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「ルーカス殿から大体の経緯は聞いております。
あなたがいなければ、ブラック・オーガは倒せなかった。
もし、奴を倒せなければ、この村が襲われ、甚大な被害を受けていた可能性もあります。
そして何より、古い友人であるあの2人を助けていただいたことに深く、感謝を申し上げます。」
深々とお辞儀をするイケメンさん。
それに焦る俺
「いやいやいやいや、俺とか全然そんな大したことしてませんから!!
むしろ遭難してたところを助けてもらってますし!!
奴を倒せたのもあの2人がきっちり仕留めてくれたからですし!!」
そんな俺を見て軽く微笑むイケメンさん。
「フフッ……あなたは随分と謙虚な方のようですね。ですが、あなたがどのようにご自分を評価していようと、私が持つ感謝の気持ちに変わりはありません。
何かお礼ができればよいのですが……」
うはぁ……どうすっかなぁ……この人、良い人なんだけど、結構グイグイ来るタイプだ……
こういうタイプはいくら断ってもなかなか引いてくれないんだよなぁ……
しゃーない……ここで無理矢理断ってもなんか悪いし、お言葉に甘えておきますか。
「じゃ、じゃーしんりょくについて教えてもらえないでしょうか?」
俺の唐突な提案にキョトンとするイケメンさん。
「そ、そのようなことでよろしいのですか?」
お礼する側がお礼の品に納得していないという少し奇妙な状況に、苦笑いしながら
「いやー、記憶喪失の俺にとってはかなり重要なことなんですよ。これから先、とりあえず冒険者で食ってくつもりですし……」
俺がそう言うと、イケメンさんは少し考え、何かを納得したような、諦めたようなそんな表情で
「ふむ、あなたが行ったことへの対価としてはかなり不釣り合いな気もしますが、あなた自身がそれを望むのならそれが良いのでしょうね」
と不承不承といった感じで、こちらの提案を呑んでくれた。
とりあえずなんとかなったことに一安心して、胸をなでおろす。
別にそんな大したことしてないのに、大層なお礼とかされてもこっちの気が引けるっつうの……
俺のそんな様子を見たイケメンさんが再び、「フフッ」とキザったらしく笑い、話しかけてくる……
いちいち微笑が似合うな……チッ……
「では、心力についてご説明いたしますね……とその前に、神術についてはどのくらいご存知ですか?」
「ある程度はリンさんに教えてもらいました。
確か、それぞれの国にある神像に祈りを捧げ、加護を受けることで発動させることができる力とか……」
イケメンさんは俺の曖昧な答えに「なるほど」と言いながら頷く。
「概ねそれで間違っていませんが、神術を扱うにはあと2つの力が必要です。」
イケメンさんは俺の目の前で指を2本立てる。
「まず1つは創造力。
神の加護をどのように具現化させるかをどれだけ頭の中ではっきりと創造できるか……
神術を扱う上でとても大切な力です。」
なるほど……つまりイメージする力か……
「その創造が不完全だと術はどうなるんですか?」
「大概は失敗となり、術の発動はされません。ですが、ごく稀に暴走という結果を作ってしまうこともあります」
意外と怖いな……
まぁーでも、ノーリスクでこんな便利なもの使えるわけないわな……
「創造力についてはよろしいでしょうか?
では本題である心力について説明させていただきます。」
ここからだな。
もし俺に扱えないものだとしたら、神術どころか、冒険者ギルドへの登録すらできない。
つまり路上生活者まっしぐらってことだ……そんなん嫌すぎる……
「心力とは、その個人に生来的に宿る心の力を指します」
心の力で「心力」か……結構そのまんまだな……
「心力に創造力を纏わせ、授かった加護に捧げることで神術は完成し、この世界に発現します。
その際、術の難度に比例して心の器に宿りし心力を消費します。
これはまぁー休息をとることで回復するのですが、全て使いきると命に関わりますので注意が必要です」
つまりMPってことだな……ベタですなぁ……となると
「心力は個人個人で消費できる総量が違ったりするんですか?」
「はい、おっしゃる通りです。
心力の総量はその個人によって変化します。
鍛練により、ある程度伸ばすこともできますが、生まれ持った総量を大きく伸ばすことはできません。
心力をより多く、その心の器に秘めていることは、すでに才能と言ってもいいでしょう。」
身ぶり手振りを交えて、丁寧に説明してくれるイケメンさん。
心力については大体わかった。
だが肝心なのは、俺自身に心力があるのかどうか……そしてそれをコントロールできるのかどうかってことだ……
「あ、あのーここまでの説明で心力については理解できたんですが、実際にそれがあるかどうかってどうやって調べれるんでしょうか?
ってか俺って心力あります??」
カウンターに上半身を軽く乗り上げさせ、グイッと前のめりに聞く。
いやだってこっちも必死ですから……
若干引きつつ、俺の両肩を軽く押して元の位置に戻しながら、イケメンさんは答えてくれる。
「ご、ご安心を……。
ユウ殿にも心力はきちんと宿っておりますよ。それも常人のソレより多く感じられます」
「えっ……?わかるんですかっっ!?」
思わず声がデカくなる俺を、「まぁまぁ」と諫めるイケメンさん
「神術を長年行使していると、大まかにですが他者の心力を感知できるようになるんですよ。
もちろん正確にどれくらいの心力をその心の器に宿しているかは、専用の術具が必要になってきますが……」
ベタな展開だが、この場合ありがたいことこの上ない……
「となると……あとはそれを制御できるかですよね?ど、どうすればできるようになるんでしょうか……」
その質問をしたとたんに場の空気がなんだか重くなった
「ふむ……ここまでで、ユウ殿の記憶喪失が重症の部類に入るものだとは思っていましたが、やはりかなりのものですね……
一体どのようなことがあなたの身に起きたのでしょうか……」
ため息混じりに今さらそんなことを言い出すイケメンさん
ぐはっっっっ……なんで今さら……ってか地雷どこにあったんだよ……わかりずれぇよ!!
うぐ……そ、そんな目で俺を見ないで!心が軋む!切なさが溢れてくるぅぅぅ!!
「ま、まぁ……それについてはこれから自分で調べていくつもりなんで……
と、とにかく!今は自分の心力を制御する方法を教えてはもらえないでしょうか……?」
「ふむ、そうですね……起こってしまったことを嘆いても始まりません。
恩人の頼みです。私にできることはさせていただきますよ」
微笑するイケメンさん
「あ、ありがとうございます……」
苦笑する俺……