騒動、でもご飯
「さて準備完了、いただきます」
「…いただきます」
「いただきまーす」
テーブルの上に並んだ食べ物はとても美味しそうだ。
しかし、見た目には覚えがある。…ような気がする。
完全に忘れたわけではないらしいので、こういうことはよくある。
つまり、こちらの世界と元の世界で、食べ物は変わらないということになる…のだろう。
確証は持てないが。
目の前の薄橙色のスープに手を付ける。
美味しい…。温度的な意味だけでなく、心が温まるような味だった。
ほかの料理もそうだった。これもやっぱり魔法なのかな?
「言っておくがー、これ魔法じゃないからな?」
「心を読めるんですか?」
「経験則かな。そんな便利な事はないぞ」
「…美味しい?」
「はい、絶品です」
「…よかった」
「不味いわけ無いだ」
ろ、と発音しようとしたのか、そこで終わりだったのか。
私が気づけたのは同じ食卓についていた二人が何かしら動いたってことだけ。
次に視界に入ったのは真っ黒のマントを羽織った背の高い人。
「ふぅ、二人は合格。一人は論外」
「いきなりそれはないだろ…」
「…失礼だと思う」
「審査は元より連絡済み」
「忘れてた俺らのせいってかよ…」
「当然」
「ひっでぇなぁ」
「え…一体何が?」
何が起こったのか待ったくわからない。
「ほら、唖然としてんじゃん…謝っとけよ」
「俺に謝る義務はない。というかなんだこいつ。初めて見たんだが」
「呼んだ」
「ほぉ。そこんとこ詳しく」
「話はあとだ。飯食わせろ」
「わかった」