カレは草食ボディーガード!
ナツイチきゅんきゅんしたい君にメイプル対応先生が送る青春痛快アクション巨編爆誕!!
いつでも君をがっちり守ってあげちゃうぞ!!
どうやらひとまず逃げ切ったようだ
凛々香の眼差しに応えてアキラは言った
「フフッ、大丈夫、男の根性は女の子の前じゃ3倍になるのさ!」
相手によっては5倍にも10倍にも・・・。
「ふぅ、でも少し疲れたかもな、ううッ・・・」
アキラが崩れこみ、膝をつく
「アキラ君!!」
凜々香が支える
「大丈夫・・絶対、須藤さんだけは、無傷で逃がすから」
そういってニッと笑うアキラ、しかしその瞳には悲壮な覚悟が浮かぶ
「山科君、どうしてそこまで!?」
「だから言ったろ、男の根性は・・」
おっと!
ギャングたちが車に乗って追いついてきたようだ
二人は岩陰に隠れる
そして・・これは言っておいたほうがいいだろう
「これがボクの任務だ!」
そういってアキラは手帳を示した
『ICPO特命捜査官・山科アキラ(AKIRA/the secret excutional agent)』
「ICPOって、あの・・!?」
「そうだ、ボクは国際刑事警察機構の特命アンダーカバーエージェントとして
コッポルレオーネ・ファミリーの捜査に当たっていた。
このメガネには最新鋭のテクノロジーが駆使されていてね・・」
「ではあの黒ずくめの男たちは?」
「そうさ、本物の多国籍マフィアさ、イタリアだけじゃない、
メキシコからロシア、アジアまで・・いわば世界マフィア界隈からの選抜厄介グループ、
凶暴さでは日本のヤクザなんて足元にも及ばないホンモノさ」
「どうしてそんな人達が・・」
凜々香の父であり生命科学の世界的権威である須藤博士が開発した生命修復技術を奪い、
重病のボスを治療するため、イタリアを本拠とするコッポルレオーネ・ファミリーが
日本に上陸しているのだという
「人類の財産を悪党に私的利用させるわけにゃいかないよ!」
「教室でいつも私を見ていたのも・・」
「このメガネから景色を見てみなよ」
「ああっ!」
遮蔽物が透過されて近隣の人物や車両がマイクロ解析され、
データ数値がアップライトに電光表示されている
「危険な人物や車両が君に接近するとアラームが表示されるんだ」
「それで・・」
凜々香は不気味な男たちに付きまとわれたり、
怪しいクルマに突進された時のことを思い出した
いつも風のようにアキラが現れて救出してくれたのだ
更にこのメガネを通して光を集中させることにより
負傷部分をメディケートすることができるという
「他にもあるけど、説明しきれない」
「メガネ男子のメガネには、こんな秘密が隠されているなんて!」
凜々香が驚くのも無理は無い
対象に気づかせず、周囲を乱さず、あくまでも隠密に行うのが
ボディガードの要諦なのだ
「ごめんね、私、キモいなんて言っちゃって」
「いいってこと!それが任務さ、ま、すこ~し辛かったけどね」
あ、あれは・・!
救命ヘリだ!!
「やっと来たか!」
銃撃を逃れて走りながらもアキラは冷静にメガネで位置情報を送信していたのだ
「しかし問題はあそこまで、どうやって辿り着くか?だ」
今のアキラには武器がない
「ははっ、サイコガンでもあればな!」
ターン!
別の銃声が轟いて、マフィアをのけぞらせ、更なる前進を許さない
「ひゅーっ、やってくれるねドクター!」
「パパッ!」
凜々香のパパ、須藤博士がヘリから身を乗り出してショットガンを構えている
また一撃!
マフィアたちの足元に巧みに着弾させ、アキラと凜々香を援護しているのだ
「パパがあんな危険なことを・・!」
いつも机にかじりついている厚底メガネパパからは想像できない勇姿だ
「パパも男なのさ、草食のね!」
コクピットにいる凜々香のパパが必死に叫び、懸命にゼスチャーで指示をする
ヘリから降ろされる救命ハシゴにつかまれというのだ
「無茶言ってくれるぜパパさんよ」
「ディッセンド!(降下させろ!)」
「ノーノー!ノーウェイ!(これ以上無理です!)」
パパが操縦士に下降を命じるもヘリは乱気流に阻まれ
これ以上アキラと凜々香に接近できないのだ
「やるしかないってか!!」
アキラは立ち上がると再び凜々香をお姫様抱っこに抱え上げる
「もうひとっ走りするぜ!」
丘を一気に駆け上がる
「あそこだーっ!」
ギャングたちが駆けつけ獰猛な銃撃を執拗に加える
アキラはジグ・ザグに走りながら背後からの弾丸をかわす!
凜々香のパパも懸命にカバーする
当たらなきゃぁどうってことはないやっ!
上りきったところで、思わずふっと一息・・
銃声――!
ああ!メガネに弾丸がヒットして吹き飛ばされた!
アキラは凜々香を抱いたまま横っ飛びで木陰に隠れる
「ちぃッ―!!」
「アキラくん!」
「大丈夫、たかがメイン・メガネをやられただけだ」
アキラはスペア・メガネを取り出す
「うわっ!」
死角からの銃撃をかわした弾みで取り落とす
「きゃっ!」
なんと!凜々香の胸元に滑り落ちてしまった
「ああっと、もうそのまま持っていてくれ!」
凜々香のパパがマフィアたちを足止めしているものの、
援軍が次々と呼び寄せられ間隙を縫ってアキラと凜々香に迫ろうとする
ヘリまであとわずか!!
しかし銃撃もまだまだ激しい!!
ヘリが救命ハシゴを降ろそうとする地点、
そこにマフィアたちが狙いをつけようと集結しているようだ
このまま行けば二人して蜂の巣にされてしまう
……ということは!
アキラは視線でヘリにサインを送る
「気づいてくれよパパさん!」
いくぜっ!!
アキラはタイミングを計って凜々香に声をかけると飛び出した
ここからは平地、走る、走る、ひたすら走る
「……と、見せかけてっ!」
アキラは進行方向を急激に迂回させ、あらぬ方向へと駆け出す
「いけない!アキラ君、この先は・・!」
断崖絶壁だ、その先に広がるのは大海原と大空だけだ
「つかまってろっての!」
「うんッ!」
ラストスパートだ!
凜々香はアキラにぎゅっとしがみつく!
「アキラ君と一緒なら怖くない!!」
タアー―ッ!!
切り立った断崖絶壁、その先端から大ジャンプ!!
舞い上がる、舞い上がる、最加速したヘリが一気に接近、
そしてアキラはがっちりとハシゴをつかむ!
パパもガッツポーズ!操縦士に合図すると
ヘリはそのまま大きく旋回し、上空へと舞い上がる
ギャングたちはもはや見送るほかに術はない
そしてようやく駆けつけてきた警官隊と機動隊に包囲されて
反撃したり逃げ惑うも次々と撃ち倒され捕獲されてゆく
ヘリは更に上昇する、夕陽が綺麗だ、たなびきたる紅の雲、
その照り返しに大海原が幾重にも輝いて優しい風が2人を包む
「ふぅ・・いい風だ、凛々香、よく頑張ったな」
「アキラくん、私・・・」
「怖かったか?もう大丈夫だぞ」 」
「ううん、アキラくんと一緒だと私・・」
「ああ、ボクだって凜々香と一緒ならちっとも怖くなかった」
「任務だから?」
「それだけでもないさ」
「あっ・・」
思い出した凜々香がメガネを取り出すとアキラに掛けさせた
「ちょっと温まってるけど・・」
少し照れくさそうな笑みをふっと浮かべたアキラは装着する
「メガネ男子復活っ!」
「景色はいかが?」
夕陽に煌く大海原と染まる大空を大きく見渡すアキラ
そして腕の中にいる凜々香の眼差し
「最高にきれいだぜ、凛々香!」
「アキラくんっ!」
凛々香はアキラにぎゅーっとしがみついた