合流
「あれが祭壇というやつか、メル」
祭壇らしき施設の前に来たおれは側にいるメルに聞いてみた。
「妾に聞かれてものう…。洗脳されてた時の記憶はないからよくわからぬ」
メルはそう言って頭をかいた。
「最初からヴァンパイアには期待していません。ねえ、『構陣師』様」
ジェシカはメルを横目で見ながら、おれに話を振ってきた。
「あまり責めてやるな。おれも洗脳で記憶が飛んでることはわかってて振ったんだ」
「…主どの、全く反省しとらんじゃろ」
メルは冷たい目でおれを見てきた。
「何にしてもぼくたちが一番乗りみたいだね。みんなおそ」
文句をいうカネダの顔スレスレに板状の物が突き刺さった。
「あ、ごめん。敵かと思ったわ」
チェリルとロベリアに続いてやってきたサヤは闇の手を出し、ピラミッドのブロックに刺さったカードを引き抜いた。
「カードをピラミッドに突き刺すなんて。どれだけバカ力なんですか」
「…それお主にだけは言われたくないじゃろうな」
メルはジェシカにツッコんだ。
「ところであんた誰?見た目からしてアイシスの人間じゃなさそうだけど」
サヤは軽い口調でメルに聞いた。
「妾はメル。誇り高き吸血鬼の真祖じゃ」
メルは胸を張って自己紹介した。
「あたしは『魔眼』の対勇者沙夜よ。よろしく」
サヤはそう言って手を振った。
「対勇者じゃと?…魔王側ではないのか?」
メルは訝しげにサヤを見つめた。どうやら対勇者のことを知っているようだ。
「あたしだけは運よく勇者召喚に巻き込まれたのよ。イドルが術式いじったおかげだけどね」
サヤは淡々と説明した。
「ふむ。つまりそこの勇者と一緒に巻き込まれたのか?」
「違うわ。それなんかうちの光の足元にも及ばないわよ」
サヤは冷たい目でカネダを見ながら言った。
「なっ?!誰がそべふぅ!」
カネダが反論しようとすると、突然カネダの後ろの壁が前に開いた。そのままカネダは前に弾き飛ばされた。
「あ、悪い。前に誰かいるなんて思わなかったんだ」
そう言って出てきたのはアイシス人らしき少女だった。
「君は…墓守の一族か?」
「正解。あたしは墓守のマニャ。助けてもらったお礼に勇者パーティーを探すのを手伝ってたんだよ」
マニャがそう言うとヒカリ、エリザ、リリエンヌの3人が開いた壁から出てきた。
「合流出来てよかっ…ヴァンパイア?!ヒール!」
リリエンヌはすかさずヴァンパイアにヒールを唱えた。
「おおっ。なかなか心地よい回復魔法じゃ。礼を言うぞ」
メルは余裕でリリエンヌのヒールを受け止めた。
「効いてない?!ならホーリー」
そこまで言った時ヒカリがリリエンヌの手を握った。
「落ち着いて下さい。ジェシカさんが攻撃をしてないということは、少なくとも現時点では敵ではないということでしょう」
ヒカリは冷静にリリエンヌを諭した。
「お主がもう1人の勇者じゃな。確かに哀れな程物が違うのう」
メルはヒカリを見て笑みを浮かべた。
「ふざけるな!実力も見ないで何がわかる!」
カネダはメルに吠えた。
「実力ではなく器の話をしたのじゃがな。言った所でわからんじゃろうが」
メルはそう言ってカネダを見下した。
「無駄話はこれくらいにしよう。全員揃った所だし乗り込むか」
おれは2人のやり取りに口を挟んだ。
「そうですわね。早く倒してしまいましょう」
チェリルはおれの言葉にうなずいた。
「いよいよツタンクアテムとの決戦でありますね。腕が鳴るであります!」
「ここまで苦しめられた礼をたっぷりしてやろう」
ロベリアはそう言って槍を握り締めた。
「これ以上亡くなった魂を弄ぶことは許せません。しっかり成仏させてあげましょう」
「成仏というのはよくわかりませんが…。迷える魂には救済を与えなければいけませんよね」
ヒカリもリリエンヌも張り切っている。士気は十分なようだな。
「それでは皆さん、ツタンクアテムを倒しに行きましょう!」
ヒカリの号令と共に、おれたちは祭壇に向かって行った。
少し雑かもしれません。次からツタンクアテム戦です。