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7 紹介


 教室に戻ったら案の定誰もいなかったので荷物を片手に執行室へと向かう。


 しばらく歩いて執行室の扉の前に立つと少し緊張してきた。


 俺は一度深呼吸をしてから意を決して扉をノックし名乗る。

 すると中から会長の声で入室許可が出た。


「少し遅かったじゃないか。ミラベル教諭からの連絡に不備があったか?」


「いえ、むしろその伝言を伝える人に捕まってました。」


「何かしたのか?」


「何もしてないです。何もしてないのに捕まって少し話し込んでました。詳細は私の口からは告げられないので本人からお聞きください。」


「む……まあいいだろう。割の良いアルバイトを見つけたので紹介する。少々難はあるが君ならば大丈夫だろう。付いてくるといい。」


 直接連れてかれるの?


 俺はどこに行くのか分からないまま会長に付いていく。会長は迷いない足取りで……校舎を案内し始めた。


 意味は分からなかったがバイトは校内の何かかもしれないので案内も真剣に聞く。


 やがて一通り回ったが……無視している場所が一つだけあることに気づく。


 部室棟だ。生徒執行部は一応形式上は部活動のため執行室も部室棟にある。一番始めにいたのにそこだけは案内されていない。単純に忘れているのだろうか……?


 俺達は部室棟に入り、執行室……の前を通りすぎた。


 そしてどんな部活があるかをざっくり案内されて最上階に着く。…………まさかな?


「さて、ここが目的地だ。」


「会長、質問いいですか?」


「案内したかったから案内した。以上だ。」


「…………ここはどこですか?」


「魔法学探究部と……まあ通称研究室だ。」


「疑問は留まるところを知りませんけどここは魔境だと聞きました。」


「そういうことを言ってはいけないぞ。確かにここを根城にする彼女は癖があるがな。……入るぞ。」


 研究室と呼ばれた部屋に入ると…………うわぁってなった。

 散乱具合が半端じゃない。ここはあくまで教室なのに。


 …………今視界の端に紫色の布切れが映ったぞ!? マジか、マジでここには転がってるのか。しかも多分使用済み。


「いるか!?」


「そんな声出さないでください、聞こえていますよ。何のご用ですか、会長? 研究費の話でしたらついたはずですけれど。」


「少し相談がある、顔を見せてくれないか?」


「………………なんですか?」


 部屋の奥の扉からこの部屋の惨状を作り出したとは思えないほどきっちりとした格好のラベンダー色の髪の女性が出てきた。


 切れ長の目に長い髪は後ろで無造作に纏められているが手入れしているのか飛び出ている毛も見つからない。

 その女性は制服に白衣という出で立ちであまり感情の宿っていない顔を奥の扉から覗かせていた。


「……誰ですか、その隣の。」


「一年首席のロレンス・セルヴァーだ。二年零席、プラトネス・ミネリクト君、君に彼を頼みたい。」


「……休んでください、会長。今日は部下に仕事を投げてゆっくりお風呂にでも入ってゆっくり寝てください。」


「私は正気だぞ。」


 あぁ、疲れてるから妄言を吐いてると思ってるのね。忙しいからなぁ。


「では貴方の偽善に巻き込まないでください。」


「失礼だな。彼は承知の上だ。」


 今度はあれか、私は困ってないのに自分に無理矢理人を押し付けるな的な……。ある意味俺への配慮。

 それを俺の意思関係なく博士を心配押し付けられたのだと思ったと解釈して会長が返したんだな。


「聞いていませんよ、会長。」


 この噛み合ってないようで噛み合ってる会話をしている二人は知り合いだ。それは知ってる。


 でも俺は部活動を紹介してほしいんじゃなくてバイトを紹介してほしいのである。


「アルバイト代ならば私が生徒執行部活動資金に用意した。」


「…………内容は?」


「彼女の世話。」


「私は男ですけど。」


「彼女は気にしない。君も優秀な助手が欲しいと言っていたじゃないか。」


「それに私では彼女の補佐は勤まりません。」


「さっきのが会話に聞こえたなら大丈夫さ。」


「いや、解釈合ってるか分からないので大丈夫じゃないです。」


「…………助手? そこにあるものはなに?」


「エーテルの精製器ですね、学園にこんなもの置かないでくださいよ。せめて実験室とか。」


 結構汎用性のある触媒液みたいなやつだな。大量に使うから置いてあるのは良いとしてその奥の部屋に置くとかしてほしい。素人が触ると魔力が暴走して腕とか吹き飛ぶかもしれない。


「あれは?」


「マナ増殖装置と凝縮装置ですね。こんなもの素人が触ったら部屋なんて吹っ飛ぶんですからこんな場所に置かないでください。」


「あれは?」


「あれは何の変哲もない貴方のおパンティーです。私は純情な少年なので片してください。」


「本当だよ。散らかっているものは私には分からないものもあるから口が出せないが脱いだ服と下着くらい纏めておいてくれ。洗うことすら出来ないじゃないか。」


「あれはあそこにあるのが正しい形です。」


「そんなわけあるか!」


 うん、この二人の会話は面白い。俺はその辺の動かしちゃ不味いものと重ねちゃ不味いものと下着を退かして椅子を引っ張り出して座り観察する。

 というか下着何枚散乱してるんだ……。あ、勝手に座らせてもらってまーす。長くなりそうだったので。


「…………会長、これどこで拾ったんですか?」


「これとか言うな、後輩だぞ。私は会長だから昨日見つけた。波長が合うかと思ってとりあえず連れてきてみたがむしろ最低限の知識はあるようで驚いている。どこで見てどこで学んだのだろうな?」


 ゲーム。色々な作成に使う。

 ミニゲームで触っちゃいけないとこ触ると即ゲームオーバー。クソゲーだ。


「………………なるほど。私が仕込めば助手になるかも。」


「頭は良いようだったからな。気に入ったか?」


「不気味だから近づけたくないです。」


 酷い言いようでござる。


「そうか、なら助手にするといい。」


「ちょっと会長。今拒否してませんでしたか?」


「してないぞ。彼女はいらなかったらいらないと言う。役に立たないと判断したら無能は出ていけと追い払う。」


「いや、危険物まみれなので追い出すのは当然ですよ。だって割ったら爆発する薬品とかもあるんですよここ。ほら、あれです。空気に触れると爆発するんです。」


「ならどうやって作るんだ?」


「材料潰して混ぜずに蒸留器にセット、加熱して水中で気体を採取、それを数回やって蓋して混ぜて、冷やして液体にする。もしくは錬金術の陣を使って真空の瓶に材料を入れて変化させて混ぜます。」


「正解。爆発ポーションは一級調薬師または準一級錬金術師にしか製法が明かされないけど貴方は何者?」


「物知りな後輩です。」


 不憫だなぁ……片付け苦手で口下手なだけなのにここは魔女の魔窟と呼ばれてるんだぞ? 血も涙もない魔女が日夜研究をしてるって。


 優しいから怒るのに。じゃないと多分腕くらい簡単に吹っ飛ぶ。そのくらいの事故が簡単に起こるのがここだ。転ぶとしても場所考えないと死ぬ。

 普通に慣れない人間は入れないはずだよね。だって死者出るし。


「君、部活は?」


「入る気ないです。」


「専攻は?」


「授業は明日からです。基礎をいくつか取るつもりですよ。」


「基礎? 何の?」


「魔法学、剣術、地理、経済学、調薬、作法です。」


「時間の無駄。単位は私がどうにかするからこっち来て。」


「魔法学と剣術と地理、経済学、作法は取りたいんですけど……。」


「地理と経済と作法? こっち志望じゃないの?」


 こっちって研究者か? 違う。


「俺の将来は領主です。」


「領主? 会長、セルヴァー家なんて上位貴族にいましたか? 記憶にありませんけれど。」


「男爵らしい。」


「何で教えるんですか。」


「隠してないだろう?」


「男爵? ならこっちくれば子爵にする。私の助手なら爵位くらい大した問題もない。」


「彼は父を楽させたいらしい。実子も一人しかいないようで当然家を潰すつもりもないようだ。」


「貴族が親を? 変人ですね。」


「だが悪い人間ではないだろう?」


「…………勿体ない。」


「どうやら気に入ったようだな。」


「不気味でも珍しいですよ。学生で私の助手になれる存在は初めて見ました。実に勿体ないです。」


「私も驚いている。ただの貧乏男爵家からどうしたら彼が出てくるのか。」


「……会長、こっちで雇うので活動費は使わなくていいです。」


「それは研究費で、それとも自費で?」


「自費です。」


「…………くくくっ、ふふふふ。そうか、自費か。頑張りたまえ、少年。」


「会長、説明してください……ちょっと、出ていかないで!」


「君のことは魔法学第零研究室所属としておこう。頑張りたまえ。」


「何をですか! ちょっと! 行かないで! 説明してください!」


「なら私が説明する。学園を挟まない個人雇用。つまり色々細かく設定できる。住む場所とか。」


「………………貴方は何決定してるんですか! 会長、不純異性交遊の現行犯で私を連行してください!」


「ふふふ、君をかい? 君は嫌がってるじゃないか。」


「そうじゃない! 何かあったらどうするんですか!」


「私が君を殴る。」


「殴っても過ぎ去った過去は変わりませんよぉ! せんせー、そんせー! ミラベルせんせー! 貴方の教え子どうにかしてー!」


「ミラベル教諭の専攻は錬金術、私は調薬。お門違い。」


「そんなに嫌がったら可哀想だろう? 何も取って食われるわけじゃないんだ。君がなにもしなければいい。」


「誰も彼も純情な少年を弄んで楽しいですか! こんな美人の先輩と一緒に過ごせって!? 何かあったらどうするんです! 副会長ー! 会長がー!」


「ちょっ、それは止めないか。私が怒られるんだ。何もなくても騒いでるだけで叱られるんだからバレたら大目玉だ。」


「ふーくーかーいー…………むぐぅう!!」


「しぃー!」


 会長は逃げるのをやめ口を抑えてきた。


「んぐっ……じゃあ見届けていってください。」


「……仕方あるまい。」


 そうして俺は落ち着くと一枚の紙が差し出された。見たところ手書きで今書いたようだ。


「…………会長、これいいんですか?」


「二年の零席は自由が許されてるから問題ない。」


 …………はぁ。


 条件は以下の通り。


 1、基本の生活場所をここにすること。(授業時間以外)

 2、博士の研究の手伝い(雑用)

 3、家事

 4、風呂介助


 とりあえず四つ目に線を引きたい。


「というか四つ目はなんなんですか?」


「髪の毛を洗うのが面倒くさい、洗ってほしい。ついでに温風の魔道具があるから髪を乾かしてほしい。その間私は好きなことが出来る。」


「裸体を見られることへの羞恥心とかないですか?」


「それで時間が出来るなら気にしない。」


「…………体は自分で洗ってそのあと水着でも着てくださいね。」


「私は気にしない。」


「俺が気にします。本当に頼みますよ?」


 ドライヤーあるのか……作ったのか? やっぱり凄いな。専攻は調薬なのに錬金術や魔道具制作まで手に掛ける。


「でも肝心の水着なんてない。」


「……じゃあバスタオルでいいです。」


「乾かないから使えない。」


「……会長!」


「あぁ……うん、用意しよう。」


「あとは……これって授業の関係で空いた時間もここに来ないとですか?」


「連続で二時間空いたなら。一時間なら来なくていい。放課後は事前に連絡しないなら早めに。」


「………………下着くらい自分で洗ってもらえます?」


「それはやる。それをやらせるのは私でも気が引ける。ただ干して。」


「……はい。……食事は?」


「火が通ってればいい。」


 ここで食べるんですね。


「食材は?」


「近くの厨房に話が通してあるから言えばくれると思う。」


「……たまに厨房で料理学んできていいですか?」


「それは向こうと交渉して。」


「掃除はしていいんですか?」


「掃除出来る?」


「資料とかは目を通せばそこにある理由はなんとなく分かると思いますけど完全じゃないです。なので整理したあと軽く確認してもらえますか?」


「どこにやるつもり?」


「その辺の棚を整理するか新しく収納作るかします。名前の付いてないものはラベル貼っていいですか?」


「面倒でやってないだけだから動かすならやってもらえたら助かる。」


「多分分からないものもあるので聞いていいですか?」


「もちろん、不安なら聞いて。曖昧な記憶でやられたら迷惑。」


「必要そうなものは勝手に買い足しても?」


「使用用途と値段と買った場所を詳しく書いて渡してくれれば私が払う。給料と別に君の生活費も請求してくれれば私が払う。」


「…………ちょっと待ってください。生活費別? それだとこれ金額合ってますか?」


 月額で大体日本円にして四十万くらいになる金貨四枚が提示されてるんですけど。しかもこの世界の生活に当てはめると二、三ヶ月は平気で生活できる額だ。


「書き間違えた? ……合ってるけど?」


 んん!? 合ってるの!? というか近いです!


「割のいいアルバイトだろう?」


「元々の金額って……。」


「大銀貨5枚だな。」


 5万円……でもそんなもんだよな? むしろこれでも結構貰えてる……。


「足りない?」


「多いですよ。何か危ないことするんですか?」


「この部屋が危ない。私の助手とか学ぶものは多いかもしれないけど確実に特殊技能職。最低限の知識は必要だし私が気に入らないと論外。だから技術手当てと危険手当て。話した感じだと言うこと聞いておけば死なないから。」


「そうでした、ここは爆弾だらけでした。」


「改めてそう思ったら少なく感じてきた。倍にしよう。」


「…………会長、いいんですかこれ?」


「いいんじゃないか? 本人が納得してるんだから。私としても定期的に報告して世話をしてくれる人材は欲しかったんだ。彼女が認めると言うことはそれだけ希少な知識を有しているといることだろう。私にはさっばりだ。」


「これ彼女の懐から出るんですよね……?」


「彼女には国から助成金が出ているからな。金銭を支払って特権を与えて学園に通ってもらってる(・・・・・・・・)んだ。」


「それだけじゃない。だからお金ならある。元々は貴族令嬢やってたし。」


「元でいいんですか……?」


「いいんです。もう一年以上帰ってない。あそこは息が詰まる。君も貴族なんてやめてこっちに来ればいいのに。」


「残念ですがそのつもりはありませんよ。」


「本当に残念、考えておいて。私も一人だと限界がある。手が足りない。それに私にはてんで魔法の才能ないから。」


「一応意識の端には置いておきます。……こんなものですかね。」


「なら名前書いて。それは君が持ってていい。自分の筆跡くらい分かる。私が何か契約内容外のこと指示したら言って。」


 俺は言われた通りさらさらーっとサインする。サインは筆記体で書くの変だと思う。


「緩い契約ですけどね。」


「本当、ゆるゆる。気付いてるのにサインしたのは何故?」


「そんな堅苦しい関係だと続かないでしょう? 半分友達として接しますから許してくださいね、先輩。」


「………………会長、友達ってなんでしたっけ?」


「ぷふっ……最後に笑わせられるとはな。そうだな……共に支えあえる仲間か?」


「……………………もしかしてこの子いい子なんですか?」


「私に聞かれても困る。」


「私を支えられる人っていなかったから……でももしかしたらしばらくしたら愛想尽かすかも……。」


「無いです。……あり得ないですよ、絶対に。」


 だって彼女を俺は知ってるから。彼女を主人公にすると選択肢次第で一人ぼっちの学園生活を送る。


 さらに卒業後も居座り続けバッドエンド。彼女は外に出さないといけない。


 彼女は研究が好きだ。そして家が嫌いだ。家事が苦手な描写もあって……ふと寂しそうな顔をする。


 彼女を主人公にすると鬼畜生産ゲーが始まるのだが魔王を倒すのには一人ではいけない。誰かと組まないと彼女は土俵にすら上がれない。


 そして……死ぬ瞬間と一人の時にボソッと言うのだ。私は何をしているのかと。彼女の物語は成長ではなく、過去を乗り越える物語だ。


 だから俺は笑いかける。


「先輩は凄い人です。………………色んな意味で。」


「最後のがなければ良い後輩だと言えたのだがなぁ。」


「あー……ここなら誰も来ないですよね。少し口調崩して良いですか?」


「いいぞ。」


「ありがとうございます、会長。……俺はいい後輩ではありませんよ。貴方達がいい先輩なんです。」


「……会長、あげませんからね。」


「気に入ったかい?」


「紹介してくださって感謝します。……後輩君、君は不思議な子だ。」


「そうですか?」


「そうだよ。私がこんなに時間を無駄にした。驚くべきこと。そうしてまでも君を手元に置きたい。こうしていたい。」


 先輩は何を思ったのか俺に抱きついてくる。とても柔らかいです……。


「……先輩、やめてください。」


「嫌だ。落ち着く。」


「これは……本当に珍しい。いや、言うほど私は彼女を知らないが。……どうだ、抱かれ心地は。」


「最高です……じゃなくていい匂い……でもなくて困ります。俺は青少年なんです。」


「ここが、落ち着く。……君はいい子だ。今日は気分がいい。…………友達……。」


 この人そんなフラグあったの? 友達呼びすると気に入られるフラグ。


「……ま……いっか。」


「私はもう行っていいかな?」


「お忙しい中ありがとうございました。」


「なに、気にするな。彼女を頼むぞ。」


「任せてください。真っ当な生活を送らせて見せます。」


「期待している。……なお我が校は兼部も可だ。生徒執行部は君を待っている。」


「あげません。」


「ここが暇でそっちに出来ることがあれば今日のお礼くらいはします。学園祭とかそちらは忙しいでしょう?」


「おぉ、臨時でもそこの増員はありがたい。何せ毎年人が足りないからな。必要になったら声をかけよう。」


「あげません。貸しません。」


「そうケチ臭いと嫌われるぞ。」


「後輩君、私が嫌い?」


「大好……おっと、嫌いじゃありません。」


 この世界の人間は皆大好きだからな。チャラ王子と暗黒腹商人は少し苦手だが嫌いではない。ただし特別好きでもない。


「随分と懐いたな……。君も大変だ。」


「色々諦めました。」


「頑張りたまえ。」


 会長は去った。そして俺と博士先輩だけが残される。


 ……さて!


「掃除します。先輩は奥で続きをどうぞ。」


「嫌だ。今は休憩中。」


「……誤解されますよ?」


「結婚する気ないから。誤解されようと社交界で悪口言われようと知らない。」


「……俺が悲しいですよ。そんな人見たら殴っちゃうかも。だから誤解されるようなことをこれ以上しないでください。」


「ここに人は来ない。」


「そうですけど。」


「…………襲いたい?」


「何言ってるんですか。俺だって怒りますよ。」


「何に対して?」


「先輩の自分に対して無頓着なところ。」


「君自身は侮辱されたとは思わないの?」


「…………俺の顔見えるでしょう?」


「熱い?」


「先輩に抱きつかれたら男はこうなるんですよ。先輩は美人なんです。……それに躊躇なくいいえと答えられるほど俺は大人じゃない。」


 好きな人は強いて言えばこの物語の登場人物だけれど。邪神とかじゃないよ? あれは屑だ。


「…………女に見えるの? 怪物とか、そう言うものじゃなく?」


「随分と可愛らしい怪物がいたものですね。こんな怪物なら大歓迎だ。」


「……君、きっとすけこましって人種だ。」


「俺そんなモテませんよ。」


「やけに手慣れてるけど?」


「これですか? 作法の先生に叩き込まれました。貴族風のも出来ますよ。」


「他の女の子に取られないでね。君は私の後輩君だから。」


「惚れました?」


「ごめんね、よくわかんないや。恋とか愛とか友情とか、証明できないものはわかんない。」


「先輩も大変な人ですねー。……このまま掃除しますからね。」


「どうぞー。」


 ……俺はまず散らかった下着を集め始めた。



 好物は表情薄い系です。


 もし宜しければ励みとなりますので評価や感想をいただけますと幸いです。誤字報告なども助かります。


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