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39 学園祭のその後


 本日三話、ラストです。



 ん……んー…………朝御飯作らない、むに。……むに?


 俺は寝ぼけた眼で感触の元を探ると不思議な感覚を伝える先輩がいた。……全裸で。

 自分を確認すると……またまた全裸だった。


 …………………………え、これってもしかして…………やっちゃった?


 おかしい、先輩に言葉をかけられた後の記憶がない。


 まさか…………盛られたか?


 おいおいおいおい、不味いって!


「…………あぁ。おはよう、こうはいくん。さくやははげしかったね。」


「…………俺、腹切って詫びます。」


「……冗談だから切らないでね。」


「……何で全裸なんですか?」


「えっとね……私に抱かれて安心したのか後輩君は糸が切れるように寝ちゃってね。なにしても起きないから三人できゃーきゃー言いながら後輩君の服を脱がして体拭いて寝かせたの。私は……ほら、あそこに足跡がある。」


 …………先輩の下着……。


「………………ちょっと待った。何故先輩は顔を赤らめてるんですか?」


「……………………聞きたい?」


「聞かないと不味いでしょう。」


「えっと……脱がせて拭いたのは良いんだけどね? 刺激したからか……その……おっきくなってて。凄くおっきくて三人で興奮しながら眺めてた。私の顔くらいあった。あれは凄い。ちょっと教諭とか目がやばかった。私も襲っちゃおっかなぁって思ったけど全員飲み込んだ。偉い?」


「人の大事な場所を心行くまで隅々までじっくりと観察したと。……変態。」


「言われても仕方ないと思う。昨夜は全員変態っぽかった。ちゃんとなにもしなかった。教諭とかは寝てるんだからバレないとか言ってたけど会長が叩いて止めてた。でもその目は釘付けだった。私も吸い込まれそうだったけど止められた。早いところ布団で封印した。」


「…………どこ見てんですか。」


「食べたい。」


「今朝ごはん作りますからねー。」


「こっちがいい。またおっきくなってる。」


 …………なるほど? 先輩が少し息を荒くし、潤んだ瞳で舌舐めずりをする。

 男女共に興奮したら大差ない……っと。


 こういうときは父さんを女装させて……。


「……ちっちゃくなった。」


「慣れです。」


「ほら、見て? 興奮して?」


「…………今日の先輩おかしいですよ?」


「うん、そんな気はしてる。だって後輩君がいなくなる様な気がするから。だから多分異常に興奮してる。今すぐに求められたい。」


「前先生が似たようなことを言ってましたね。」


「…………ね? 甘えて? それだけで私は満たされる。ちゃんと問題にならないようにするから、ね? お願い。」


 背中に吸い付くような柔らかい感覚が……。これは不味いな。


「おは………………失礼した。」


「会長、逃げないで。」


「…………お取り込み……だよな? 学生がいかんぞ?」


「先輩が壊れました。」


「…………あー、なるほど。昨夜は異常に興奮してたからな。」


「人の大事な部分を凝視したらしいですね?」


「それは…………なんだ、すまない。つい好奇心に駈られて。大丈夫、私はなにもしていない。ところでプラトネス。そんな迫り方だと誰にでも迫るように見えるぞ。」


「そんなこと……。」


「本当に無いかな? 今の自分を客観視してみろ。」


「………………走ってくる。」


「それがいい。まず身支度を整えてこい。」


 すごい、一発で退散した……。


「お前も応えてやれば良いんじゃないか?」


「若い男の性欲を舐めないでください。一度やったら毎日複数回やりますよ。」


「………………あのだな。私から振っておいて申し訳ないのだが想像してしまうからやめてくれ。」


「あー、はい。すいませんでした。俺もちょっとヤバくて。あと五分遅かったら不味かったです。助かりました。」


「昨日の詳細と様子を見るのを兼ねてな。それと嫌な予感もした。的中だな。」


「……助かりました。」


「あぁ。……ところで服を着てくれないか? 私も恥ずかしくなってくる。」


 俺はとりあえずヤバイ感じの先輩をどうにかし、どたばたした朝が始まった。




「申し訳なかった。ムラムラしてた。」


「俺もすいません。」


 朝食を食べながら説明をし、朝食が終わってから先輩はこうやって謝ってきた。


「誰でも良いと分かったら私を求めてほしくて暴走した。申し訳ない。」


「誰でも良いわけじゃないですよ?」


「…………うんうん、ちがう。私と貴方では温度と方向が違う。貴方は恋愛が無くても大丈夫な人。でも私は貴方じゃなければ駄目。もうどうしようもないくらい好きなのに貴方は私を受け入れるだけ。求めてはくれない。」


「…………我慢してるんですよ?」


「しないで。求めて。どうしようもないくらい愛して。」


 …………依存してんなぁ。これは不味いぞ?


「……手遅れか。」


「そうかもです。」


「…………プラトネス。君は一度ロレンスから離れろ。」


「………………なんで? なんでそんなこと言うの? そんなことしたら後輩君が取られちゃう。もう私を見てくれなくなる。絶対に嫌。」


「その不安は分からないでもない。まあ多分もう何人か増えるんだろうな。でも相手を自分に依存させようとするな。」


「だって……。」


「我慢するんじゃなかったのか?」


「でも……。」


「…………自分の知らないロレンスを見て不安になったんだろう? まだ距離を感じて不安になったんだろう? 一人で抱え込んでしまって、頼ってくれないから不安になったんだろう? 私だって分からなくもない。……が、私達には価値がある。感情にだけ振り回されるな。自分達が利益を提供出来るうちは絶対に捨てられない。」


「…………ちょっと? そんな人を女誑しみたいに……。」


「事実だろう? 君は私達をそういう意味で求めてはくれない。いつか捨てられるかもしれない。それを否定できるのか?」


「それは…………。」


「出来ないだろう。だが私は君の誠実さを多少なりと知っているつもりだ。私は君を信じている。そして捨てさせない自信がある。……プラトネス、君に……君の兄に彼はどうすると言った? 彼はやるぞ。そしてそれをするだけの感情を私達に向けている。自分の価値を下げるな。前を向いて胸を張れ。その方が綺麗だぞ。」


「………………はい、会長。」


 ゆりゆりしてる。綺麗だなー。


「大丈夫。もし捨てたら二人で後悔させてやろう。私達二人ならばロレンスくらい簡単に後悔させられるさ。」


「捨てるなんてあり得ませんけどね。」


「何があっても、もし私達が心から望んでも絶対に離さない覚悟はあるか?」


「………………。」


「な? 私達が本気で望めば君は手を離してしまう。それが私達には恐ろしいんだ。」


「……まだそんな偉くありません。」


「分かってる、君なりの誠意なのだろう。事あるごとに牽制してるのも分かっているぞ。私と教諭はそれだけで実感できる。ただ……プラトネスは違うのだろうな。」


「……人の心は分からない。もっと分かりやすくしてほしい。」


「とのことだ。」


「……好きだとか、愛してるだとか、俺には君がいないとだとか。言うのは簡単です。離れたくない、一緒にいたい……口だけなら言えます。…………でも、言いたくないんです。本当に言うべき時に言葉が軽くなります。本気だからこそ簡単に言いたくありません。」


「とは言えたまには言われたいものだな。」


「…………まだ言えません。全部清算してからじゃないと……。」


「……だ、そうだぞ。何も考えてないから我慢してるわけでもないだろう。少し落ち着け。落ち着けないなら距離を取れ。でないと好意がある故に一緒にいられなくなってしまう。……分かるな?」


「…………好きに潰されそう。」


「そういうことだ。冷めると言うと言い方は悪いが落ち着くと良い。私の見初めた男はそう簡単に逃げるような男じゃないさ。それが出来るならこの学園にはいないからな。」


「…………分かった。私も冷静じゃなかった。最近後輩君が他の人と仲良くしてると嫌な気持ちになって……後輩君が楽しそうにしてるのは良いことなのに喜べなくて……それがまた嫌で……。」


「……先輩は子供ですねぇ。」


「それどういうこと?」


「俺と先輩、五ヶ月しか変わらないんですよ? 先輩の生まれる時期が少し遅ければ同級生です。精神的なものなんて大差ないんですよ。」


「…………つまり?」


「先輩は子供っぽいところがあるんですよ。……そこも可愛いんですけど。そもそも褒めたら照れて怒るの先輩なのに。またラベンダー談義したいんですか?」


「…………そういえばそんなこともあった。」


「言葉では伝えませんよ。それを伝えられる男じゃありません。まだ釣り合いませんし資格もありません。待ってくれるって言ったじゃないですか。先輩が辛いなら俺は……。……いえ、これもまた不安にさせる一因なのかもしれないですね。すいません。」


「…………一言、私の望む言葉をくれれば私は満足するのに。」


「貴方と結婚したいから私は貴方に不必要な嘘は付きたくありません。」


「それを普段から言えば良い。」


「……照れ臭いですし先輩も照れるじゃないですか。」 


「…………本当に結婚してくれるの? 私面倒くさいよ?」


「その何倍も魅力的ですけどね。」


「……どう我慢するのがいいんだろう? 後輩君を見たら冷静でいられない。私、もっと理性的な人間だと思ってた。こんなに失いたくないと思うのは初めてで、分からない。」


「一番良いのは私達が身を引くことなんだろうがな。今更そんなつもりもない。陥れるつもりはないが脱落するなら止めはしない。私一人でだってロレンスの隣に立つ。」


「……いじわる。」


「そんなことを言われてもな? 気持ちの整理は自分で付けるしかない。ロレンスも。」


「……本当に昨日はすいませんでした。」


「……ねぇ、恋愛マスターの会長。」


「…………その称号はやめてくれないか?」


「ねぇ、恋愛マスターのセイラ会長?」


「……なんだ?」


「どうすればいいと思う?」


「そうだな……とりあえず距離を取ってみたらどうだ?」


「仕事……。」


「ロレンス。三ヶ月の休暇だ。」


 ヴェッ!


 バイト先探さないと……。


「その三ヶ月はうちに来なさい。」


「うぇっ!?」


「なんだかんだ言ってしばらく困らんだろう。来年、再来年や進路のこともあることだし一時こちらに所属して仕事をするといい。」


「…………後輩君絶ち?」


「その方が互いに頭が冷えるだろう?」


「…………ちゃっかり自分の取り分を増やしてる。」


「普通に人手が足りない。今回手伝ってくれた者はそのまま継続してくれるだろうが今の三年が抜けた穴は埋まらないぞ。来年君が会長をやるにしろロレンスがやるにしろ他の誰かがやるにしろ……後継は育てないとな。既に見込みのある人間は誘い込んでいる。」


「……ならそういう考えはないの?」


「無いとは言わんな。ただし仕事が優先だ。そもそも人も多い。まだ公表しないのだからそう長い間話せるわけでもないさ。」


「……分かった。でも戻ってこなかったら恨むから。」


「はいはい。」


 そんなわけで俺の一年生後半の予定は微妙に蚊帳の外な状態で決定されたのだった。



 お疲れさまでした。


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