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 見渡す限り草原である。

所々に木が生えていたりするが、ほとんどが足首くらいまでの草花で地面が敷き詰められている。


こういう風景、やっぱ新鮮だなぁ……とシティ派な俺は感じる。風もうまいなぁ…


いやいや……なに観光気分でちょい癒されてんだよ……異世界だぞ!観光どころか、遭難してんだよ!


はぁ~……異世界かぁ……落ち込むわぁ……


まぁでも、全く希望がないってわけでもない。


さっきなぜか焦って記憶喪失キャラを押し切ったせいで詳しく聞けなかったが、どうやら「しんじゅつ」とかいう魔法的な力があるようだ。


世界間の移動なんてファンタジーな現象に、その力が無関係とは考えにくい。


すぐにはどうにかできないだろうが、この世界でとりあえず生き残って、その力について情報を集めれば、帰る目処もたつかもしれない。


というところまで考えて、「フッ」と笑ってしまう。

決して楽しいことばかりあったわけじゃないし、不満やらなんやらあの世界にはたくさんあった。ほぼ毎日文句を言っていたし、恨んだことだってあったはずだ。


それなのに、なんだかんだでやっぱり帰ることは諦められない。まだやり残したことが向こうの世界には山ほどあるのだ。


改めて思い返すとやはりあの世界の日本という国が、そして自分を待つ人たちがいるあの場所こそが、自分の故郷なんだな。と強烈に意識してしまう。


そんな郷愁の念と、そこへなんとしても帰りたいという目的意識がはっきりすることで、心と身体に熱が籠っていくのがわかる。


それにまぁ、この世界で生き残ることが修行になるかもしれない。強くなるための糧だと思えば、大概のことは苦ではないと思えるだろう。


うん、決まったな!

最終目標は帰ること。

そのためにこの世界で情報を集める。

そして、強くなる!!

まぁーこんなとこか。


我ながら単純すぎるが、わかりやすく大変よろしいだろう!


さてと、んじゃひとまずこの世界の常識を知ることから始めますかな。


猫耳さんならまぁーある程度は教えてくれるだろ。村とやらに着けば当分会うこともないだろうし、形振りかまわず色々聞いてみるかな。






俺たちは今、逆三角形の配置で歩いている。ちなみに前方右が猫耳猫尻尾、左が犬耳犬尻尾である。

猫尻尾は手触りの良さそうな毛並みでニョロってる。

犬尻尾はフッサフッサな感じだ。


2人共、後ろから改めて見ると、やはり迫力がある。俺の身長が172cmなのに対し、2人共180くらいあってデカいし、体格もガッシリしている(猫耳さんは無駄な肉がない感じ)。


出来れば一度手合わせしてみたいなぁ……

まぁーそれはまた今度だな。とりあえず自己紹介あたりから始めて、色々聞いてみるかな。

「あの」

っと俺が猫耳さんに話しかけようとしたときに、猫耳さんが「そういえば」と呟いて、こちらに目配せしてきた。


なんだろうと思っていると


「自己紹介がまだだったなーと思ってね」


「そんなもの必要ないだろ、どうせ村までの付き合いだ」


「まぁーいいじゃないの!どうせ村まで暇なんだし!それにルーがムスムスしてるからつまんないのよ~」


「……ふんっ」


「も~~。ごめんね、こいつハーデス族の奴とちょっとあってさ、まぁー根は良い奴だから気にしないでよ」


「あ、あーはい」と苦笑しながら返す。


「んで、自己紹介ね。私はリン。こっちはルーカスね。」


名字を言わないってことは、あんまり名字は一般的でないってことなのかな。それとも伝えたくないのか……まぁー考えてもしゃーないか、とりあえずこっちも名前だけでいこう


「ユウです、よろしくお願いします。」


「も~、別にそんな畏まらなくてもいいわよ。私もルーも、しがない流しの冒険者でしかないんだし」


「いや~さすがに命の恩人に対しては丁寧になっちゃいますよ」


それを聞くと、リンさんは呆れた表情をして

「まぁ~好きにしてちょうだい。別に気にしないからさ」

と言ってくれる。


この人さっぱりしててホントいい人だな~。可愛いし、絶対モテるだろ。

出会い頭に「殺す」発言かまされた時にはどうなるかと思ったけど、無駄に緊張する必要もないな。

「了解です」


俺の緊張がほぐれたのがわかったのか、おどけた感じでリンさんは尋ねてくる。


「あんた、自分のこととかどんくらい覚えてるの?」


おっ、向こうから聞いてきてくれたか、こりゃ好都合だな。


「自分の名前とかできることなんかは覚えてるんですが、あとは全然ですね。この辺の地理とかはもちろん、世界についても地理やら政治形態やら流通貨幣やら全然覚えてないです。あと、冒険者ってのはなんか組合みたいなのがあってそこに所属してるってことですか?僕にもなれますかね?それと、ハーデス族?ってなんですか?種族って色々あるんですか?あー、あとしんじゅつ?についても教えてほしいです!」


と早口に捲し立てた俺を見てリンさんが


「ちょっ!ちょっと待って!!いきなりそんなに聞かれても答えきれないわよ!ってか、あんたかなり重症ね……どれもこの世界の常識についてじゃない……」


かなり可哀想な人を見る目だ……だがしかし!めげるわけにはいかないのだっっっ!!


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