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ふたりだけの遊園地

作者: 苺大福

いつもいつも読んでくれてありがとうございます。



    ふたりだけの遊園地


 ここはとある真冬の夜の遊園地。


「遊園地って幻想的だと思わない?  特に夜の

遊園地ってすごく素敵。メリーゴーランドの明りが

まるで天国にいるかのようね」


 彼女が微笑みながら僕に話しかけた。

 駄目な僕には勿体ない位良く出来た彼女。いつも

優しくて怒らなくて天使のような彼女。


 僕は彼女に言った。

「どうして僕なんかと付き合ってるの?」


すると彼女は笑顔で答えた。


「んーー? なんでだろ。よくわからないなあ。でも

やっぱり一番の好きになった理由は優しいところだと

思う」


 僕は嬉しかった。顔も不細工だし、学歴だって

ない。学校出てもなかなか仕事も見つからず今だって

フリーターの日々を過ごしている。なのにこんな

可愛いらしい彼女が出来るなんて夢みたいだ。


 「ねえ? この遊園地ってわたし好き。夜になると

人もほとんどいないし、貸し切りにしてる様な感じ

にならない?」

 

 彼女は少し虚ろな目をして言った。

 

「そうだね。貸し切りみたいだね。乗り物もすぐ

乗れるしね。良かったら君の一番好きなメリーゴー

ランドに乗らないか?」

 

 彼女は言い終える前に僕の手を引っ張ってメリー

ゴーランド乗り場へ向かった。入口を過ぎて人形の

馬に跨る。するとすぐに回りはじめた。まるで

 

「ふたりだけの遊園地のよう?」


 彼女が言った。僕も今同じ事を考えていた。

 他にお客もいない。今まさにこのメリーゴーランド

はふたりの為に回っている。


 海に面したこの遊園地は夜になると綺麗な夜景も

楽しめる。彼女は本当にこの遊園地が好きなようだ。

僕も好きだ。彼女といるこの遊園地がすごく好き

だ。どんな嫌な事も忘れる事ができる。


 彼女は僕の名を叫んだ


「〇〇!! なにボーっとしてるのよ」


 ちょっと怒った素振を見せた。がすぐに彼女は

再び微笑んだ。嬉しそうな表情を浮かべて・・・


  そして・・・


 メリーゴーランドの二人のスタッフが男を見つめ

ていた。今日入ったばかりの新人スタッフが先輩に尋

ねた


「先輩。どうして閉店時間がすぎてるのに、あの

人に声をかけないんですか?」


 先輩は答えた。


「ん? ああ。あの人がここにいるかぎりこの遊園地

は閉店出来ない決まりがあるんだよ。2年ほど前に

ね、このメリーゴーランドで事故が起きたんだ。あの

男性の彼女の頭に照明が落下してしまってね。即死だ

ったよ。それから毎日夜になると、こうして必ずメリ

ーゴーランドに乗りにくるんだよ。」


 後輩は言った。


「それであの人さっきから独りでぶつぶつ言ってるん

ですか。なんか怖い話ですね?」


 先輩はちょっと笑顔になった。


「そうか? そうだよな。お前には見えないよな

俺も初めは気持ち悪かった。ひとりでさ、ずっと

ぶつぶつ独り言言ってるように見えたからさ。怖かっ

たよ。でもさ・・・最近になって見えるようになっ

たんだ。見えるんだよ。あの人の死んだ彼女の姿が

はっきりと、たしかにあそこにいるんだ。すごく

楽しそうな彼女の姿がさ。だから今の時間はふたり

だけの遊園地なんだ」


 彼女は本当に幸せそうな表情を浮かべていた。

 男もまた幸せそうな表情で彼女を見つめていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 文章体裁について参考になると思いますが。 http://www.asahi-net.or.jp/~MI9T-MTTN/cstory/write11.html
[一言] あ、かわいらしいお話♪と読み進めてみたら…。 すごく切ないです。心に残ります。
2010/03/26 21:51 退会済み
管理
[一言] 胸にぐっとくる作品ですね。 出だしがふわっと始まったので、フンフンと読んでいたら、最後に心に響きました。
2010/03/26 21:49 退会済み
管理
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