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僕らは夜に語り合う  作者: 赤城 十一
第二話 メリーさん
8/21

 紗雪はいつの間にか口内に溜まっていた唾液を飲み込むと、視線を向けてくる少年と目を合わせた。

 覚悟があるかと問われ、即答できるほどの答えを紗雪は持っていなかった。真夜中に鳴る電話に困っており、苦しんでいることは間違いない。どうにかできるのならば、どうにかしたいという思いはある。けれどそのために代償が必要かと言われれば、肯けるものではない。携帯を解約するくらいのことならば、問題はない。しかし、それ以上のことが必要だと求められたなら、簡単に肯定はできない。

 しょせん、電話だ。苦しみ困りはするが、死ぬわけでもなければ怪我もない。これからのことはわからないが、エスカレートしたならば両親や警察に相談する予定だ。

 今の現状では、ただのイタズラでしかない。それゆえに覚悟など大それたことは、今の紗雪にはできない。それほど少年が語る言葉には力があり、冗談を口にするような軽い気持ちで発言はできなかった。

 そんな心中の最中だった。やわらかな声音が、紗雪の耳朶を打ったのは。

「更夜さん、脅すのは話を聞いてからでも、遅くはないんじゃないですか」

 少女は取りなすに微笑みを浮かべ、少年に語りかけた。

「困っていることは確かなんですから、まずはお話を聞いてからです。話すだけで楽になることや、解決することもありますから」

 少女からの頼みは否定できないのか、少年は軽く舌打ちをすると紗雪を強くにらみ言った。

「ーー用件を話せ。聞くだけは聞いてやる」

 苛立ちを隠そうともしない上から目線の乱暴な物言いはに、腹が立たないわけではなかったがせっかくの少女の好意を無碍にするのもどうかと思い、不満を隠しつつ紗雪は口を開いた。

「……最近、変な電話が多いんです」

 そんな言葉を皮切りに、紗雪は現状を話し始めた。

 毎朝明け方に電話が鳴り、出るまで決して止まないことや、内容も意味が不明で、覚えがない場所にいると言われ、自身のことをメリーさんと呼び、そしてそれは、都市伝説にあるメリーさんの怪談と酷似していたこと。

 電話のせいで不安になり、悪夢や眠れないことも語り、自分がどれだけ困り、苦しんでいるかを紗雪は必死に話した。

 少年と少女は質問も茶々も入れず、無言で紗雪の言葉を聞いていた。その表情は紳士であり、その真剣さが紗雪の舌を雄弁にしていた。

 全てを話し終えたものの、一気に語りすぎ荒くなった息を吐く紗雪を見据えながら、少女がつぶやくように声を発した。

「ーーこれは呪詛ですね」

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