砂漠
サヤがグールスを倒した日の深夜、おれたちは砂漠に出ることにした。
「かなり寒いですわ。砂漠って暑いものじゃありませんの…?」
チェリルは小さい体を更に縮こまらせながらぼやいた。
「砂漠って朝と夜の気温差がすごいとは聞いたことはありますけど…。実際体験することなんてないと思ってました」
ヒカリも自分の体を抱きしめて寒がっている。
「朝のうちにピラミッドに着くためには仕方ないだろう。それに日差しが強いよりはまだマシだ」
ロベリアは冷静に言った。
「私としては明るい方がいいです。暗闇だと聖属性の光は目立ちますから」
リリエンヌは不安そうに言った。
「わたくしも日差しが強い方がいいですわ。ソーラービームが使い放題なのは使える植物が少ない砂漠では有利ですの」
「草タイプか。まあ確かに木属性ではあるけども」
サヤはよくわからないことに食いついた。いつもの異世界ネタだろうか。
「何にせよ着くのは早い方がいいな」
おれは召喚魔法陣を書いた。
「飛ぶように地を蹴り天まで駆け上がれ。サモン。ショコランナー」
おれが詠唱すると魔法陣から9羽の色とりどりの鳥が現れた。
「「クエー!」」
ショコランナーたちは一斉に鳴いた。夜だから
響きそうだな。
「わあ。すごくかわいいですね」
ヒカリはおれが目の前に出したショコランナーを撫でた。
「どこかで見たことある鳥ね。砂漠を越えるために一応持って来たのが無駄になったわ」
サヤはそう言ってケコという鳥のカードを見せてきた。実体化出来ないからどうにも出来ないのだが。
「ショコランナーでありますか。賢いので自分の馬術が活かせないのが残念でありますな」
エリザは残念そうに出していた乗馬用の鞭をしまった。
「ふん。こんな鳥の魔物なんてぼくは乗らないぞ」
目の前の金色のショコランナーを見てカネダは憮然とした顔をした。
「なら歩いて行けばいいでしょう。それでピラミッドに着かなくてもこちらは構いません」
ジェシカは冷たい目でカネダを見た。
「な、なんだと?!」
カネダはジェシカに怒鳴った。
「ジェ、ジェシカ。仮にも勇者にそんな言い方は…」
「勇者と言っても所詮スペアです。そもそも現時点では足手まといでしかない者に気を遣う必要はありません」
はっきり言うな。カネダを使えない道具としか見ていないんだろう。
「よくも言ったな!足手まといかどうか見せてやる!」
カネダはそう叫んでショコランナーに乗り込んだ。
「全員乗ったな。じゃあ行くぞ」
おれは先頭に立ってショコランナーを出発させた。
ーー
「砂しか見えませんね。本当にこの方向で合ってるんでしょうか?」
ヒカリが不安そうに聞いてきた。
「鷹の目で確認してるから大丈夫だ。この気温なら蜃気楼ということもないだろう」
「Mephoneのマップでも確認出来てるわ。…ちょっと止まって」
サヤはいったんショコランナーを止めた。
「西から何か来てるわね。数は3」
サヤが言う通り西を見るが何も見えなかった。
「おれには何も見えないぞ」
「地中から来てるのよ。かなり長くて大きいわ」
サヤはそう言って目を閉じた。
「人と鳥の臭いがうまそうな臭いがする。獲物は山分けだ、って言ってるわね。狙って来るって言うなら先手取ってやるわ」
サヤはそう言って砂の中に黒い光を本撃ち込んだ。
「「「ピギャーー!」」」
次の瞬間砂煙が上がり、3体の巨大なミミズが出てきた。
「サンドワームか。面倒なのが出てきたな」
おれは溜息を吐いて目の前のサンドワームに意識を集中させた。
あまり話進みませんでした。次は久々のリアルファイトです。