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 目の前に広がるゴブリンの群れが、1つの塊のように殺気を向けてこちらに近づいて来る光景は、今まで見たどんなにグロいモノよりも鳥肌が立つのを覚えた。


「おーおー血走った目しちゃって、ただでさえ不細工なツラしてんのに、勘弁してほしいわー」


右の手のひらを顔の前で水平にかざして、眺めてるリンさんは相変わらず暢気だ……


「ゴブリン単一の集団か……1つの巣にいた群れがまるまる移動してるのか?」

ルーカスさんは冷静に考察を始めた。


「あのー、もう結構目と鼻の先まで来てるんですが、なんか作戦的なものってあるんですか?」


俺が尋ねると、リンさんが


「うーん、そうねぇ……って言っても、私達、今結構消耗してて、でかい術使えないのよね~特に私は。

だからまぁー中っくらいのをまずルーがぶつけたら、ゴー!ゴー!ゴー!でひたすら各個撃破!

そんな感じね!ファイト!!」


と俺に親指をグッと立てた左手を見せ、笑顔で話す。


それ作戦って言わねーし!!ってかそれを2人でやろうとしてたわけ?どんだけだよ!!


まぁーいいや、幸い、ゴブリンは森で遭遇したあいつらのことだったから、3人でカバーしあいながら戦えば、かなり数は減らせるだろう。

足手まといにはならないよう気を付けるしかないな。


「ま、まぁーできるだけがんばりまっす……」


項垂れつつ返答する。


「んじゃそろそろ行きますかー。ルー、とりあえず一発よろしくねん!!」


リンさんがルーカスさんの肩をポンと叩くと、ルーカスさんが右手に持った槍を脇で挟むように引き、半身になる。そして左手をゴブリンの群れへかざすと……


パッと光がその手の平から放たれ……


ズガァァアアアアアン


という雷鳴と共に一筋の稲妻がゴブリンの群れを襲った。


いやいや、あれで中っくらいかよ!!一撃で10~15体くらい黒焦げになってんじゃねぇか……自然災害が襲ってくるとか、神術マジパねぇっす……


「み、耳が……」


俺が両手で左右の耳を押さえつつ、そうこぼしていると


「んじゃ!おっ先~~」

とリンさんが短剣を2本、逆手に持って突撃していった。


それを追って、ルーカスさんも両手で槍を持ち直しながら駆ける。


いやいや……え?……マジで各個撃破でいくの?お互いカバーとかしあわないのかよぉぉぉぉおおおお!!


なんてね……まぁーなんか薄々わかってましたよ?


だってそのへんの打ち合わせ全然なかったし、ルーカスさんに至っては「助けないからな宣言」されてますしね……ホントは俺のこと好きなくせにさ……


ヒュゥ……バチィン!!

足元に雷撃らしきものが弾ける。


「うぉわっっ!!あぶなぁぁ!?」


何してくれてんのあの人!?流れ弾?流れ弾だよね!?


思わずルーカスさんの姿を探す。



うはぁ……なんだあれ……やっぱめっちゃ強いんだなぁ…あの2人、リアル無双乱舞じゃん……


ルーカスさんは槍を手足のように操ってゴブリンを蹴散らし、リンさんは短刀の二刀流で踊るようにゴブリンの首を飛ばしている。


あれで本気じゃないんだよなぁ……しかも神術まで駆使されたらもう最強じゃん……相対しても戦いようがねぇよあんなの……


感心半分呆れ半分で戦闘を観察していると、討ち漏らしが俺の方へ向かって走ってくるのが見えた。


「そろそろ出番ですか……昨日の夜よりもさすがに数が多いし、油断もしてない敵だ……こっちもこっちでしっかり気合い入れないとな」


柔道着と携帯を後ろへ放り投げる。


「ふぅぅぅぅぅ……」


心を平静に……五感を鋭敏に……俺の意識がこの場を支配するように……


気合いを充実させていく。

身体の隅々まで力を行き届かせながら、自然体のまま、敵の攻撃がこちらに届く半歩手前まで、その場を動かない。


「グギャーグギャギャギャー」


まず正面から棍棒を振り下ろしての一撃が迫る。

それに対し、右足を引き半身になることでかわす。


敵が前のめりになる勢いを殺さず、相手の右手首を取り、足を掛けながら手首を返し、その場で一回転させ、背中から落とす。

仰向けになった敵の首を思いっきり踏み、首を折る。


右、左、正面の3方向からそれぞれ剣を持ったゴブリンが突きを仕掛けてくる。

前方宙返りをしながら避け、そのまま正面の奴の登頂部へ踵を落とす。

着地後素早く左手にいる奴に右足による上段蹴りを放ち、頸椎を破壊。

最後に残った奴を倒そうとした時、ナイフを持った新手が俺の背後を襲う。

身体を半歩左にずらしながら、背後にせまった刺突をかわし、相手のナイフを持つ右手首を左手で取る。

そのまま一本背負いをし、相手の背中を地面に叩きつけると同時に喉元に拳を叩きつけて潰す。


横凪ぎの剣が目の前に迫り、上半身を反らすことで避ける。

そのまま後転飛びをし、立ち上がる。袈裟斬りの剣、槍による突き、棍棒による打撃と次々と攻撃が迫ってくる中、避けて打ち込む、いなして投げる、投げながら打つといった具合に対処していく。


集中を切らさず、周りの動きを支配し、自分がもっとも効率よく動く。


これだけ感情的で直線的な攻撃なら、例え多対一でもそこまで手こずることはない。


それにやはりといった感じだが、俺の身体能力がちょっとだけ底上げされている。


そんなぶったまげるほど上がってるわけじゃないのだが、普段ならいくら敵の態勢を崩していたり、相手の攻撃する力を利用しているとはいえ、止めをほぼ一撃で決められるってことはない。


本来ならもう2、3発入れるか、首を絞めたり折ったり、頭を地面に叩きつけたりしないと絶命まではさせられない。


だが、今も、敵の刺突をかわし、相手がこちらに来る勢いを殺さずに腹に貫き手を一発打ち込んだだけで、内臓を潰した感触がした。


まぁー結果的にはありがたいので、いいんだが……

これに頼ったらこの先強くなれないよなぁ……やっぱ心身ともに鍛練が必要だな……


俺はそう固く決意し、次の敵を倒しにかかる。

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