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 俺はオタクではないと自負している。

それは決して彼らを否定的に見ているからではなく、どちらかというと敵わないというある種の畏怖の念からきている。


とはいえ、一般人であるかと言えば、それも微妙だ。

マニアックな漫画も読むし、ライトノベルも読む、アニソンで熱くなれるし、アニメやエロゲーで泣いたことだってある。


だが、オタクほど収集物も持ってないし、知識もない、イベントとかにも全く行かない。


っというかなり中途半端でどっちつかずな奴なのだ。

つまりまぁー何が言いたいかというと、「そういう知識」がある程度実装されているのが俺だということだ。


そして、そんな俺だからこそ半ば確信を持ちつつも否定し続けていたある考えがある。


「ここ……異世界じゃね?」


まぁー昨夜襲ってきた化け物でほぼ確定っちゃー確定だったんだが、中途半端な俺としては、それを受け止める勇気が全くもってなかったんだ……


だがしかし……


これを目の前にしてしまったらもう駄目だ……


いくら俺でも諦めるしかない……


「い、犬耳と猫耳……」


俺の目の前には、たぶん獣人と呼ばれる方々が2人もいらっしゃる。


泣いても喚いても、これが現実なのだろう……


「何か言ったか?」


槍を構えたままそう問いかけてきたのが、犬耳の方だ。どうやら男性のようだ。

こちらへの警戒心が丸出しすぎて俺の心が折れそうだ。たぶんさっきまで大声張り上げていたのもこいつだろう。


もう一方の猫耳の方は、短剣を逆手に持ってはいるが、腕は下ろしていて自然体だ。


身体つきや鎧の形状からも女性だとわかる。結構美人だ。


2人とも、顔つきがなんとなく犬っぽいとか猫っぽいというだけで、単純に犬や猫が二足歩行になっているというわけじゃない。

体毛とかは服やら鎧で確認できん。


俺がボォーッと2人を観察していると。


「それで、お前は何者なんだ?なぜスプリガンの森から歩いてきた」


犬耳が俺にそう問いかけてくる。


さて、なんて答えよう……

正直に異世界から来ましたとか言ったら状況が悪化しそうだ……まぁーベタだがこれしかないだろう。


「実は俺、記憶がないんだよ。覚えているのは名前だけで、さっきもちょっと言ったけど気づいたらあの森にこれと一緒にほっぽり出されてたんだ。」


左手に持った柔道着を持ち上げながら、胡散臭いことこのうえないセリフを吐く俺……

思わず苦笑してしまう。


案の定2人とも訝しげな表情をする。

そして犬耳の方がなんか言いかけた時


「ルー、相当怪しいけど、嘘を言ってる風でもないわ。ここはまぁー助けてあげてもいいんじゃない?こんなボロボロの子を見捨てるのも後味悪いじゃない。」


ルー(たぶん犬耳のこと)の左肩に手を置きながら、猫耳の彼女がそう言った


め、女神だ……


俺が両手を合わせ、ひざまづいて感謝しそうになったとき、彼女はこちらに目線を合わせ


「あんたも、自分が相当怪しいのくらいわかるでしょ?大人しくしてれば近くの村までくらいは連れてってあげるわ。でも、肝に銘じておきなさいよ?なんか怪しいことしたら容赦なく殺すからね?」


「……りょ、了解っす」


俺は涙目でうなずくほかなかった。


その返事に不承不承といった体だが、一応納得してくれたようで、ルー君もずっと俺に突きつけていた槍を下ろしてくれた。


「さぁ!そうと決まったら朝ごはん食べましょ?あなたももちろんいるでしょ?」


待ってましたこの時を!!

実は彼女逹の後ろで刻一刻と鍋に入ったスープ的なものがグツグツいっていて、すきっ腹には罪な匂いをさせているのだ。

俺は、心の中でガッツポーズをとりながら

「はい!いただきます!」

と返事をする。

そんな俺を尻目に食事の準備にとりかかる2人。


この世界に来て初めての食事に胸を踊らせつつ、2人へ手伝いを申し出るのであった。



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