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僕らは夜に語り合う  作者: 赤城 十一
第二話 メリーさん
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 希望を見せられた上で、絶望に叩き落とされる。心の均衡が崩れ、感情を暴発するように吐露するにはよく耳にする手だ。

「あ、あの、本当にないんですか? そ、そのすぐに治るようなものは?」

 涙ぐむ紗雪の隣で、顔を青ざめた笑が少年に問う。それは紗雪が何度も聞いた質問だ。そして、同じ答えが返されている。わかっていながらも、笑は行なった。そうせずにはいられなかった。苦しんでいる姿を、ただ見続けているなんて真似はできなかった。

 そして、返ってくる答えは同じだ。否定が口から漏れる。

「無駄なことを何度も言わせるな。ないものはない。――もう、用件は済んだだろう。さっさと帰ったらどうだ」

 語るべきことはない。そう告げるかのように少年は背を向ける。そこにはこれ以上の関与を拒む意思がありありと見れた。

 だがあくまでもそれは少年のみであった。

「――たった、一つだけ方法があります」

 凛と、それは聞こえた。けだるい夏の暑さの中で清涼をもたらす風鈴の音のように、小さなけれど硬く高い溶けきらない質感を持って。

 だから、どちらからともなく、口を開いた。縋るように。確かめるように。祈るように。

「どんな方法ですか?」

 硬い声音は冷えた鋼のようで、爪を立てれば耳障りな音を立てるような緊張が見て取れた。少女はゆえに包むようなやわらかさで告げた。揺らすように、静かに楽器を奏でるように。

「呪いが病気であるなら、劇的な治療は難しい。確かにその通りです。ですが、治療というものには二通りあります。薬による原因への対処、いわゆる内科的治療と、直接原因を取り除く外科的治療です」

 少女は笑う。それはどこか誘うような含みを持っていた。そして二人の耳に音が、聞こえた気がした。古く重厚な扉が開く、そんな物音が耳朶を打った。何かが始まろうとしている。ただその予感だけが二人に微笑んでいた。

「犯人を見つけることです。それがたった一つの解呪方法です」

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