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僕らは夜に語り合う  作者: 赤城 十一
第二話 メリーさん
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 シャワーを浴び眠気が覚めたこともあり、いつもの登校時間にはなっていなかったが準備を終えると紗雪はいつもよりはやく家を出た。一人で入ればまた電話が鳴りそうな気がして、怖かったのだ。

「いってきます」

 一人暮らしのため言う必要などないのだが、長年の習慣というものは抜けにくく紗雪はいつの間にか口にしていた。

 高校進学と同時に父親の海外赴任が決まりそれに母親も着いていくことになり、せっかく合格した高校を休学するわけにはいかず紗雪は一人暮らしをすることとなった。

 初めは心細かったが二ヶ月も経つと慣れ、案外悪くないものだと思うようになっていた。だが、最近のように電話に悩まされていると、家族がいたらと思わずにはいられなかった。わざわざ電話をかけてまで心配させる気にはなれず、紗雪は両親に電話の件は伝えていない。

 大きなビルなどはなく、住宅地や公園などが目につく穏やかな通学路を紗雪は毎日通っていた。一人暮らしのアパートは学業優先ということもあり、市街地からは離れているが高校には近く十五分ほど歩くと着く。常より一時間ほどはやく通学路を歩いているというのに、それなりに人影は多い。朝練で早朝に来ている人間は意外といるのだなと、帰宅部の紗雪は呑気に思った。

 学校は朝早くだというのに運動部の喧騒が、グラウンドから聞こえていた。体育館もドアを開けているのか、ボールが床にぶつかる音や、体育館を駆け抜ける音が響いていた。そんな賑やかと活気をBGMにして、紗雪は校舎へと入っていく。

 さすがに体育館くらいにしか人の気配は感じられず、靴箱もほとんどの上履きが埋まっていた。節約のためか明かりはまだ点いておらず学校特有の不気味さが顔を出していたが、ところどころに人の気配はしており紗雪を不安にさせることはなかった。

「一番乗りか」

 教室につきドアを開けると、静けさが紗雪を迎え入れた。現状を確認するようにつぶやくと蛍光灯のスイッチを入れ、窓際の自分の席へと足を進めた。教科書や筆記道具を机にしまい、カバンを一番後ろのロッカーにしまうと椅子に腰を下ろし家から持ってきた小説に目を通した。自分の家でも問題なくできそうな行為だったが、一人でいることが決まっている空間と、これから誰かが来ることが決まっている空間では安心できる度合いが違った。事実、五分もしないうちに教室のドアが開いた。

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