序章3 『初任給と初仕事』
さて、大企業の運営から何をどうしたらこうなるかはわからないが、俺は悪神を滅するという、まるで規模の違う仕事を請け負うことになった。
それに伴って、神様から初任給もといチートを贈られることとなった。……寄贈神様から。
「我「寄贈神」より、汝神生彌弦に神物を授けん」
「有難く頂戴致します」
俺は今、跪いて寄贈神様とご対面中である。
別に跪かなくとも不敬罪とかにはならないのだが、なんというか空気が重い。それとも神威というのだろうか。寄贈神様を直視できないのだ。後光が凄まじい。
寄贈神は刀神のアヤメ様や鉄と歯車の神フェルヌ達「下級神」より上位の「上級神」に分類される。
そんな寄贈神様から賜った神物は以下の三つだ。
・半神格化……簡単に言うと半分神様の仲間入りをするということ。完全な神様になるためには諸々の条件があるようだ。
・神力活性……体内、又は神界中の神力を使って様々なことができるようになる。神力の回復力が上昇する。まぁ言うなれば魔法とかその辺に近いか。できることは追々確かめていこう。
・異世界転移……文字通り異なる世界に渡ることができる。神力を消費するので連続使用は不可能。また異なる時間軸の世界にも転移不可能。
完全に、全てチート中のチートである。
まぁ神様と戦うんだから当たり前っちゃ当たり前だが。でもこれでも勝てないやつもいるかもしれないから、油断は禁物だ。
あとはついでに任務許諾、成功報酬と、神様と下界の民のことや注意事項についても確認した。
・任務許諾、成功報酬……任務中なるべく神生彌弦自身の保証をすること。神生彌弦がいない間、元の世界の人達の身柄も保証すること。終わったら元の世界に帰すこと。あとは全部片付いたら決めることにした。
・神様、下界の民について……基本的にはあちらが依頼する悪神や堕天使を滅神すること。封神は不可。下界の民や造物について無闇に神力を行使しないこと。過剰干渉は控えること。
取り敢えずはこんな所で、あとは逐一アヤメ様に繋がるホットラインを通じて彼女に聞くことになった。
……ここまでいくと、もう俺自身人間じゃないんだと嫌でも自覚してしまう。終わったら人間に戻してもらおう。
「さて、そろそろ準備はいいかの?」
「まぁ、大体は」
寄贈神様が去ったあと、アヤメ様、フェルヌ、クルツのおっさんと四人で出発の準備をした。
「最初に向かう世界はどんな世界ですか?」
ついさっきまではアヤメ様に対してだけ尊敬語や謙譲語を使っていたが、面倒臭くなって丁寧語オンリーにシフトチェンジした。アヤメ様も嫌な顔をしなくなったし、これは少し距離が縮まったのだと思っておく。
「うむ。気を遣って最初はそなたのよく知るであろう世界を選んでおいた。人型生物が主流の世界で問題も無かろう」
「へぇ、ありがとうございます」
そう言ってアヤメ様から受け取ったのは、その世界の「座標番号」だ。これを異世界転移の行使と同時に入力すれば、目的地に辿り着ける。
「そこの世界で滅して欲しいのは「幸福神」メルザドじゃな。厄介なことに自分の能力を使って支配地域全域の世界法理を歪めておる」
「ほぉー」
適当に頷く俺だが、その世界法理とやらがイマイチわからない。
「女神だからって油断すんじゃねぇぞ」
「わかってるから、クルツのおっさん」
「その呼び方どうにかなんねぇ?」
クルツの抗議をサラリと流しながら、三人の神様に目を向けた。
「じゃあ行ってきますね」
「おう」
「行ってくるのじゃ」
「そなたに神王様の御加護があらんことを」
神様が神様頼みしてる……とはおくびにも出さず、苦笑しながら異世界転移を発動した。
──初仕事、いっちょやってやりますか!!
不安が半分、期待が半分。
まだ見ぬ異世界に俺は飛び出していった。