罠の連鎖
次の部屋にたどり着くと剣を持った石像がいくつかあった。おれはとりあえず石像を鑑定した。
「…あの石像はモンスターではなさそうだな。ただ動く仕掛けはあるから切りかかってくる可能性はある」
おれは鑑定結果をみんなに伝えた。
「なら全て倒せばいいわけでありますな!」
エリザはうれしそうに剣を抜いた。
「それはどうしようもなくなった時の最終手段よ。動く条件と動かない条件を確かめてからにしましょう」
サヤはそう言って右足を出した。
「反応ないわね。これならどう?」
サヤが左足を出すと石像が動き出した。
「このピラミッドの製作者はカードゲーム世界のエジプトから転生したのかしら。…右足と左足のどっちだったかは忘れたけど」
そう言ってサヤが右足を出すと石像が止まった。
「右足を前に出しとけば襲って来ないようね。こうやって左足を引きずって歩けば襲われないはずよ」
サヤはおれたちに手本を示しながら進んだ。
「残念。戦ってみたかったのですが」
エリザは本当に残念そうな顔をした。
「変な所で体力使ってどうするんですの…。わざと戦うような真似をしたら縛りますわよ」
チェリルは魔法陣からツタを出してうねうねさせた。
「わ、わかってるでありますよ。こうすればいいんでしょう」
エリザはそう言ってわざわざレイピアに換装した。確かに動きはそのままだな。
「くっ。何でいちいちこんなめんどくさいことを…」
カネダは右足を前にして移動しながら愚痴った。
「なら勝手に突っ込んだらどうですか?我々は責任を取りませんが」
ジェシカは冷たい目でカネダを見た。
「ふ、フン。仕方ないから意見を聞き入れてあげるよ」
カネダは簡単に引き下がった。本当は怖いんだろう。
そしてそのまましばらく進んでいると、後ろで何かが落ちる音がした。
「落下音の前にガタンっていう音がしたわ。上で落とし穴か何かが作動したようね」
サヤは耳を澄ましながら言った。
「誰かが罠に引っ掛かったというわけか。人間か?」
「いいえ。骨の音しかしなかったからスケルトンね。…足音がするからもうすぐここに来るわ」
サヤが言う通りスケルトンが部屋に入って来た。
「あの、スケルトンが左足を前にしたら像は動くんでしょうか?」
リリエンヌはみんなが薄々感じていたことを口に出した。
「そんな細かい設定しているわけないでしょうね。むしろ石像に仕掛けを解いた盗掘者が他の盗掘者のせいで石像に倒されるのは好都合ですからあえて緩い設定にする方が自然です」
ジェシカの言葉通りスケルトンが床を歩くと同時に像が動き出した。
「待て!左足を前に出すな!」
カネダはスケルトンに向かって叫んだ。
「そんなことスケルトンに言っても無駄よ。操ってる存在がいるにしても罠であたしたちが死ねば万々歳でしょうね」
サヤは冷たくカネダをあしらった。
「こうなったら正面突破であります。はあっ!」
エリザは長剣に換装して石像の剣を受け止めた。
「後ろは任せて下さい。やあっ!」
ジェシカはモーニングスターをスケルトンにぶつけた。
「自分が止めている間に進んで下さい。後はジェシカ殿とただの勇者以外の前衛が交代して止めればいいであります」
エリザは的確な指示を出した。
「おい。ぼくを戦力外扱いするな!」
カネダはエリザに向かって怒鳴った。あんなに怖がってたくせに今更何を言ってるんだろう。
「何か空いた穴からスケルトンが補充されてるみたいよ。先を急ぎましょ」
サヤが言う通り新たなスケルトンが部屋に入って来た。
「承知した。次は私が止めよう」
そう言ってロベリアが前に出た。早くこの部屋を出た方がいいだろうな。
なかなか話が進みません。次はもっと話を進めたいです。