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第3話

 ルーカスさん達との一件以来、私は完全にクラスで孤立するようになりました。

 誰も私に関わろうとはせず、常にクラスでは浮いた存在となってしまったのです。


 社交界へ参加すれば、放っておいても自然と殿方が集まってくる。

 そんな優れた容姿をもってしても、孤立している私へ付け入ろうとする男の子の一人すらも現れないのだから、これはよっぽどの嫌われっぷりだなと思わず笑ってしまいそうになるほどです。


 でもそれも、当然の事でした。

 何故なら私は、彼らとの縁を切って以降も、周囲に対して態度を変えるつもりなんて微塵もなかったからです。

 何か不満事があれば、私は持ち前の我儘を継続させていました。


 そのおかげもあり、私に近付こうとする物好きな人なんて一人も現れず、私はそれから中等部を卒業するまで快適に独りの時間を過ごすことが出来ました。



 ◇



 捻くれた私も、現在は王立の魔法学校の二年生。


 ここ魔法学校は、十六を迎える歳から入学が許される魔法の学び舎。

 幸いにも魔法の才が認められた私は、お父様にお願いして魔法学校への進学を許可していただきました。


 しかし、ここ魔法学校へ通う人の多くは平民の出。

 私達貴族は、初等部から高等部まで一貫した学園へ通うのが当たり前なのです。

 何故ならそこは、貴族や裕福な生まれの人のみ通う事が許されている特別な場所だから。


 当然学園でも魔法について学べるので、魔法学校を選択する必要もないのです。

 それでも私は、敢えてこの魔法学校への進学を選びました。


 理由は、魔法についてより高いレベルの知識を学びたいから――なんてのはただの建前。

 本音は、ただ何となくそうしたかっただけです。

 本当に魔法を極めたいとか、何か特別な理由や動機があったわけではありません。


 ただ何となく、マンネリ化していた学園生活に飽きていた私は、一度周囲の環境を変えてみたいと思ったのです。


 こうして魔法学校へと進学した私は、やはり当初は周囲からの注目を集めてしまっておりました。


 本来はこんな場所に居るはずのない、公爵家という特別な身分。

 そして、優れたこの容姿――。


 貴族の仕来りや身分差をちゃんと理解していない平民の中には、この私にアプローチしてくる愚か者まで現れる始末。

 身の程知らずな彼らに、最初は笑いを堪えるのに必死でした。


 これなら何か変わるのではないかと、私も最初は期待をしていたのです。

 しかし、私のこの捻くれた性格を知った人達は、次第に私から距離を置くようになったのです。


 その結果待っていたのは、私に対する陰口でした。

 私のいないところで、彼らが私の話をして笑っている事も知っています。


 こうして私は、この魔法学校でも早々に一人になる事に成功すると、そのまま何があるわけでも無く気が付けば二年生へと進級する事となりました。


 環境を変えようと思ったのは自分。

 だから、もっと上手いやり方があったのかもしれない……いいえ、実際あったのでしょう。


 それでも私は、これで良かったと思っている。

 彼らのような張りぼての相手をするぐらいなら、一人で過ごしている方がよっぽど気楽だと思えたから。


 そんな魔法学校での生活。

 ある日私は、学校の帰り道に少し寄り道をしてみる事にしました。

 普通であれば、お買い物なんて使用人の誰かに任せておけばいいのですが、幸い今の私は魔法学校の制服姿。

 ぱっと見では庶民と見分けが付かないのを良い事に、一度自分でも街を見て回りたいと思い立ったのです。


 こうして街を歩くのは何時ぶりでしょうか。

 行き交う人の多さに若干怖気づきながらも、私は繁華街の中心に大きく店を構えている書店へと立ち入りました。


 店内には、所狭しと並べられた本の数々。

 元々読書の好きな私は、この空間にいられるだけで少しだけ楽しい気持ちになってくる。


 そう思える事が、私にとって貴重な事でした。

 そして私は、店内の一番見えやすい場所に積まれたある本に目を奪われる。



『悪役令嬢として転落するのは嫌だから、運命に必死で抗ってみた』



 これまで読んできたどの本とも違う、特長的なそのタイトル――。

 どうやらこれは、今若い女性達の間で人気の娯楽小説というものらしい。


 庶民の方々にとって、貴族とは憧れの存在。

 そんな貴族にまつわる物語は、若い女性からの人気が高いらしい。


 ――でも何よ、このタイトル。


 私はそのタイトルを見て、思わずクスリと笑ってしまいました。


 ――タイトルは長いし、それに悪役令嬢って何よそれ。もしかして、私みたいな嫌な女の事を言っているのかしら?


 そんな、癖の強過ぎる小説が少し気になった私は、丁度学校で時間を潰す用の読み物が欲しかったこともあり、試しにその小説を買って帰る事にしたのでした。



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