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5 二日目


 登校二日目。初めての教室。しかし見慣れた光景だ。


 行動選択の背景と全く同じ見た目しているのだから当然だ。


 席は番号順。これはお馴染みの五十音順だ。


 おかしいよな、外国名なのにバリバリ日本語なんだぜ……? 世界的には部分的に近代的で不思議としか言いようがない。


 そんなわけで俺はロなので後ろの方だ。というかワとヲしか後ろにいないからな。ロロから始まる人とかがいれば別だが生憎とこのクラスにはいない。


「おはようございます、首席殿。席は最後尾なんですね。」


「おはようございます、次席殿。貴方の席はここから対角線に位置すると思いますよ。」


 この元首席君、席も首席位置だからね。間違いない。


 その点俺はすごい席だな、窓側最後尾とか。前世なら躊躇なく寝るのに。


「まだ開始まで時間があります。周囲に知り合いがおらず気まずいのですよ。」


「ではこれを機会にご交流を深められては?」


「ははは、私が知っているのは現在貴方くらいですよ。不用意に話しかけては…………でしょう?」


「左様ですか。それはそうとそこ邪魔ですよ。」


「おっと、これは失礼お嬢様。」


 …………いや、後ろの方の席なことは知ってたけどね?

 お隣ですか、メインヒロインちゃん。


「ご歓談中のところ失礼いたしました。」


「いえ、私の方こそ不注意でした。そうですね、私は戻るとしましょう。」


 奴は帰っていった。それでいい。彼は可能な限りメインヒロインちゃんと関わらないでほしい。


「……お久しぶりですとご挨拶すればよろしいでしょうか、首席様?」


「覚えておいででしたか。あれは互いに忘れましょう、不幸な事故です。」


「そうですね。では……はじめまして、ロレンス・セルヴァー様。」


「えぇ、はじめまして。お名前をお伺いしても?」


「私はマリアン・セルスターと申します。」


 うん、知ってるよ。セル揃いだ。セルだからってくっついたりしないんだけど。


 俺は声を潜めて話しかける。


「助かりました。」


「……何かしましたか?」


「さっきいた方、どうして話しかけてくるのかよく分からなくて。次席の方ですから恨まれてはいないかと気が気でないのです。」


「まあ。昨日会長様と自信ありげに話していらした方のお言葉とは思えませんね。」


「……あれはあれです。とにかくお戻りになられましたから助かったのです。ありがとうございました。」


「私としましては何かをしたわけではありませんからお気になさらず。」


 うん、メインヒロインちゃんだ。にこりともしない。


 彼女は通常の絵の差分が少ない。つまり表情が薄い。


 一応理由がある。その影響で強く言われると逆らえない。

 ただ逆らわないからといって嫌がりはするし逃げる。


 王子で彼女を攻略しようとすると会いすぎるとルート消えるからな。というか彼女と遭遇できなくなる。


 学園編後半から自分の意思を出し始めて……その過程も好きだ。そして一番ルートが多い。


 故に俺はメインヒロインだと思ってる。メインヒーローは魔王だと思ってる。操作キャラじゃないけど。


 ちなみに一番ルートの多い男は王子だったりする。あいつも成長するので操作キャラのメインヒーローはこいつだろう。


「……私が何か?」


「いえ、お気に障りましたら失礼しました。……入り口をご覧いただければ分かるかと。」


 うん、噂はするもんじゃない。出た、メインルート。

 金髪のサラサラヘアーに琥珀色の瞳。十人中十人が王子様と答えるだろう見た目をしている。


 何度失敗してあのイケメンに愛を囁かれたか分からない。俺は同じイケメンでも魔王に愛を囁きに行きたかったのに。


 あいつチャラいから……遭遇する度に口説かれるんだよ。


 しかもさ。席が隣だったりするんだ。俺は言いたい。

 お前のメインルートはこっちじゃない!


 …………会長と王子が正カプだと思ってる。断じてメインヒロインちゃんじゃない。彼女は魔王のものだ。


 とか考えているうちに来たよ、我らの王子。


「おや、そこに天使がいる。」


 想像していたより甘い声ェェ! まさかこの台詞を実際に聞くことになるとは。ボイス無かったからなぁ……。


「天から私に遣わされた貴方のお名前を教えてくださいませんか?」


 名前が入力できるよ! よかったね! 俺はデフォルト派だったよ! 家名は弄れないけどな!


「……お初にお目にかかります、殿下。私はセルスター男爵令嬢、マリアン・セルスターと申します。」


 立ってご挨拶できて偉い!


「私はハロルド・ロッテンバァム。ハロルドと呼んでくれると嬉しいです、マリアン嬢。」


 膝をつき手を取ってキス。ここCGで何回も見た。


 邪魔したいけどしたら不味いから邪魔しない。はやくー、不器用堅物婚約者ー! お宅の王子が暴走してるぞー!


「殿下、お時間が。」


 お、出た! 焦げ茶の髪にブラウンの瞳の体格の良い御仁! 次期公爵様で王子様のお目付け役!


「おや? もうそんな時間か。仕方ない、席につ……いや、少し用が出来たな。」


 知らない展開だ。つまり俺関係だと思う。


 王子は人一人挟んでこちらを向いた。


「ついでに挨拶をしておこうじゃないか。初めまして、首席殿。第四席の事など覚えてもいないかな?」


「初めまして、殿下。お目にかかることができ、恐悦至極に存じます。セルヴァー男爵家、ロレンス・セルヴァーと申します。」


 俺は立って礼を取る。ここ3年で一番頑張ったのはこの礼儀作法各種だと思う。


「楽にしてくれ、学園で身分の話をすることほど不粋なこともないだろう。」


「有り難う存じます。」


「……聞いていたかもしれないが私はハロルド・ロッテンバァム。殿下や家名ではなく名前で呼んでほしい。」


「畏まりました、ハロルド様。」


「……機会があればまた話すとしよう。今は時間もないことだしね。」


 きーんこーん。きーんこーん。時間切れ~。


 ちなみにこの殿下、敬語が嫌いである。俺の使ったようなのは大嫌いである。

 しかしそれに従い敬語をやめるとお付きの彼がキレる。なんとも面倒な奴なのだ。



 お、先生入ってきたな。


「みなさんこんにちわぁ。このクラスの担任のミラベルと申しますぅ。よろしくお願いしますねぇ。」


 この人はサブヒロインである。御歳28歳。作中珍しい癒しキャラ。


 涙ぼくろがセクシーでトランジスタグラマーな先生だ。多分開発の趣味だと思う。学生にしか見えない。


 この人は口説いたらいけない。エンドに入る。

 エンド名、私の結婚は止められない。先生が単独包丁片手に魔王を討ち取ってくる狂気のエンドだ。


 開始1日目から攻略可能。地雷である。


「誰が地雷ですかぁ……ってあら? 誰もお喋りしてませんねぇ。私の勘は正確なんですけどぉ……まぁいいですかぁ。」


 おぉ、こわ。アラサーの勘恐るべし。


「私はまだ28ですよぉ。……あぁ、分かりましたぁ。この中に失礼なこと考えてる人がいますねぇ? 誰ですかぁ?」


 俺は頭を空っぽにする。バレる。


 …………………………先生可愛いなぁ。


「照れますよぉ、首席くぅん。……後で職員室に来なさい。」


 バレた!? 何で!? 先生怖いよ! 声怖い!


「でわぁ、自己紹介してくださいねぇ。首席君からぁ。1時間で終わらせないと怒られるんですよぉ、今日授業ないのにぃ。」


 ご指名なので立つ。


「贅沢な日程の使い方ですよね。」


「一応新入生が少しは見学できる時間が必要ですからぁ、仕方ない面もありますけどねぇ。無駄口はいいので巻いてくださいぃ。」


「ロレンス・セルヴァーと申します。よろしくお願いします。」


「次ぃ、前の人ぉ。」


 そこから続々と自己紹介されていく。王子の前はまた別の主人公だ。


「ハウストルス・ローゼンシルト。よろしくお願いする。」


 うん、堅物な不器用婚約者(男)ね、知ってる。


 そしてもうしばらくして(男)の隣にいるのはツンデレな不器用婚約者(女)。


「セルヴェーラ・リリエルトンですわ。よろしくお願いいたします。」


 こちらは王子様の金髪よりは落ち着いた色合いでウェーブがかかっている。

 瞳は緑。そして何より婚約者様揃い踏みで表情が険しい!


 こちらもセル仲間だなぁ、名前だけど。


 はい、1年は全員名前出たね。あとは会長と博士と番人か。


 頑張らないとエンカウントすらしないんだけど会長とはエンカウント終わってるし番人は図書室に99%いるから会うのは難しくない。

 あくまで会うのは。話すのは難しい。


 特に難しいのは博士だけど……こればっかりはどうしようもない。調薬でいい成績取ればなんとかなるかもしれない。


「アソエル・ラプソンと申します。よろしくお願いいたします。」


 はい、おしまい。


「はい、お疲れさまですぅ。明日からは本格的に授業が始まりますので使用教室と教科などの確認と試験教科申請用紙の紛失に気を付けてくださいねぇ。それでは、時間になるまで問題を起こさず過ごしてくださいねぇ? ……ロレンス・セルヴァー、来なさい。」


 怖い。癒し系の先生が怖い。


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