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異世界旅行者 ~神殺しがお仕事ですから~  作者: 深縹いぐ
第一章 『召喚勇者と幸福の女神』
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第一章8 『魔獣の森、忍び潜む影が一つ』


 腹ごしらえを終えた俺達は一度王都に戻って、今回合同で討伐を行う王国の騎士団「白銀騎士団」と、王都の高ランク冒険者パーティーである「竜の牙」と合流を果たしていた。


 依頼を受けたときはてっきりガルツと2人だけでやるものかと思っていたが、予想よりスケールの大きいものだったようだ。

 でも考えれば当たり前だ。

 王国の中枢部に魔獣が沢山蔓延っているんだ。国や、それに準じた人達が動いて当然だろう。




「俺が「竜の牙」、パーティーリーダーのバリンスだ。一応これでも剣の腕には自信がある」


 茶髪を短くまとめ、銀色をしたミスリル製の鎧を四肢をまとった中年男が言った。

 自分を卑下したような言い方だが、その立ち振る舞いを見て相当な使い手だと判断する。まぁガルツにはかなわないだろうが、今の俺と純粋な剣だけの勝負でいえば勝てるかもしれない。


「同じく僕はビリー。見たまんまかもしれないけど、いつもは盾役をやってる。よろしくね」


 次に挨拶をしてきたのは、少し恰幅の良い、背の高い好青年だった。リーダーのバリンスと同じ鎧を身につけているのに加え、横幅50センチ、縦1.5メートルほどの大盾を持っている。見るからに頑丈そうだ。


「……私はヴァシリッサ。炎と風の魔法を使える。回復は無理。よろしく」


 最後は黒色のローブで身を包んだ、青色の長い髪を腰まで伸ばした女性だった。少し寡黙だが、その言葉の節々には熱意が溢れている気がしないでもない。

 彼女もまた、ローブで隠れて見えにくいが銀色の薄い鎧をつけている。きっとパーティーの制服みたいなものなのだろう。


 ……以上がAランクパーティー「竜の牙」。

 パーティー名がかなり安直で、竜感も牙感もない名前負けしているパーティーである。

 しかし実力は折り紙付きで、攻・防・魔のバランスに優れた連携攻撃は、それこそ竜を3人だけで奢れるとも噂される。あ、違った。名前負けしてなかった。




「私は「白銀騎士団」14代目団長、ヨシフ・ゲオルギエヴナだ。先代、歴代最強と呼ばれた男にはかなわんが、それでもこの騎士団を引っ張ってきた。頼りにしてくれ。此度の助太刀、我が騎士団を代表して感謝する。共に邪悪な魔獣共を滅ぼそう」


 で、この堅苦しい銀髪の美青年が団長か。

 にこやかなイケメンスマイルを浮かべながら握手をしてきた彼は、その目に闘志を燃やしている。

 前に一度負けたのが相当悔しかったのだろう。

 それに歴代最強と言われた騎士団長の後を継ぐ者となれば、周りからの期待も半端ないはずだ。気苦労絶えないね、団長殿。


「私が副団長のキリル・マトヴェイだ。団長の抑えは私に任せてくれ!」


 ドン!と胸を叩きながらそう言うのは副団長のキリル。これまたイケメンな……でもすぐヘタレそうなやつだ。

 団長の抑え……はつまりヨシフは暴れることがあるということかな。勘弁して欲しいが。


 以上2人が王国お抱え「白銀騎士団」の主な面々。

 団員は全員、真っ白な鎧に銀色に光り輝くマントをつけている。総勢20人ほどの精鋭部隊だ。

 ほとんどが剣を得物にしていて、数人槍や弓といったものが見受けられる。


「俺はヤヅルという。主に剣を使う。よろしく」


「俺は……レイクという。同じく剣だ。よろしく頼む」


 レイクとはガルツのこと。今はフードを被って偽名も使っている。

 理由は未だに伏せていて、そろそろ俺も怒って無理矢理に聞き出してもいいんじゃないかと思い始めている。そんなに信用できないかな、俺。


「2人はパーティーでも組んでるのかな?」


 「竜の牙」盾役ビリーがそう聞いてきた。

 俺達は数秒沈黙した後に、


「いやただの知り合い……じゃなく師弟関係にある。ガ……レイクが師匠だ。かなり強いぞ」


「ほう……1回戦ってみてえな」


 俺が答えると、ビリーの後ろに隠れていたリーダーのバリンスが顔を見せた。

 この人は見た感じ戦闘狂だからなぁ……勝つまで戦わせられそうだ。


「依頼が終わったら、相手してやってもいい」


 ガルツ──もといレイクがそう答えると、バリンスはフッと頬を緩ませて、


「約束だ。……楽しみにしておこう」


 呟くように言ったあと、またすぐその場を後にした。

 俺がふっと少し軽く息を漏らすと、その様子を見ていたビリーが「ごめんね」と言ってその後を追っていった。

 「別に気にしてない」と言いかけたが、レイクがなぜだか不敵な笑みを浮かべていたのでやめておいた。


 と、そんなやり取りをしていると、


「これより、白銀騎士団と冒険者パーティー、合同魔獣討伐を開始する!!」


 先ほど挨拶をしたヨシフ団長が、頭上に剣を掲げ、張り上げた声を出すと、団員たちは一斉に「オォォォォォォ!!」と叫び声をあげた。


「では出発する!!」


 バサっとヨシフ団長が銀色のマントを翻し前進を始めると、団員も後に続いた。

 そして俺達冒険者もそれに続いて歩き出す。


 目的の森はここで歩いて行ける距離なので、討伐隊は必然、街のど真ん中を通っていくことになる。

 通常何事かと思う事態だが、先に通達が行き届いていたためか、周囲の民間人は多少どよめくだけで混乱はない。

 むしろ「頑張ってーー!」「キャーヨシフ様ーー!!」などと黄色い悲鳴が聞こえるくらいである。


 少しやり場のない気持ちを抱きながら、俺は足を進めていった。




✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱




 今回、依頼で討伐するのは森に棲む魔獣の大規模な群れ。白銀騎士団でさえ手をこまねいている規模の群れだという。

 一度討伐に行ったときは、その大半が憂き目に遭ったらしい。数年前に王国史上最強の騎士団長が引退したとはいえ、騎士団は騎士団。その敗北は結果的に、騎士の看板に泥を塗ることとなった。

 王都には侵攻してきさえしないものの、周囲の居住区は日々戦々恐々としている。森の深奥で力を蓄え、やがて一手に攻めてくるのではないか、と。

 しかし意外とそんなことはなく、今回の討伐は十全に戦力を整えて挑むことになった。


 王国には一応魔法師団もあるようだが、彼らは今帝国との国境で監視・防衛任務についているため討伐隊には参加できず。

 以前に敗北を期した王国の騎士達。

 そしてヤヅルら屈強な冒険者達。


 その2つがその剣を握ることになった。






 俺達が出発してから約1時間後、討伐隊は森の入口へと足を踏み入れていた。

 カチャカチャと鎧の擦れる音を鳴らしながら、歩みを進めていく。

 そこで突然、ヨシフ団長が上に右手をあげると、団員たちの動きは一斉に止まる。

 冒険者達もそれを見て何かを察し、歩く速度を緩めて各々武器を片手にする。

 ヨシフは先とは違った、穏やかで、それでいて緊張感の篭った声で言った。


「おそらく、近くにかの魔獣の群れがある。しかし……これほど入口に近かったか?」


 ヨシフが誰ともなく質問を投げかけると、副団長のキリルが少し困った顔で答えた。


「いえ……ヤツらの生息域、というより少なくとも発見場所はもっと奥深くのはずです。もしかしたら、もう──」


 キリルが言い終わる前に、「ドドドドドド」と辺りに地鳴りのような重い足音が響いた。合わせて、周りの木々も上下に揺れている。

 それを見た討伐隊は、瞬時に武器を構えた。

 ピリピリと張り詰めた空気が俺を襲う。


「総員散開、戦闘準備!!敵は目前!!一匹残らず駆逐せよ!!」


 ヨシフがそう吠えると、団員たちは「ハッ」と短く答え、予め決めていたそれぞれの持ち場についていく。


 俺やレイク達も騎士達の討ち漏らしを防ぐため、隊列の後方に陣取った。


 魔獣達がすぐそこに見えてきた。

 剣を握り締め、額に汗を流しながらそれを待ち構える。

 と、するとそこで、


「きゃぁぁっ──!」


 魔獣の叫び声ではない。行きに聞いた、ヨシフへの歓声でもない。

 これは──女性の悲鳴。助けを求める声だ。


 そう思った途端、俺の身体は動いていた。

 瞬時に飛び出し、声のする方へと走り出す。


「おいっ!ヤヅル!」


 レイクの呼び止める声が聞こえたが、無視した。今はおっさんに構う暇はないんだ。すまない。


 ──俺が雪山で鍛えた3ヶ月、何もずっと剣だけを鍛えていたわけじゃない。当然、「神力活性」、もだ。


 ──身体強化っ!


 魔法剣士──つまりは魔法を使いながら剣を振るう──には、最も重要・必須な魔法がある。それがこの身体強化だ。

 魔法剣士にはもちろん、細かな下級魔法を連発しながら相手を翻弄するという戦術もあるにはある。場合によってはこちらの方が有利にだろう。

 しかしこの「身体強化」はそれよりも汎用性が高い。

 なぜなら、圧倒的にアドバンテージが大きいからだ。

 これを使うと、下級剣士が中級剣士に、中級剣士が上級剣士──つまり今上級剣士の俺が使うと、それはそれはとんでもない、というレベルで強化できる。

 それに、下級魔法だと簡単に魔法障壁で防がれてしまう。

 もちろん個人差、魔力量その他による違いは諸々あるが、神力を有する俺とっては都合が良い。


 ──神力による身体強化は、魔力による身体強化より数十倍もの効果があったのだ。


 たった10分の1の体内の神力を消費するだけで、普通の魔法剣士が魔力を枯渇させるレベルまでの身体強化を施せる。


 ぶっちゃけ強すぎる、がそれを使わない手はない。


 ともあれずっと使用してるとさすがに神力が無くなる。無くなったらどうなるかはまだ知らないが、消滅とかだったら怖いので試したことは無い。


 音速──は速すぎるから、疾風の速さで森を駆け抜けていく。

 ビュンビュンと風切り音を激しく立てながら、木を避けジグザグに進んでいく。

 少し開けた、広場のような場所に到着したとき、()()はいた。









「ヤァ、ハジメマシテ」


 俺は走る速度を緩めゆっくりと、足を前にずらしていく。

 まさしく異形。

 人なのか、魔獣なのか、はたまた別の未知の生物なのか、俺にはわからない。


 だがそれでも、少なくとも一つ、俺にわかることがある。




 ──災厄が、そこにいた。


やっとです

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