電気が通っているというわけか。興味深いな。
「所で乗る列車はどれなのじゃ?」
棺を背中に背負ったメルが聞いてきた。
「チカゲにもらった切符によると…。あれだな」
おれは切符に書いてある『ポーラ』という名前の列車を指差した。
「かなり贅沢ですね。食堂車がある列車に乗るのは初めてです」
ヒカリは指定された車両に向かいながら言った。
「学生が乗ることはまずないでしょうね。親が旅行好きなら別でしょうけど」
サヤは歩きながらヒカリに返した。
「着いたぞ。ここだ」
おれたちが来た車両には個室が並んでいた。
「すごいでありますね。まるでホテルのようであります」
「チカゲ様いい部屋をとって下さったんですのね。さすがにわかりますわ」
エリザとチェリルは部屋を見て驚きの声を上げた。
「このポーラは我が国が誇る最高級の夜行列車だからな。極寒のフリザイスへの旅も快適に行けるというわけだ」
ロベリアは胸を張って言った。
「ふん。蒸気機関車なんかより新幹線乗った方が早く着くじゃないか。何で長い間乗らないといけないんだ」
カネダは不満を言った。
「風情があるからいいじゃない。役に立たないお荷物のくせに水差さないで欲しいわ」
サヤは冷たい目でカネダを毒づいた。
「だ、誰がお「もういいからひとまず部屋に荷物をおかせてくれぬか。この棺割と重いのじゃ」
棺を背負ったメルが言った。
「だったら最初から空間魔法に入れておいたらどうだ?」
「何を言う。それではいざという時すぐに眠れぬではないか!」
メルは逆ギレしながら言った。
「はあ。とりあえず個室に入るか。そろそろ出発時間だしな」
おれはみんなを促した。
「何も起こらないといいわね」
サヤは不安を煽った。
「確かに色々事件の舞台にはなってますが…。天候爵もここでは仕掛けてこないでしょう」
ヒカリはツッコミを入れながら、切符に記されてある個室に入った。
さすがに大事件を起こす気はないです。乗客との絡みくらいは出来そうですけどね。