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10.アンブローズ家サイド

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。



「父上、ルディとリオンの話、どう思われますか?」


 既に夜も深まった時間帯。

 アンブローズ家の執務室には、当主であるザイールと長男クリスがいた。

 ワインを片手に若干寛いだ様子の二人だったが、手に持った書類を見つめる視線は厳しい。


「フェリシア嬢だったか……、恐らくだが、彼女が言うようにリオンはカレディスのせがれにまんまと嵌められた可能性が高い」

「ええ、まさかそのような嫌がらせをリオンが受けているとは思いませんでした。聖女の件はもう少し詳細を調べれば良かったと思います」


 バーミリオンだけでなく、トラスト・カレディスも、その後に派遣された他の神官達の誰もが見つけられなかった聖女。

 だからこそ、まさかトラストによってバーミリオンが嵌められていたとは露とも考えなかったのだ。


「で、例の聖女に関しては…?」

「コルプシオン男爵領に放った密偵が言うには、フェリシア嬢が語ったとされる内容はほぼ間違いなかったようです。それはそれはもう酷い内容でした。実の姉と縁を切りたいと言う彼女をどうかと思った自分が恥ずかしくなるほどの内容です。正直、私ならとっくの昔に亡き者にしていたでしょう」


 断言するクリスを、ザイールは止めなかった。

 自分の娘がシーナと同じことをすれば毒殺している自信がザイールにもあった。

 報告書を読めば読むほど、男爵家の忍耐には賞賛を送りたいほどだ。


「しかし、悪女が何か高位存在に守られているというのも本当のようだな」

「ええ。密偵もかなり調べたようですが、例のシーナという姉を殺そうとした人間は片手では足りないようです」

「それなのに未だにピンピンしていると……」


 それが何よりも不気味だった。

 本当に聖女なのか?

 もしかしてそれ以上に厄介な人間じゃないかという思いもある。


「フェリシア嬢は学園を卒業する頃には自滅していると断言していたようだが……」

「そうですね。それを信じて良いのかどうか」


 大層美しいと評判の少女が故に、もし王家に気に入られでもしたら大変な事になる。

 出来ればそんな女など排除したいところだ。

 しかしながら、どんな悪女だろうと予言の聖女として機能するならばその存在を無視する事は出来ない。


「どうしますか?幸い王太子は既に学園を卒業されているので、最悪な事にはならないと思いますが……」

「そうだな。寧ろ正妃様からすれば、第二王子を公に排除出来る機会と捉えるかもな…」


 第二王子は側妃の息子だ。

 当然、正妃は第二王子の存在を好ましくは思っていない。

 排除出来る機会があるのならば、それを絶対に逃しはしないだろう。


「その辺りは母上に様子を窺って頂くより他にないですね」

「上手くやれば、リックス侯爵家を排除出来る。王家にとっても悪い話ではない」

「やはりトラスト・カレディスの裏にはリックス侯爵家が関わっていると思いますか?」

「そこは間違いないだろう。カレディス家はリックス家の分家に当たる。トラストに命じてリオンを排除しようとしても不思議ではない」


 一度は左遷されたバーミリオンだったが、幸いその後は王都の教会に戻ってきていた。

 他の誰にも聖女を見つけることが出来なかったからだ。


「まぁ、こんなに評判の悪い女が聖女だなんて誰も思わないですよね」

「全くだ。言いたくはないが、女神の見る目に呆れるしかない」

「同感です」

「どちらにせよ、フェリシア嬢とは今一度詳細を詰める必要がある。クリス、今度はお前も同席して話を聞いてくれ」

「お任せ下さい」


 バーミリオンは聖職者として悪くはないが、政治に関してはポンコツに近い。

 そしてルドルフもまだ若く、経験値が圧倒的に足りなかった。

 今回の件、弟二人にはまだ荷が重いだろう。


「ところで、フェリシア嬢は本当に十三歳なのか?」

「間違いないようです。将来有望と言いたいところですが……」

「惜しいな、男ならお前の側近に欲しいところだ」

「本当に……」

「ここは兄の方に期待するとしよう」


 そんな期待をされていると思わないシリウスは、フェリシアと二人で今後の対策を練っている。

 そうして、多数の人間が様々な思惑を抱えたまま、ついにはフェリシアとシリウスが王都へとやってくる日が来た。


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