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構陣師  作者: ゲラート
第1章 サミュノエル動乱
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勇者召喚陣

「課長。お客様がいらしております」

仕事が一段落した時に秘書のルーシーが話しかけて来た。

「客?誰だ?」

「神殿騎士です。巫女姫様のお使いで来たと言ってました」

つまり巫女としての用件ってことか。放置した方がめんどくさいな。

「わかった。すぐ行く」

おれは待っていた神殿騎士の後ろについて神殿に向かった。


「巫女姫様。『構陣師』殿をお連れしました」

神殿騎士は執務室のドアをノックしてそう言った。

「ご苦労様ですわ。悪いですが2人きりにさせてもらいませんか?」

「は!」

神殿騎士は敬礼してドアの横に陣取った。いくらなんでもものわかりよすぎだろう。神殿騎士としてそれでいいのか?


「邪魔するぞ」

部屋に入ると体に小さな衝撃が走った。

「お会いしたかったですわイドルお兄様!最近お姉様ともお会い出来なかったので退屈してましたの」

おれに抱きつきながら『桜花』の巫女姫チェリルが言った。

「お互い忙しいからな。それで勇者召喚陣に関するどんな用件でおれを呼び出したんだ?」

「やっぱり今呼び出されたら気付きますわよね。紅茶を淹れますのでおかけ下さいませ」

チェリルは名残惜そうに離れるとティーセットを取りに行った。


「単刀直入に言いますわ。イドルお兄様に勇者召喚陣の調整を頼みたいんですの」

チェリルは背伸びしながら紅茶を淹れながら言った。

「本気か?勇者召喚陣は神殿にとって1番重要な物だろう」

「だからこそですわ。得体の知れない過去の遺物が書いた勇者召喚陣を使って勇者様に万が一があって悔やんでも遅いですもの。それなら現代の魔法陣の専門家である『構陣師』にまかせた方が安心出来ますわ」

得体の知れない過去の遺物ね。巫女姫としてその発言はどうなんだ?

「気休めのために勇者召喚陣の術者に喧嘩を売れというのか?割に合わないな」

「ダメ…ですの?」

チェリルは涙目で見つめて来た。

「…わかった。勇者召喚陣に興味はあるからやってやるよ。その代わりどうなっても文句は言うなよ」

おれの言葉にチェリルの顔はパッと明るくなった。

「言いませんわ。イドルお兄様を信じてますもの」

「そいつはどうも」

口に含んだ紅茶はやけに熱かった。


ーーー


「これが勇者召喚陣か…」

思ったよりでかいな。ここはあいつらの力を借りるか。

「開け、審判の眼。サモン。デビルズアイ」

召喚魔法陣に魔力を込めた目玉の魔物が3体出てきた。こいつらがデビルズアイ。おれが使役している召喚獣だ。

『またおれたちッスか。マスター目玉使い荒すぎッスよ』

デビルズアイのブルーの声が頭の中に響いてきた。召喚獣とマスターは念話で会話出来る。声帯どころか口すらないこいつらともコミュニケーションを取れるというわけだ。

「消費魔力が少ないからな。それに小さいし浮遊も出来る。視覚共有するだけなら最善の選択肢だろう」

『はあ。何で目玉なんかに生まれちまったんスかね。そうじゃなかったらこんな鬼のマスターにこき使われることもなかったッス』

ブルーはうんざりしたような口調で言った。念話で口調というのもおかしな話だが的確な表現が思い浮かばないからあえてそういうことにしておこう。


「口もないくせにうだうだ言うな。さっさと指示通りに動け。ブルーは上空で全体を俯瞰するように映せ。アイはおれの手元あたりで浮遊してろ。クレスタは送還陣を見に行け」

『はいはい。了解したッス』

『はーい』

『送還陣?マスターがいじるの召喚陣だけじゃないの?』

クレスタがもっともな疑問を飛ばしてきた。

「確かに手を加えるのは勇者が帰る時だ。それでも見る許可もらったんだからついでに見ておいて損はないだろう。後々役に立つかもしれないしな」

『役に立つ、か。マスターにしか出来ない発言だねー。そういうことならわかったよ』

クレスタは無駄に高速で送還陣に向かって行った。


「さて、さっそく取りかかるか」

おれはまずブルーの視点を元に勇者召喚陣の全体像を把握してみることにした。

「結構でかいな。勇者が逃げて召喚陣の外に出ないようにする措置か?」

だったら追尾つけた方が安定するな。おれは魔法陣用の針で術式を勇者召喚陣に刻んだ。

『あれ?サイズ調整しなくていいの?いつものマスターなら無駄があり過ぎるから修正するじゃない』

アイが不思議そうに言った。

「無駄があり過ぎるくらいでちょうどいいんだよ。そんなに簡単に起動できたら後世私利私欲で使用するやつが出て来るかもしれないからな。ならあえて燃費が悪いまま放置した方がいいだろう」

『あー。勇者って強力だからね。簡単に喚べれば使っちゃう気持ちはわかるわ』

そしておれの名前は勇者を簡単に召喚出来るようにした極悪非道な魔法使いとして語り継がれるわけだ。これ以上変な形で歴史に名を残したくない。


「次は勇者召喚陣自体の問題だな」

おれはチェリルから預かった勇者召喚に関する資料を見た。

「どうやら勇者ではない者が巻き込まれる事態が多いようだな」

この無駄な大きさなら関係ないやつも範囲に入ってもおかしくないな。何か対策はしてないのか?

「光属性に特化覚醒…。特化覚醒がどんなものかは現時点で確かめようはないが巻き込まれたやつに力を与えないということだけはわかるな」

『何それ。術者サイテーじゃん』

アイは心底軽蔑した口調で行った。


「まあそう言うな。術者も危険人物が召喚された危険性考えて力を与える相手を限定したんだろう。最も力を持たない異世界人を保護して勇者に対する人質にする思惑もあっただろうし召喚された相手に対する配慮は皆無なのは事実だがな。それでも巻き込まれないようにする術式がなかった上での次善の策だったとでも思ってやるのが優しさというものだ」

『いや、マスターもフォローする気ないッスよね』

そんなことする筋合いもないしな。とりあえず光属性以外魔法陣から弾き出すと繋がるように術式を組むか。特化覚醒とやらはここに着いた段階で召喚された者に付与しよう。

『細かっ。よくそんな間に書けるね』

文字まで魔法陣の大きさに比例してるからな。これだけ余白があれば余裕だ。

「よし。これで召喚される側に余計な抵抗を出来る力がない限り巻き込まれを防げる。ここまでやれば巻き込まれが起きたとしてもこっちの責任じゃない」

『まあそうよね。巻き込まれたとしても自業自得かろくに魔法陣も読めないくせに手出ししたバカのせいだもの」

そういうことだ。しかも読めなくて手出しするということは魔法体系が違うということになる。未知の魔法というのは大きな戦力になるだろう。

「さて、他に問題がないか見てみるか」

おれは資料と魔法陣を見直す作業に戻った。


「…やはり術式からは理由はわからないな」

何度見ても中身はスカスカで勇者召喚と覚醒しか書いてない。どうしても資料に書かれてる現象と結び付かないんだが。

「魔法陣自体に細工でもあるのか?アイ、ブルー、クレスタ。解析の魔法陣を書くから魔力を込めてくれ」

おれは呼び戻しておいたクレスタも含めたデビルズアイ達に指示を出した。

『はーい』

アイは張り切って解析の魔法陣に魔力を注ぎ込んだ。


ーーー


「とりあえず最善は尽くしたな」

おれは針をローブの懐にしまい込んだ。

『最善、ねえ。マスターならもっとやりようあったでしょ』

アイは探る目つきでおれを見てきた。

「その可能性は否定しない。だがだからといってやるのはリスクが大き過ぎる。そんなリスクを取る必然性も権限もおれにはない」

『まあそうだね。それにしてもまさか時代の変化でそんなことになるなんて術者も思わなかっただろうねー」

クレスタはしみじみと言った。

「だろうな。個人的な理由であんなことやらかした術者にそんな先見の明があったとは思えない」

『そうッスね。完全に術者に非があるとしか言えないッスよ』

ブルーは完全に呆れ果てた口調で言った。

「永遠を信じるのは勝手だが後世に尻拭いさせないでもらいたいな。とにかくご苦労だった。リターン!」

『『また呼んでねー!』』

『今度はBは飛ばして欲しいッス…』

ブルーだけぼやきながら光と共に姿を消した。


「頼むから今回だけは問題起こるなよ」

勇者召喚陣に触れながら呟いた言葉に応える者は誰もいなかった。

お久しぶりの人もいるかもしれません。行き詰まったので1から書き直すことにしました。更新は不定期になりますがよろしくお願いします。

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