深まる溝
「チッ。どうせならあいつの血を飲み干して殺しておけよ。血がまずくて命拾いするとは運がいいやつだ」
茶髪ヤンキーは金色の盤を見ながら舌打ちをした。
「使えない勇者がどうなったかなんてどうでもいい!貴様のせいで魔王様に預けられた戦力を奪われたんだぞ。どう責任を取るつもりだ!」
グールス首領はロッドを床に叩きつけて怒鳴った。
「おれは勇者に刺客を送っただけだ。どんな魔物が出るかなんて知るか。大体あの分じゃ何が出ても手懐けられて終わりだろうよ。おれは悪くねえ」
茶髪ヤンキーはそう吐き捨てた。
「ふざけるな!そんな言い訳が通るか!」
「うるせえ!大体文句あるんならてめえもアンデッドを送り込めよ。結果論だけで責めるのはリーダー失格だぜ」
すごい開き直りね。ある意味金田とお似合いかもしれないわ。
「…フン。まあいい。急にメンバーが入ったんだから連携が乱れるのは必至。チームワークの穴をつけばなんとかなる」
グールスの首領は気持ちを落ち着かせて気休めを言った。
「ヴァンパイアと聖騎士と勇者だしな。せいぜい足を引っ張り合ってほしいぜ」
茶髪ヤンキーはニヤリと笑った。
ーー
「…何か意識飛ばさずに相手の様子見れるようになってるわね。もう慣れたのかしら」
あたしが呟くと、前を歩いていたチェリルとロベリアが振り向いてきた。
「また対勇者ですのね。イドルお兄様は大丈夫でしたの?」
チェリルは不安そうに聞いてきた。
「どうやら襲ってきたヴァンパイアをたらしこんだらしいわ。何がどうなったのかは知らないけど」
「…相手が女なら有り得る話だな。さすがイドルだ」
ロベリアは苦笑しながら言った。
「それならよかったですわ。イドルお兄様相手に女性を引くなんて向こうの対勇者も運がありませんわね」
チェリルは呆れながらイドルの無事を喜んだ。
「とりあえず合流したら色々話を聞かせてもらいましょう」
あたしの言葉にロベリアとチェリルはうなずいた。
ーーー
「クシュン」
ピラミッドを歩いているとなぜかくしゃみが出てきた。
「どうしました?ヴァンパイアの牙に噛まれたせいで何かうつされたんですか?」
ジェシカは真顔で毒を吐いた。
「失礼な。妾の牙に噛まれてもそんなことにならんわい!」
メルはジェシカに食って掛かった。
「でもヴァンパイアに噛まれたら眷属が増えますよね。何か危ない物が出ているのでは?」
「それは噛んだ上で血の契約を結ぶからじゃ。噛んだだけでどうにかなることはないわ」
メルは怒りながらジェシカに説明した。
「おれも知ってるからあえて噛まれる作戦をとったんだ。人間であることを捨てる覚悟まではないしな」
「その知識が間違っていて吸血鬼になったらどうするつもりだったんですか…。私の討伐対象が増えていたところでしたよ」
ジェシカは呆れ顔で言った。
「お主らは仲がいいのか悪いのかよくわからんのう。…それはそうと勇者はなぜそんなに離れてついてきておるのじゃ?」
メルが話を振るとカネダは肩を震わせた。
「うるさい!ぼくに近寄るな!」
カネダは顔に手を当てながらわめいた。
「妾何かやってしまったようじゃな。勇者がこんな調子で大丈夫かのう」
メルは心配そうな顔をした。
「放っておきましょう。どうなってもあちらの責任です」
ジェシカは冷たい口調で言い放った。
「…勇者の扱い悪すぎじゃろ」
メルは何とも言えない顔で、後ろからついてくるカネダを見た。
あまり話が進みませんでした。そろそろ合流させたいです。