表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/40

40 誕生日のふりをした慰労会


 本日は一話のみです。



 先輩から離れて二日目。11月3日。

 今日は土曜で休みだ。


 しかし執行部の朝は早い。朝礼をやって書類を処理して敷地内の見回り。

 俺の場合は土曜の午前中は忙しいが午後と明日は休みだ。


 そして色々忙しく終わってからたった一日来なかっただけなのに既に懐かしく感じる研究室へ入った。


「…………ファッ!?」


「これは……凄いな。」


 何が起こっていたか。


 散らかっては……いなかった。流石に昨日の今日でわざと散らかすことは無かったらしい。


 むしろ逆だ。何もなかった。まだ置いてあった私物……というかベッドの布団とか。


「捨てられたんですかね?」


「いや、違うだろうな。」


 会長は黙って進んでいって奥の部屋を覗く。俺もそれに倣ってその部屋を覗いた。


 そこには妖怪…………のような先輩が何やらぶつぶつ言いながら何かの実験をしていた。


 格好は割とちゃんとしていたが俺の布団を被り俺の私服を着ていた。着こなしていた。


 うん…………うん。流石の俺でもちょっと……ね?


「おい、プラトネス。生きているか?」


「…………会長? 生きてる。まだ大丈夫。あと二日くらいは大丈夫。寝ると悪夢を見るから寝ないようにしてるだけ。」


「パフォーマンスが落ちるぞ。」


「うん、落ちてる。やっぱりいることが普通になってたからいないとストレスが凄い。こうして少し落ち着いたけどこうでもしないと手が震えてた。」


「重症だな……。」


「うん。でもこんなんじゃだめだと思う。一人の頃より今のが何倍も辛い。精神的にもこんなに頼ってたなんて気付かなかった。」


「会長、やっぱ俺無理です。週二くらいで通ってもいいですか?」


「うむ……許可しよう。これは不味そうだ。」


「…………後輩君? どうして……。」


「今日は会長の誕生日ですよ? お祝いするって言ったじゃないですか。」


「でも嫌いって……。」


「言ってませんね、随分な悪夢を見たようで。何度か言ったかもしれませんが俺が先輩を嫌うことはありません。ただ、今の現状は引きます。」


「…………見ないで。今日はおめかししてないしシャワー浴びてない。恥ずかしいから。」


「それでも先輩は綺麗ですけどね。」


「いつでも最高に綺麗な私を見せたい。……というか引く?」


「はい、引きます。妖怪布団オバケになってますよ。」


「…………それは妖怪? それともおばけ?」


「どっちでもいいじゃないですか。プラトネス先輩。俺が言っていいのか分かりませんけど、今の俺は格好いい大人の女性が好きですよ? 背筋を伸ばして堂々としてる先輩はどうしたんですか?」


「…………………………本当に?」


「前世はあまり好みとかありませんでしたし今世もそれが異性の好みかは分かりませんけど格好いい人には憧れます。俺もそうなりたいと思います。一緒にいたいと思いますよ。」


「嘘じゃなく?」


「こんなことで嘘ついてどうするんですか。」


「…………ごめんね、目が覚めた。そっか、そうだ。誰でも良いわけじゃないんだ。それを早く言ってよ。」


「だってそれは好みであって繋ぎ止める理由にはなりませんから……。」


「そうだよね。うん、私もちょっと頭回ってなかった。そうだ、格好良くないと駄目なんだ。今の私は自分でも情けない。うん……目標が見えたね。」


「あ、戻った。」


 目に力が入った。もう心配いらないか?


「恥ずかしいから見ないで。あと……ちゃんと三ヶ月手伝ってていいよ。私も整理を付けたい。」


「はあ……分かりました。」


 なんかよく分かんないけど手伝えばいいのは分かった。何が彼女に活を入れたのかは一向に分からない。


「会長、誕生日おめでとう。」


「……ありがとう?」


「これ、あげる。」


「これは…………何だ?」


「それ? 試作品。どうするか迷ってたうちの一つ。会長なら使えると思うから使って。」


「何の試作品なんだ……。」


「身体強化薬。それは結局魔力を筋力に変えるだけの失敗作。やっぱり副作用無しでやるのは難しい。そのうち魔法強化を作りたいところ。」


「それは被検体と呼ぶのでは……?」


「これは大丈夫。それと会長くらいになると魔法も使える。いつもより魔力の減りが早いなーって思うくらいだと思う。」


「……使うかどうかは分からないがいただいておこう。」


「この間の時みたいな時に校舎の上を走ってこられる。」


「そこまで強化されるのか……。」


「される。けど一日一本までで翌日の筋肉痛は覚悟して。体が急激な運動に耐えられないから。その辺は改良点。それと上がった身体能力を使いこなす本人の運動センスが必要……だけど会長には関係ないと思う。」


「なんか先輩の後で恐縮ですけどこれ差し上げます。」


 俺は紙袋を差し出した。


「中は………………よし、ありがたくいただこう。」


 ラッピングしてあるから確認出来てないだろうに……。


「確認してもいいですよ?」


「いや、ありがとう。中身は何となく察した。嬉しいがここで出すのも恥ずかしい。」


 なるほど。


「……出遅れましたねぇ。私は相も変わらずハンカチですよぉ。」


「ありがとうございます。」


 いつからいたんだろう、先生。


「それはお化けか妖怪かってところですねぇ。」


「結構初めからじゃないですか。」


「それにしても重症ですねぇ。」


「私、後輩君に依存してた。」


「していましたねぇ。正直気持ちは分かりますけどぉ。良くないですよねぇ、ロレンス君。」


「俺ですか?」


「良くないですよぉ。なんでもやりすぎなんですぅ。」


「仕事ですから。」


「仕事なら何でもするんですかぁ?」


「します。」


「本当にぃ?」


「倫理観に沿うものなら。」


「私は倫理観で生きてない。倫理観とか言ってると何もできない。」


 ……先輩ってマッドなサイエンティストだっけ?


「俺は父さんに顔向けできないことは出来ませんので内容によります。」


「三股は良いんですかぁ?」


「良いんです。損させなければ良いんです。きっと母さんも拳骨一つで許してくれるはずです。」


「殴られるんですねぇ。」


「殴られることはやってます。」


「後輩君、ちゃんと寝た?」


「寝ました寝ました。次は恐らく来年春までは余裕がありますから気が楽ですね。」


「次は何があるの?」


「入学式で面倒になってGWで騒がしくなって夏休み前に魔族が現れます。」


「一気に来るね。」


「今回のは導入なんですよ。言い換えるなら威力偵察です。魔族は次の尖兵ってところですね。」


「なら入学式は……あ、そういうこと。隣国の姫が来るの?」


「そうです。GWは街でちょっとした抗争が起こります。先輩達には無関係ですね。」


「後輩君は関係あるの?」


「買い物行きますからね。」


 めっちゃ関係あると思います。アソエルの関わるイベントなんですよ。

 妹さんは復調しているしアソエルの女性関係も無いから微妙だけれど多分関係すると思う。


 きっと俺が何かしなくても余裕で対処するのだろうがいざというとき一人で背負ってしまわないように見張っておかないと。


 もし妹さんが人質に取られたら自分の商会ですら手放してしまいかねない。

 大丈夫だったとしても心配は心配だ。


「なら会長達とのデートは春までに済ませて。」


「……見てないところで良いんですか?」


「不安はある。けど冷静に考えてみたら逃がすつもりが全くない。後輩君の格好いいは分からないけどきっと自信に満ちた姿が好きなんだろうから私は変わらず迫り続ければいい。今度はゆっくり執拗に時間をかけて。」


「プラトネス。あまりやり過ぎるなよ?」


「勿論。いない間に作戦考える。……でもご飯どうしよう?」


「週二で通って保存食を用意していきます。少し味気なくなってしまいますが先輩がしょっちゅう外出すると危ないです。」


「それには及びませんよぉ? 仕方ありませんから夜に頑張って来ますよぉ。朝食も用意していきますぅ。」


「良いんですか?」


「今までなら拒絶されて世話を焼けませんでしたけどぉ。それさえないなら構いませんよぉ? 元々心配ではあったんですよねぇ。」


 流石先生、そこに痺れる憧れる。


「なら……先輩をお願いします。」


「来れない時は貴方が来るんですよぉ? ……それにしてもデートですかぁ。用意しないとですねぇ。」


「用意と言えば今日はご馳走ですね。二人で頑張りましょう。」


「そうですねぇ。」


 ケーキは無いけどね。それは先生の誕生日に前日から作るよ。

 年越しと全員分の誕生日を兼ねて、冬休みだから厨房も借りてね。


 冬休みは向こう帰って年越ししてもいいけどそれは三人の意見を聞こう。会長なんかは家族と過ごすって言っていたからこちらで過ごすことになるかもしれない。


 もし早めのお祝いになったらごめんなさい、先生。

 でもここの厨房なら設備いいし何よりプロがいるからお菓子作りのプロに教えを願えるかもしれない。なんなら一緒に作ってもらえるかも。


 ……秘密ですよ? 特に先輩には。秘密で豪華にお祝いして喜ばせたいんです。会長へは都合もありますからお任せします。




 その日は四人でちょっとだけご馳走を食べてお祝いしながら学園祭の互いの労をねぎらった。



 お疲れ様でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ