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まるで悪役令嬢な私を変えてくれたのは、貴方でした。~捻くれて育ってしまった本当の私を見つけてくれたのは、身分の違う一人の男の子でした~  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第三章 まるで悪役令嬢だった私は

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第13話

 ルーカスに対して、はっきりと告げられたライリーさんの言葉。


 その言葉に対して、ルーカスは言葉を詰まらせる。

 しかし、それでも納得はいかないご様子で、再び口を開こうとした時その肩へポンと手が置かれる。

 同じクラスのアレン・デュークさんでした。


「――ルーカス。お前達の間に何があったのかは知らない。でもさ、今のやり取りだけ見るとお前が悪い。それに、見ろ――」


 そう言ってアレンさんは、私の方を見る。

 訳が分からない様子でルーカスもこちらを向くと、その表情には狼狽の色が現れていく。


 ――どうかしたのでしょうか。


 その理由が分からない私でしたが、頬に伝わる一筋の感触に気が付く――。


 ――これは……涙?


 そう、私の頬を伝ったそれは、紛れもなく涙でした。

 でも何故、急に涙が――そう思いながら、私はずっと隣に居てくれるライリーさんの方を振り向く。

 するとそこには、私を安心させるように微笑んでくれているライリーさんの姿がありました。

 その優しい微笑みを前に、私は涙の理由に気付いてしまう。


 ――ああ、そっか。私、嬉しかったんだ。


 さっきのライリーさんの言葉が、私は嬉しかったんだ――。


 ――ライリーさんだけは、こんな私の事をちゃんと見てくれた。


 ――ライリーさんだけは、こんな私の事をちゃんと理解してくれた。


 ――ライリーさんだけは、こんな私の事を、守ろうとしてくれた……。


 そんな喜びに、私は一つの気付きを得る。

 ずっと胸にぽっかりと空いていた穴の原因に、ようやく私は行きついたのです。


 ――私はずっと、誰かに自分自身を認めて貰いたかったんだ。


 ライリーさんは、こんなちっぽけな私に空いていた心の穴すらも埋めてくれた。


 だから私は、覚悟を決める。

 涙を拭って一歩前へ踏み出すと、ルーカスの前に立つ。


「――今更こんな事を言っても、無駄なのは分かっています。それでも、これだけは言わせてください――――これまで、沢山のご迷惑をおかけいたしました。本当に、申し訳ございませんでした」


 その謝罪とともに、私は深々と頭を下げる。

 そんな私からの突然の謝罪に対して、教室内はざわざわとどよめきだす。

 それもそのはず、皆さんは私とルーカスが会話しているところなんて一度も見た事が無いのですから。


「――幼い頃から、私は私ではなく、この容姿とロレーヌ家という爵位を目当てにされてきました。それはきっと、ルーカスさんも同じだったと思います」

「いや……それは……」

「いえ、いいのです。だから私は、周囲に対して壁を作るようになりました。誰も私自身の事を見ようとしないのならば、私の方から嫌われてやろうと思ったのです。その結果、次第に捻くれていった私のせいで、ルーカスさんには本当に沢山のご迷惑をおかけしてしまいました」


 私は、自分の心の内を吐き出す。

 話をする事で分かって貰いたいとか、許して欲しいなど都合の良い事を考えているわけではありません。


 こうして全てを明かす事こそが、ルーカスに対する最低限のけじめだと思ったから――。


「――では、もし俺が、あの頃の事は全て無かった事にして、もう一度許嫁に戻って欲しいと言ったらどうする?」


 ルーカスから、まさかの言葉が返ってくる。

 いきなり「許嫁」という言葉が飛び出した事に、再び教室内にはどよめきが広がる。


 今時許嫁だなんて、中々聞かない言葉でしょう。

 それだけ私達貴族というものは、特殊な存在というだけです。


 私はルーカスの言葉に対して、はっきりと向き合って返事をする。


「それは、お断りさせていただきますわ」

「理由を聞いてもいいかな?」

「ええ、どうやら私は、畏れ多くも恋をしてしまったようなのです。ですから、そんな浮ついた気持ちのままルーカスさんと向き合うのは、大変失礼な事だと思いましたので。たとえそれが、親同士の決めた許嫁だとしてもです」


 私はルーカスの事を真っすぐ見つめながら、はっきりと答える。

 ルーカスはというと、私の思いに対して気を抜くような溜め息をついた。


「――まぁ、そうなんだろうな。知ってた」

「知ってた、とは?」

「だってここ最近のセイラは、俺には一度も向けてくれたことの無い表情をしていたから」

「そう、ですか……」

「正直に言うと、俺は悔しかったんだ。どうしてその表情が、ずっと近くにいた俺ではなく、こんなぽっと出の平民に対して向けられているのかってね。でも改めて考えてみると、俺は俺で駄目だったんだ。ずっとセイラに対して、ちゃんと向き合おうとしてこなかったから。だからこれは、お互い様なのさ」

「お互い様……」

「うん、だからさ。――良かったら俺と、改めて友人になってはくれないか?」


 何か吹っ切れたように、ルーカスはその言葉とともに手を差し出してくる。


「友人、ですか。でも……」


 散々迷惑をかけてきた私が今更友人だなんて、そんな事許されるのでしょうか……。


「友人と言っても、何も特別な話じゃないさ。朝会えばおはよう、そして帰りにはまた明日。そう言葉をかけ合える、普通の関係さ」

「――なるほど。ええ、それでしたら」


 恐る恐る、私はルーカスの手を取る。

 するとルーカスは、少し後悔するように微笑んだ。


「――その、何ていうか……俺も以前、色々言ってしまってすまなかった」

「そんな! 謝らないでください! あれは全て私が悪いのですから!」

「はは! まぁそれもそうだなっ!」


 慌てて謝罪をする私に向かって、ルーカスは悪戯に笑った。

 それはあの時と同じルーカスの本音。でもその本音は、あの時とは違っていた。

 それが私も嬉しくて、言われているのについ笑みが零れてしまう。


「――よし、じゃあ俺は行くよ。ライリーもその、色々言ってしまってすまなかった」

「いや、俺は別にいいさ」

「そうか、ありがとう。それじゃ、また明日」

「ええ、また明日――」


 また明日――。

 まさかその言葉が、ルーカスから聞ける日が来るとは思いませんでした。


「じゃあ、俺達も帰ろうか」

「え? ええ、そうしましょう」


 完全巻き込む形となってしまったが、ライリーさんは微笑みながら声をかけてくれる。

 その言葉に安心した私は、もう何も包み隠す事無く一緒に微笑むのでした。


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