表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/40

22

 瞬時に空中で体勢を整え、着地する。


「くっ……」


完全に勢いを殺すことができず「ズサァァ」と後方へ地面を滑ってから、やっと止めることができた。


「い、いきなりなに……ってうおっ!?」


間髪入れず相手は上段蹴りを側頭部に叩き込んでくる。


咄嗟に腰を落とし、これを避けるが、次の瞬間には顔面に相手の足裏が迫る。


「なっ!?……マジかよっ」


身体を後ろへ反らし、ソレを避ける……が、目の前で蹴り足が旋回し、踵落としとなって降ってくる


身体を無理やり左に捻りながら地面を蹴る

そのまま、前回り受け身を取りながら地面を転がり、相手から距離をとる。


後ろから「ドガッ」という地面を穿つ音がする。


冷や汗をかきつつ、立ち上がり振り返る。


「ちょ、ちょっと、とりあえず話を……ってストップ!ストップ!」


目の前ではすでに相手がステップを踏み終え、こちらに背を向けていた。


問答無用ですかいっ!!


後ろ蹴りが鳩尾に向かって真っ直ぐ放たれる。


もう……なんなんだよ!!

バーサクでもかかってんのかっっ!?


瞬時に集中する。


蹴り足の側面に左の掌を当て、右に軌道をズラしながら半身になることでカワす。


軌道を乱されたにも関わらず、瞬時に蹴り足を引き戻し、その勢いを利用して軸足を半回転させ、こちらへ向く相手。


うはぁ……すげーバランス感覚……

って感心してる場合じゃないな。離れなきゃ


急いで後ろへ跳び、再び相手と距離をとる


そのまますぐ追撃がくるかと思ったけど、ないってことは、やっと話をしてくれるってことか?


そんな淡い期待も、相手の鋭い眼光に撃ち抜かれ、脆くも崩れ去る……


ってか気配に殺気が混じってきてますが……いやいや、なんでやねん……


「ズドンッッッ!!」


戸惑う俺を他所に相手がこちらへ弾丸のようなスピードで飛び込んでくる。


俺の目前で軸足を地面にめり込ませ、強烈な中段横蹴りを心臓目掛けて放ってきた。


正直、避けるのは簡単だ。


だけど、このままじゃ埒があかない……なんせ会話ができないんだもの……


なんとかこの戦闘を終らせて話を聞くしかないわけだが……


どうすっかなぁ……

はぁ……まぁーしゃーないか……


「ガツッッッ!」

石で石を割ったような鈍い衝突音が木霊する


俺は胸の前で腕を交差させ、相手の蹴りを真正面から受け止めていた。


これには相手も驚いたようで、殺気がみるみる内に霧散していくのが感じられる。


「いっつぅ……やっと止まってくれましたか……一体なんでこんなことを?エリカさん」


そう、ギルドに入るなり中段の横蹴りをかましてくれただけでなく、追い打ちをかけ、最後には殺気混じりのマジ蹴りまで放ってきたのは……見知った美人エルフナースだった。


「…………」

エリカさんは相変わらず答えてくれず、広場に張りつめた空気が漂い始める。


そんな中、なんの気負いもなくこちらに向かってくる人物がいた。


パチパチパチパチパチ……

「いやはやお疲れさまです。お二人ともお見事でした」


爽やかな笑顔で、拍手と共に労いの言葉をかけてきたのはクルスさんだった。


場の空気もなんとなく和む。


っていやいや……お疲れ様じゃねぇよ……止めろよ


「クルスさんもなんか知ってるんでしょ?一体、なんでこんなことに……?

ってかエリカさんも!そろそろ話してくださいよ!」


「…………」


いやいやいや……こんな目の前で何度もスルーするとかひどくね!?

さっきまでのあの愛らしい笑顔は嘘だったというのか……


俺が泣きそうになっていると


「ユウ殿、よくご覧になってください。彼女はエリカさんではありませんよ?」


「…………はい!?」


驚いて目の前の彼女をよぉーく見てみる


目鼻立ちは完全にエリカさんだ……こんな美人、見間違えるわけが……ってあれ?


言われてみれば、エリカさんは髪型がショートボブだったのに、彼女はポニーテールだ。


ナース服もエリカさんはワンピースタイプで下はスカートだったのに、パンツタイプのものだし……


しかも、今だに足も下ろさずにこちらを睨み付けてくるその迫力や纏う雰囲気は、治療院で会ったエリカさんのソレとかけ離れすぎてる。


可愛いって単語より怜悧とか冷静とかそんな言葉がよく似合う感じ……わかる?ってわかるわけないか……


「でもエリカさんじゃないとしたら……ってその前に足下ろしません?」


「…………」


俺の提案に少しのあいだ逡巡した後、納得してくれたのか足を下ろす彼女。


だが、じーっとこちらを睨み付けたままだ。


「ナナさん、そろそろ許してあげてもよいのではないですか?

ユウ殿も悪気があってのことではないでしょう」


いやいやなんで俺が悪くて、向こうが許す側になってんだよ……逆だろ……

俺の両腕、まだジンジンしてんですけど……


「あ、あのぉ……一体何がどうなってるんでしょうか?この方はどなたで、なぜ俺が襲われることに……?」


クルスさんは相変わらずの笑顔をこちらに向け


「フフッ。ご説明いたしますので、とりあえず中へ入りませんか?お飲み物もご用意しておりますので」


それを聞くとナナと呼ばれた女性がクルっと回れ右して、ギルド支部の中に入っていく。


「さぁ、ユウ殿も。」


「は、はぁ……」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ