ジュエラルを終えて
「あたしの勝ちね。アンティルール通りデッキをもらうわ」
ジュエラルに勝った沙夜ちゃんはグールスの人を見下しながらデッキに手を伸ばしました。
「み、認めんぞ!この私の最強デッキが敗れるなどあってはならないことだ!」
グールスの人が抵抗した瞬間手の甲に目が浮かび上がってきました。そういえばグールスの人が刻印していましたね。
「ぐ、ぐああ!」
グールスの人は手を押さえました。本当に効果あるんですね。
「最強っていうんなら苦渋でマキュラでも落としときなさいよ。余計な壁入れるくらいならもっとドローに特化した方がいいわ。無駄に悠長に自分を守って待ってるから負けるのよ」
沙夜ちゃんはダメ出ししながら容赦なくディスクから山札と墓地のカードを抜き取りました。沙夜ちゃんの場のエグゾディアもそのまま懐から取り出したデッキケースにまとめました。
「わ、私のデッキを返せ!」
「え、やだ」
沙夜ちゃんはグールスの人の目の前で空間魔法にデッキを投げ込みました。
「あ、あああ!」
飛びついた瞬間沙夜ちゃんの空間魔法が消えました。
「ぐべ」
グールスの人は変な声を上げて倒れ込みました。
「次は誰?いくらでも相手になってあげるわ」
沙夜ちゃんはツタンクアテムを見せながらいいました。
「調子に乗りすぎですねえ。ここはわたくしが」
「やめろ。相手は相当な手練れだ。代替品で予備があるとはいえ儀式に関係ないカードを狙って4枚失うのはリスクが高すぎる」
タトゥーの人がフードを脱いだマジシャンみたいな人を止めました。
「見習いを知ってるのね。てっきり黒き魔術師だけかと思ってたわ」
沙夜ちゃんは小声で何か言いました。
「逃げるの?やっぱりグールスって腰抜けの卑怯者しかいないのね」
沙夜ちゃんは更に煽りました。
「違う。無粋な邪魔者が近づいてきたから勝負を預けるだけだ」
タトゥーの人が言う通り荒々しい足音がします。誰かが憲兵に通報したんでしょうね。
「去る前に名前を教えてくれないか?」
タトゥーの人が沙夜ちゃんに尋ねました。
「はっ。下衆に教える名前はないわ」
沙夜ちゃんが言い放つとともにカードショップの扉が開いて憲兵さんたちが入って来ました。
「動くな!皆、すぐにやつらをジュエラルで拘束するぞ!」
憲兵さんたちは真剣な顔で言ってますがジュエラルで拘束ってどうするんでしょう?逃げられなくするカードでも有るんでしょうか?
「君もだいじょ…ま、『魔眼』様!失礼しました。グールスに危害は加えられませんでしたか?!」
憲兵の1人が沙夜ちゃんに敬礼しながら言いました。
「問題ないわ。返り討ちにしたから」
沙夜ちゃんは冷めた目で憲兵さんを見ながら返しました。
「そうか。お前が対勇者か。私はシリド。次は戦場で会おう」
タトゥーの人はシャディーンさんが持っていたのに似た魔具を出しました。
「ま、待て!」
憲兵さんたちが包囲する中、グールスの人たちは光の中に消えました。
ーー
色々事情聴取された後、私と沙夜ちゃんは宮殿に戻りました。
「グールスを倒したことで儀式はだいぶ遅れるな。よくやったぞ、サヤ」
イドルさんはそう言って沙夜ちゃんの頭を撫でました。
「大したことないわ。あいつ多分グールスでも最弱の部類だもの」
あの人最弱なんですか。禁止制限無視してる人っていう印象しかないのでよくわかりません。
「戦ったグールスの実力は知りませんがエグゾディアパーツ3組を奪えたのは大きいですね。エグゾディアをジュエラル中に揃えた人がいないという伝説があるのはそもそも5枚とも持っている人が少ないからです。大会で使わないレアカードをデッキに入れる人はいないので大会中に儀式に必要なカードが揃うことはないでしょう」
シャディーンさんは冷静に分析しました。
「そうとも限らない。グールスの活動が活発になってパーツカードを狙いに行く可能性も考えられるだろう」
ロベリアさんが神妙な顔をして言いました。
「つまりその分ピラミッドは手薄ということでありますな。攻めるなら今であります!」
エリザさんは熱くなって拳を握りしめました。
「何にせよ1度ピラミッドに挑んだ方がいいのは確かだな。いくら沙夜が時間を稼いでくれたとはいえこのまま待ってると儀式を行われてしまうだろう」
イドルさんは深刻な顔をして言いました。
「ツタンクアテムのピラミッドに転移出来たらいいんですけどね。我々も全てのピラミッドに行っているわけではないですから」
シャディーンさんは申し訳なさそうな顔をしました。
「そう思って砂漠用の装備を買ってきたわ。準備が出来たら行きましょう」
沙夜ちゃんは自信を持って言い切りました。
正直切り所がわからなかったです。次は砂漠に行きます。