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 「7部族のことだけど、細かいとこまで話し始めるとかなり時間かかるから、はしょって要点だけ話すわね」


どうやらド常識中のド常識を質問したみたいだなぁ……そりゃ呆れられてもしゃーないわ……だが負けん!!

ここで聞いとけば、この世界にいち早く馴染めるはず……ってかそう何度も何度もこの心を抉るような視線と雰囲気に晒されてたまるかよぉぉぉ!!


「よろしくおねがいしまーす」


リンさんは歩きながら左手をパーの形にして肩の横まで挙げ、親指から順に折り曲げ始める

「まず、それぞれの部族名ね。ドラグーン・ウンディーネ・ケットシー・ドワーフ・ライカンスロープ・エルフ・ハーデス。それぞれの大まかな特徴はドラグーンが背中に翼、ウンディーネが両手両足に水掻きと首横の当たりにエラ、ドワーフが低身長に長いヒゲ、エルフが長い耳、ケットシーが私みたいな猫耳猫尻尾、ライカンスロープがルーのような犬耳犬尻尾、んでハーデスは……」


と言葉を区切りながらリンさんが振り返り、後ろ歩きしつつ、小指と薬指のみ立てていた手で俺を指差し。

「あなたみたいに特にこれといった特徴がない」


ちなみにリンさんがルーカスさんを例に犬耳犬尻尾と言った直後、ルーカスさんが憮然として「俺のは狼の耳と尻尾だ」と主張していたが、リンさんは素敵にスルー。

なんかこの二人の力関係が完全に見えてきたなぁ……


リンさんが再び前に向き直るのを見ながら、俺は今の部族名とその特徴を忘れないよう、頭に叩き入れた。

ハーデスってのは1部族の名前だったんだな……しかも外見的特徴に俺が当てはまるわけか……


一瞬、ルーカスさんを見る。


「それぞれの部族は【始まりの七神】が生み出したと言われていて、それぞれの神像が祀られている神殿を守るように都市を築き、そこを首都として、国を挙げて守護しているってわけ。そしてその国の首長こそが世界政府の1幹部となるわけね。ここまではわかった?」


どうっすかなぁ……これ聞いたらまためんどくさいことになりそうなんだよなぁ……まぁーでも……今さらか……


「あ、あのぉ~う……【始まりの七神】とは?」


二人とも今絶対肩をピクッってさせた!!絶対今ピクッってした!!

……うぅ……いたたまれないよぅ……この時の極度のストレスがのちに俺の頭髪へ多大なるダメージを……ってなるかぁあああ!!


じじぃの頭部が一瞬頭をよぎったが、無理矢理かき消す。


「はぁ……えぇ~っと……【始まりの七神】ってのはね、この世界が生まれたのと同時に顕現されたと言われている存在よ。そして、それぞれの神々はそれぞれの部族を生み、世界の運営を任せたと言われているわ。具体的に言うと

光のアマテラスはエルフ

闇のツクヨミはハーデス

雷のミカヅチはライカンスロープ

風のミナカタはケットシー

火のカグヅチはドラグーン

地のイザナミはドワーフ

水のイツキはウンディーネ

といった具合よ。まぁー運営どころか、神々がその身を神像へ宿らせ、世界への干渉をされなくなった当初は、全部族で世界大戦とかおっばじめたらしくって、グダグダだったみたいだけどね」


両肩を持ち上げ、両手を広げたポーズをしながら呆れてるリンさん。


まぁー肌やら目の色は違うけど、同じ「人間」しかいないのに、世界大戦起こしてしまってるトコからやってきた俺としては、なんとも言えない心境だ……。


しかし神が実際に存在したとされてるってことなのか?さっきは神像を祀った神殿を中心に都市が作られているみたいなことを言ってたし、その辺はやっぱ聞いとかなきゃな。


「神々がその身を宿したとされてる像ってのはやっぱりすごく大切なものなんでしょーね?」


「そりゃーね。各部族の象徴なわけだし、神術を使うには、神像から加護を得なきゃならないわけだから必死よ。

実際、大昔には戦争を見かねた神々が誰にも加護を授けなくなり、元々加護を得ていた人からも剥奪しちゃったから大混乱になったらしいしね。それで自分達の過ちを省みた各部族の首長達が戦争を終結させて、世界政府を作り、永遠の講和を神々に約束してやっと許してもらったらしいわ」


出たな「しんじゅつ」、この場合、神の術で神術とでも言うのかな……とにかくきちっと情報収集しないとな


「戦争を止めちゃうほどの混乱って想像がつかないですね……神像の加護がないとまったく神術は使えないんですか?」


「まぁー大昔とはいえ、やっぱり生活の要所要所に神術は関わっていたし、戦場ではもちろんのこと、魔獣への大きな戦力にもなってたわけだしね。

そりゃ~も~大混乱よ。

今の時代なんてさらに依存してる部分があるから、絶対に加護を失うようなことはできないわね。

んで、今の話からもわかる通り、加護なしで神術を発動することは絶対に不可能よ」


リンさんは歩きながら後ろの俺に見えるように手を揺らす。


「神像から授かる加護って大切なんですねぇ」


知った風な口でしみじみ言ってみる。


「まぁ~ねぇ。いきなり神術が使えなくなることに世界中の人が怯えてるくらいには大切ね」


相変わらず、どこか呆れたような口調で話すリンさん。


まぁ~そりゃそうだよなぁ……便利なものに弱いのはこの世界の人達も一緒ってことか。


にしても、神様が実際に居て、力を与えてくれる世界か……ますますファンタジー感が半端ないな……


あんまりにもあんまりなので、苦笑せざるおえない。


んで、やっぱどうみても神術ぐらいしか今のところ世界間移動に影響を及ぼしそうなものはないよなぁ……

まぁーまずは生きていくことからだから最初は後回しになっちゃうだろうけど、少しずつでも神術や神について調べていくのがよさそうだな。


「ちなみに人をある場所からある場所へ瞬時に移動させる術とかあります?」


俺の質問に首を傾げるリンさん。


「うーん……そういう術の研究を誰かがしてるかもしれないけど、実用化されたって話を私は聞いたことないなぁ……何?あんたもしかして、そんなトンデモな術に心当たりでもあるわけ?」


後ろに目配せしてきたリンさんの目が結構鋭くちょい怖い


「いやいや、もしあったらいいなぁーとかなんとなく思っただけですよ~~」


「ふ~~ん……あんまりそういうことは私達以外の前では言わないことね。ただでさえ、怪しいんだからあんた」


「うぃっす……肝に銘じておきまっす」


冷や汗を滲ませつつ、気持ち前傾姿勢でトボトボ歩く俺……癒しがほしいなぁ……

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