それぞれの進捗
「ガルルルル!」
「ひ、ヒィィィ!また出たぁぁ!」
襲いかかってくる犬のゾンビを見てカネダは悲鳴を上げた。
「ふん!」
すかさずジェシカがモーニングスターで頭部を砕いた。相変わらず容赦ないな。
「自前のアンデッドが増えてきたな。それだけツタンクアテムに近付いているということか」
「死霊術も強くなっていますしね。より強力なアンデッドも操れるようになっているようです」
ジェシカはモーニングスターの鉄球を引き寄せながら返した。
「とは言えグールスはジュエラル大会で不在だから守りは薄いだろうな。側近のミイラが出払っているのは好都合だ」
「戦力が分散しているのは好都合ですね」
ジェシカは冷静に言った。
「ふん。本当にグールスが不在かもわからないだろう。勇者であるぼくがアイシスに来ているのにわざわざピラミッドを空けるものか」
カネダが珍しくまともと思われる反論をした。自己評価が高すぎることを除けば割といい着眼点だ。
「大丈夫だ。グールスが大会に出場していることはサヤに確認してもらったからな」
ーーー
「あのマジシャンガール使ってるのね。元ネタは知らねーとか言ってたのに」
あたしは宙を浮いてるMephoneを見ながら熱した鉄板の上を滑ってくる氷を打ち返した。
「サヤ様。大会の中継を見ている暇があるなら鉄板ホッケーに集中して下さいまし!」
あたしとギガントゾンビの鉄板ホッケーを観戦しているチェリルがツッコんできた。
「ウガァ!」
ギガントゾンビは凄まじい威力で打ち返してきた。
「大丈夫よ。こいつパワーはあるけど直線的だし。…それにしても何で急に旧アニメにありそうなゲームぶち込んできたのかしら」
あたしは氷をジグザグになるように打ち返した。
「氷に液体爆薬が入った試験管を刺して打ち合うゲームを知っているというのか」
ロベリアは少し引いたような顔をしながら言った。
「まあね。正直この勝負を持ち掛けられた時はツタンクアテムは異世界で誰かの別人格として取り憑いてたんじゃないかと思ったわ」
あたしはギガントゾンビが打ち込んできた氷をまたジグザグに返した。
「なぜそう思ったんですの?…まあいいですわ。それはそうと大分氷が小さくなって来ましたわね。力は互角なようですがいつ爆発するか気が気ではありませんわ」
チェリルは氷を見ながら言った。
「ならそろそろいいかしら」
あたしはヘラを縦にして打ち返した。
「フンガァ!」
ギガントゾンビが打った瞬間氷が真っ二つに割れた。そして試験管が熱々の鉄板の上に落ちた。
「ウガァアア!」
ギガントゾンビは爆発して吹き飛んだ。
「なるほど。縦に打つことで氷に切れ目が出来たのか。その氷を強打したから割れたわけだな」
ロベリアはギガントゾンビの残骸を見ながら分析した。
「そういうこと。マンガ見てなかったら攻略出来なかったわ」
あたしは闇魔法で鉄板を持ち上げ、ギガントゾンビの破片を鉄板が乗っていたブロックの中に埋めて墓を作って鉄板を墓標にした。
「さて、次はどんなマンガ再現したゲームが来るのかしら」
「何でそんなに楽しそうですの…?」
チェリルは呆れた目であたしを見てきた。
ーーー
「ふう。結構力づくでゴリ押し出来るでありますな」
エリザさんは飛んで来る矢をはたき落としながら言いました。
「本当は引っ掛からない方がいいんでしょうけどね。…あっ」
エリザさんに話していると落とし穴が開きました。
「シールド」
私はすかさずシールドの反動で飛び上がりました。
「問題は魔力を使い過ぎることですね。イドル様に習った理論で節約出来ていますがさすがに無限ではないですから」
リリエンヌさんはそう言いつつ近付いて来るゾンビを浄化しました。
「自分の空間魔法の中には魔力を回復するアイテムはたくさんあるので今の所は何とかなりますよ。出来れば非常事態のためにとって起きたいでありますが」
エリザさんは空間魔法を開きながら言いました。
「何にせよ沙夜ちゃんかイドルさんと早く合流することを目指しましょう。罠が探知出来た方が楽ですからね」
「そうですね。このままだといずれ対処出来なくなるかもしれないです」
リリエンヌさんは不安そうに言いました。
「大丈夫!きっと何とかなるでありますよ!…多分」
エリザさんはポツリと呟きました。
「そこはちゃんと言い切って下さいぃ!」
色々と不安になりながら、私たちはピラミッドを進みました。
どうも話が進みませんね。そろそろ話を動かしたいです。