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 ……ドドドドドドドッ

 そんな不穏な音が背後から聞こえ、殺気がこちらに届く。

 振り返った時にはすでにデカ猪が物凄い勢いでこっちに向かって突撃中だった。


「いやなぜ……」


 そして気づく、急いで毛玉を見ると、短い尻尾を振りまくりながらデカ猪に向かって「ブミュブミュ」言っていた。


「そんなベタな……」


 そうして始まった……壮絶なる鬼ごっこが。






 いくら身体能力が上がってたとしても……いくら俺が武術をやってるとしても……

 あんなんどうしようもないわっっっ!!


 せめて人型の何かならなんとかなったかも……いやあんなデカいの無理か……


 今だに心力が宿る器……心器が見つかってない俺じゃ肉弾戦しかできないし?しかもウチの流派って秘孔をぶち抜いて相手爆破とかできないし?かめはめ波も撃てないし?発勁だって扱えないわけで……


 つまり……


「うぉおおおおおおおお!!」


 全力疾走しかないわけです。


 だけども……ジリジリ差を縮められてきているんだこれが……


 もうそろそろマジでなんとかしないとマジでやばい。


 走りながら何かないかと周りを見る。


 見渡す限りの平原……


 青い空……


 流れる雲……


 彼方から飛んでくる人影……


 ……んっっっ!?


「ふはははははははは~助けを呼ぶ声を受け今参上つかまつったぁあああ!!」


 ……なんだ……アレ……


 全力疾走しながら呆然とするという妙技を発動しているうちに、事態はどんどん進行していく。


「とぅりゃあああああ!!」


 もの凄いスピードでライダーキックを放つ謎の人影。


 デカ猪にむかっていき……


 ドカァアアアアアアアアン!!!


 デカ猪と俺のちょうど中間地点に突き刺さった。


 もはや攻撃なのかただの墜落なのかわからなかったが、とりあえずその衝撃的な出来事に俺とデカ猪の足は止まった。


 一瞬で地面が抉れ、落下地点の周辺にヒビが走る。

 飛び散る礫と舞い上がる粉塵が俺とデカ猪を襲った。


「けほっけほっ……何がどうなった?」


 バサァッッ!!


 何かが広がる音と共に風が起こり、粉塵が巻き上がる。

 その中心から視界が晴れていき、そこには……


 揺らめく炎のごとく揺れる赤髪は逆立ち。


 白の上下の上に胴と胸が覆われ、肩周りと背中の上部が空いた金属製の黒い鎧(確かコート・オブ・プレートとかいう名前だった気がする……)を着け、黒いブーツを履いている。


 その背中には髪と同じ色の翼……鳥のような羽ではなく、翼竜のような翼……が大きく開かれていた。


 腰に下がった鞘から長大な直刀の剣がゆっくりと抜き放たれる。


 抉れた地面からデカ猪の3メートル手前に着地するその男の背は、勇壮さと闘志に溢れていて、かなり頼もしかった……んだけど……


「よくぞ我が渾身の一撃を避けたな獣よ!だが、次はそうはいかぬ……か弱き民を守るのは我が務め。いざっっ!!」


「あぁ……さっきのってやっぱ攻撃だったんだぁ……」


 正義感溢れるその言動に俺はとっても腰が引け、流れについていけなくて微妙にズレたことを口走ってしまう。


 ってかデカ猪狙ってあそこに着弾したとなると、結構な確率で俺に当たってた可能性あるよね……


 いやまぁ、助けてくれようとしてるわけだから感謝するべきなんだけどね……わかってるよ?でもなんかもう強キャラすぎて正直感謝の念より戸惑いの方が溢れていっぱいいっぱいです……。


「……ブォ……ブォオオ!!」


 デカ猪もまさかの闖入者に固まっていたようだが思考が戻ってきたらしく、雄叫びをあげ、右の前足で地面を擦りあげる。


 さぁ……突進するぜ!!そんな感じだ。


 赤髪の男越しだが、その迫力はハンパない。


 それを一歩も引かずに真正面から受け止めているあの人は言動はアレだが強靭な胆力が備わっているんだとわかる。


 しかもそれだけじゃなく……


「うわっ……あの人相当強いな……」


 一瞬、男の身体が一回りも二回りも膨れ上がったかと思うほどの闘気が放出され、場が支配された。


「ブ……ブォ……」


 それまで俺の体当たりでバラバラにしてやるぜ!!みたいな勢いだったデカ猪が一転、その巨体を小刻みに震えさせ、目に恐怖の色を滲ませている。


 この時点で勝敗は決したといってもいいだろう。


 そう思ったと同時に俺の脳裏にあの毛玉の姿が浮かび、「ブミュ」と鳴いた。



 なんかもう連載頻度に関しても、文字数に関しても嘘ばっかついてて……本当にすみません。


 言い訳はしません……だからもうできない約束はしないと固く決意しました。

 いやちゃんと更新していくこと決意しろよ……すみません……

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