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イタリア昔ばなし(デカメロン)

作者: 彩煙

だいたいこんな内容です。

昔々ある所に、それはたいそう篤い信仰を持つキリスト教徒の村娘がおったそうな。

彼女は幸か不幸か、とても器量の良い絶世の美女でした。しかし、そんな彼女には夢がありました。それは、シスターになって神に仕えるというもの。これを叶えるために、村の教会に行き、神父さんに頼み込みます。

「どうか私がシスターになるために、勉強をさせて下さい」

ところが神父さんは、この美少女を前に「こいつはまいったぞ」と思いました。なぜなら、こんなに可愛らしい娘が常に自分と一緒にいるとなると、自分の欲望を抑えられるかどうかが不安だったからです。そこで神父さんは言います。

「私よりもずっと徳の高いお方が隣町におる。そこに行って頼みなさい」

神父さんは村娘に、隣町の神父さんに宛てた紹介状を書いて手渡しました。

「ありがとうございます」

娘はそれを受け取ると、急いで隣町へ向かいました。もちろん両親は止めましたが、彼女の信仰心はそんなもので止まる筈もありません。

「どうか私がシスターになるために、勉強をさせて下さい」

隣町の神父さんに紹介状を渡して、また頼み込みます。しかし、この神父さんも彼女を受け入れてはくれませんでした。

「私よりもずっと徳の高いお方が隣町におる。そこに行って頼みなさい」

彼女は落胆しましたが、高い信仰心と村を捨てて出てきたという思いから、今更後には引けなくなっていました。神父さんが書いてくれた紹介状を手に、次の町へと向かいます。

それから村娘は色んな町に行きましたが、どこに行ってもたらい回し。彼女を受け入れてくれる教会はありません。彼女が「これを最後に、ダメだったら故郷に帰ろうかしら」などと弱音を吐いてしまった回数は、一度や二度ではありませんでした。

今、彼女は砂漠の真ん中にある教会に来ていました。故郷はうんと遠くになってしまっています。

「どうか私がシスターになるために、勉強をさせて下さい」

神父さんは、彼女がここまで来るようになったいきさつを聞き、たいそうかわいそうに思い、

「よし、では私の所で修業を積みなさい」

そう、快く受け入れてくれたのでした。

それから数年ほど経ったでしょうか。今までは自分の性欲を、信仰の名のもとに抑えていた神父さんも我慢の限界を迎えてしまいました。

「どうしたものか。こんなに醜い姿を、あんなにいたいけな少女に見せては幻滅させてしまうのではないか」

神父さんは悩みました。町の娼婦に頼るという手段もありましたが、それでは村の中での自分の沽券に関わります。困りに困った末、神父さんはある方法を思いつきます。

「君もここにきて随分と月日がたったね」

「はい。神父さんが受け入れてくれたおかげで、私も神に仕える身として精進ができます。ありがとうございます」

「いやいや、君はまだまだ勉強をする必要があるよ。例えば……」

神父さんはなるべく真面目な表情をして、続けます。

「悪魔の鎮め方とか」

「悪魔の鎮め方ですか?ぜひ知りたいです」

娘は神父さんを信頼しきって、その言葉を疑う事はありませんでした。

「神父さん、その悪魔というのはどこにいるのでしょうか」

「これじゃよ」

神父さんは自身の服を脱ぎすて、その怒張した赤黒いモノを指さします。

「あぁ……」

娘は余りにグロテスクなソレを見て、一瞬気を失いそうになりましたが、勤勉な性格がそれを踏みとどまらせます。

「それで、その悪魔を鎮めるにはどうしたらいいのでしょうか」

真剣な表情で彼女は神父さんに尋ねます。その眼にはやはり神父さんへの信頼と信仰心のみが宿っていました。

「悪魔はあるべき所に戻すことで鎮められるのじゃ」

「あるべき所?」

「地獄じゃ」

「では、その地獄というのはどこにあるのですか」

「そこじゃよ」

神父さんは娘の下腹部を指さします。娘は自分の中に地獄があるというショックで打ち震えました。確かに、そこは今までにないほど熱くたぎっており、何も知らない娘にとっては地獄の様相をなしていました。

「案ずるでない。その地獄も悪魔を迎え入れれば、自然と消えて行く」

「では、今すぐにでも悪魔を鎮めましょう」

娘は神父さんの言葉通り、悪魔を鎮めるための修行を行いました。

決して楽な修行ではないだろう。いったいどれだけ苦しい事なのかと心配していましたが、ことのほかそれは娘にとっても気持ちのいい修業でした。今までにしていた勉強なんかよりもずっと、楽しい修行だったのです。

修業を終えると、神父さんの中にいた悪魔は見るからに消えていました。そして、娘の中にあった地獄も収まっています。

「神父さん。私はこの修業をもっと勉強したいです」

「そうか、そうか」

二人は何度もその修行をしました。次の日も、その次の日も何度も何度も。

しかし、若い娘と年を取った神父の間では、体力の差がどうしてもあります。なので、神父さんは日を追うごとに、見るからに弱っていきます。しかし、一度自分がいった手前、本当の事など打ち明けられるはずもなく、すっかり修業にのめり込んでしまった娘の求めるがままに、修行に応じるほかありませんでした。

「神父さん、今夜も修業をしましょう」

「神父さん、今夜も頑張りましょう」

「神父さん……」

初めて知った修業に、娘はすっかり憑りつかれています。神父さんはほとほと困り果ててしまいました。

「どうにかしてこの状況を解決しなければ、私の体がもたないぞ」

そんな悩みを抱えていたある日、教会に見知らぬ若い男がやってきます。話を聞けば、娘の故郷からはるばる彼女を迎えに来たという事。どうやら、彼は彼女の許嫁としてやって来たそうな。

「しめた。彼に彼女を渡してしまおう」

神父さんはそう思い、早速彼女に説明をしました。

「君を求めてくれる人がいる。それはとても喜ばしい事じゃ。それに、神に仕えるという事は、何もシスターでなければできないという物でもない。その信仰心があれば、きっと神様はわかってくれるはずじゃ」

「しかし、神父さん。私はこれからもずっとここで修業が積みたいのです」

「それは、ここでなくてはできない事ではない。きっと、故郷でもできるはずじゃ。ただし、その鎮め方は秘術。決して、そこの男意外に話してはならぬぞ」

「……分かりました」

娘はしぶしぶと言った様子で、神父さんの言う事に従いました。

故郷への帰り道の事です。娘が、ふと自分の想いを許嫁の男に漏らしました。

「私、もっと悪魔を鎮めるための修行を積みたかったわ」

「はて、それはどんな修業をしていたんだい?」

娘は、その内容をつぶさに説明しました。男は、それを聞いて言います。

「あぁ、その方法なら僕も得意だよ。今夜の宿で一緒に修業をしようじゃないか」


めでたしめでたし


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