11 『等価原理』③
『万有引力』について調べるための実験の中で特によく知られているものに、「質量の異なる物体を同じ高さから同時に落として,どちらが先に地面に到達するかを確かめる」というものがあります。
すぐに思いつくだけでも、“ピサの斜塔から重さの異なる物体を同時に落とした時、どちらが先に地表に到達するか?”というガリレオの落下実験や、“空気抵抗がない(大気が存在しないため)月面で鳥の羽とハンマーを同時に落とした場合、どちらが先に落ちるか?”という月面探査機アポロ15号の船長デイヴィッド・スコット飛行士が行った落下実験などがあります。
実験結果は———「同時に着地する」というものでした。
この実験を、実際の数字と実際に働いていると考えられる原理を交えながら思考実験で再現してみようと思います。
場所は——そうですね、空気抵抗などといった余分な外的要素が入り込まないように、アポロ15号と同じく月面で行う想定にしておきましょう。
実験内容
月面に支柱を立てて床から高さ10mの位置に重りの底面が来るように糸で吊り下げた形の装置を設置します。
重りは10gと10kgの二つを用意します。
重りが落ちる床面にはセンサーを埋め込んで、重りが落ちた瞬間の時間を記録できるようにします。
あとは糸を同時に切れば、どちらの方が早く落ちるか調べることができるでしょう。
では具体的な数字を当てはめていきましょう。
月の質量は7.347673×10²²kg
月の半径の平均値が1737.15kmプラス装置の高さ0.01km
表面重力が1.622m/s² 重力係数換算0.165G
10kgの重りを実験A
10g の重りを実験B
1737.15の二乗が3017690.1225となるのでF=G(M+m)/r²の式に代入すると
A:0.165×73476733000000000100/3017690.1225=0.4017529951×10¹²+0.00000546775
B:0.165×73476733000000000000.001/3017690.1225=0.4017529951×10¹²+0.000000000546775
となります。
このように途轍もなく小さな値ではありますが、同時ではないことが分かります。
また、差の値が小さすぎて、これまでのような実験では検出は不可能であろうことも同時に理解できると思います。