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「ふん、所詮、お主はその程度の男じゃったか……」
気が付いたら全力で横に飛び、河原をゴロゴロ転がっていた。
心に怒りが吹き荒れる……
身体に熱が蘇る……
あの日誓った言葉が脳裏に響く……
「うっせぇんだよ!くそじじぃがっっ!」
立ち上がる……
立ち上がれる……
あちこち痛いし、頭から血が流れているけど、今はこれぐらいが調度いい。
「この俺が、生きることを諦めるとかどんだけだよ……修練不足だな……クソッ」
そう吐き捨て、心を鎮める。
身体の隅々まで力を張り巡らす。
肚で息を吸い、吐く。
心を、身体を、戦闘のそれに変質させていく。
敵が人型でよかった。
人型であるのなら自分が持つ技も有効だ。
静かにゆっくり構えをとる。
「きぃぃ?」
化け物の武器は俺のスポーツバッグをズタズタにしてはいたが、俺自身には一太刀も当たっていなかった。
その事実が、よっぽど不思議だったのか、一匹がリーダー格に何かを問いかけている。
問いかけられた化け物も一瞬、呆けていたようだが、こちらに向き直り、改めて、
「キィキィ!キガァァ!!」
と己の持つ武器をこちらに向け、喚いている。
それを合図に残りの9匹がこちらに襲いかかってくる。
俺と奴らの間合いはおおよそ7、8m。
向かってくる化け物の集団に隊列というものはなく、思い思いにこちらに向かってくる。
駆けて来る奴が5
飛びかかって来るのが4
俺は足に力を籠め……一気に空中にいる真ん中2匹の間に飛び込む
右手と左手で各々の顔を掴み、そのまま空中から地面に後頭部を叩きつける
「グチャッッ」という音と、両手に伝わる感覚に囚われないよう意識し、振り返り際に一番手近にいた2匹の足元に目掛けて、右足の蹴りを放つ。
足を払われ、浮いた2匹の頭上に俺は跳び、思いきり踏み潰す。
これで残り6匹……
前方左に2、右に3、背後に1。
まずは左の2匹へ向かう。
この時点でやっと自分達が攻撃されていることに気づき、2匹はこちらに向き直り、攻撃を仕掛けてきた。
だがもう遅い。
1匹目には何もさせずに、大外刈を懸け、後頭部を地面に叩きつけ、潰す。
もう1匹はナイフによる刺突を仕掛けてきたが、半身にして避け、突き出してきた相手の右手首を左手で取り、大腰の要領で地面に投げ飛ばし、仰向けになった相手の剥き出しになった喉に向かい、思いきり拳を叩きこんで潰す。
すでに背後から3匹が迫っている。
振り向き様に立ち上がり、一番左に位置している1匹の懐に飛び込み肘を鳩尾に入れる。
くの字になったそいつの首に腕を回し、首投げをしながら折る。
残りの2匹が持ってる手斧を叩き込んでくる。
一方は頭上から、一方は俺の右から横薙ぎに両者の武器を持っている手首を掴み、横薙ぎに武器を振った方に支え釣り込み足の要領で、体重移動と右手のひねりを利用し、転ばしながら背中から地面に叩きつける。
それと平行して左手で捕まえた手首を引き寄せ、一本背負いで相手を頭から地面に叩きつけ、潰す。
仰向けで寝転んでいた残った一匹の首に拳を叩き込んで、こいつにも止めを刺す。
残りはリーダー格の1匹だけだったが、周りを見回してもどこにもいない。
どうやらとっくの昔に森へ逃げていたようだ。
俺は緊張の糸が切れ、仰向けに倒れ込む……
「ふぅ~~……見たかクソッタレが……」
そう呟き、ちょっとだけ休憩をとることにする。