序章0
初投稿です。
拙い文章ですがよろしくお願いします。
──カツン、カツン、カツン、カツン。
薄暗く、それでいてだだっ広い空間を、誰かが愉快な足音を鳴らしながら歩く。
「……くはははっ。……はぁ、今回も大失敗。しかしまぁいいデータは取れたよ。あいつらにもちょっとはサービスしておかないとなぁっ」
男はさぞ愉しそうに、口を歪ませながら静かに嗤う。
「……でもあっちも厄介な駒を手に入れたようだね。一筋縄じゃ行かなそうだし、なるべく急がないと」
何処か焦燥した声を上げながらも、表情が崩れることは無い。
「……絶対に、今度こそ。あの時の、アイツらの暴虐を赦してはいけない」
男の決意の火が消えることは無い。むしろ時間が経つにつれ轟々と燃え盛る。
男は踵を返して元来た道をただ独り戻っていく。
──カツン、カツン、カツン、カツン。
男はただ独り孤独に戦い続ける。
✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱-✱
「おいお主!!やっと『器』を見つけたぞ!!」
「あぁ?もうそれ聞き飽きた」
「違う!!今度は本当じゃ!!絶対これが『器』じゃ!!」
「……それもだ」
二人の男女、いや二柱の男女がある探し物をしながら言い合っていた。
「……まぁそればっかり言っててもしゃあねぇか」
「そうじゃ!!たまには妾を信用せんか!!」
「あれだけ今まで外しておいてそりゃ無理ってもんだぜ。いい加減弁えろよ。……で場所は?」
「うむ。それがどうも29✱-5561 8012-46✱✱のようじゃの」
女の方が暗号のように呟いたものは、言うなれば「座標」である。
女が見つけたという『器』の位置をほぼ正確に示せるものだ。
「……意外と遠いとこだな。あそこらへんは……あいつか。あいつなら問題あるまい。すぐ行くか?」
「そうじゃの。逃げぬうちに行くとするかの」
「……その前に机の上に広げてるもんかたせよ」
女の座る椅子の目前、豪華な装飾が施された机の上には、これでもかと言うほどお菓子、飲み物、そういう類のものが散乱していた。
「どうせ特別支給で貰ったもんじゃ。それに勝手に出てけば、勝手に天使らがかたすであろう」
「そういう問題じゃねぇんだが……まぁいい」
こいつのだらけた性格はもう数千年は変わらねぇな、と男は頭を搔いて呆れた。
「さぁ行くぞ」
「……おう」
男は未だに納得のいかない顔をしながら女のあとを着いていった。
男の名は「鍛冶神」クルツ・マッシ。
女の名は「鉄と歯車の神」フェルヌ・ティーン。
……二人はまだ、何も知らない。