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僕らは夜に語り合う  作者: 赤城 十一
第二話 メリーさん
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「……何を言っているんですか、そんなことあるわけないですよね」

 信じられない思いから声がか細くなるが、そんな紗雪の心境を無視するかのように朗々とした調子で少年は話を続ける。

「呪いという言葉で括ってしまうからどこか現実離れして聞こえるが、それ自体はニュースでも聞く話でもあり、キミにも関わってくる話だ。――端的に言わせてもらえばストーカー、それが現代の呪いの一つだ」

「……ストーカー」

 呪いという非現実的な言葉から、聞きなれたものに変わったせいか、独り言のようなつぶやきが笑の口から漏れた。

「フン、納得できないか。だが、例外がないとは言えないが、ストーカーは基本的に相手を物理的に傷つけることはない。いつだって、追い詰めるだけだ。わかるか、伝えるだけなんだよ、『愛している』とな」

「呪い、いわゆる、丑の刻参りは嫉妬に狂った女性が、恋敵を怨み行うのが主流です。そして、見つかることで発動するものです。ゆえに、こう告げているのです。『私は他者を怨み、気が狂うほど愛しています』、と」

 温度を奪うように背中を濡らす汗を、紗雪は感じた。少年と少女の語りが、全て信用できたわけではない。だが二つに共通した情念のようなものが、沙雪の肝を冷えさせた。

「共通点はそこだけじゃない。ストーキングも同じなんだよ。『誰かが自分を見ている』、そのことに気づかさせなければ意味がないのさ。マイナスプラシーボの条件ということもあるが、どこかに証拠を残すものなんだ。それは悲しい善意であり、人に好かれたいと願う勝手で醜い悪意だ。だからこそ、知り、構い、受け入れて欲しいと祈る。まさに、呪詛だよ」

「そして、行き過ぎたストーキングは心を壊していきます。ニュースで見たことがありませんか? ストーカーの被害に遭い、ノイローゼの果てに自殺。――死に至る典型的な例です」

 少年と少女は淡々と語る。昨日の夕食にハンバーグが出て、美味しかったとでも言うかのように。口にする内容の不気味さと裏腹の態度に、沙雪は内心の怯えを飲み干すように唾液を嚥下した。なぜかその音がひどく大きく、そして耳障りに聞こえた。

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