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38 学園祭一年目 その2


 本日三話、二話目です。



 ローテ四回目。男所帯で後先考えず遊ぶだけのパート。

 本命(・・)だ。


 事前に割り振りは連絡、誘導、時間稼ぎ、良い感じにやってくれと分かれている。

 内訳はハウストルス、王子様、俺、アソエルだ。


 アソエルだけ適当に振ってる気がするがこれはまず誘導、俺がヤバそうだったら援護という難しい立場だ。


 入るなら外縁部に限られる。だからその辺をブラブラしながら人の声に耳を傾ける作業だ。


「顔が怖いぞ、ロレンス。少し力を抜け。そんな調子ではもし何か起こってもすぐに動けないぞ。」


「……大丈夫ですよ。あと私の顔は怖くありません。ただの寝不足です。」


「なんだ、寝てないのか? 寝てくるか?」


「殿下までプラトネス先輩と同じことを仰るのですね。ご心配くださりありがとうございます。しかし大丈夫ですよ、学園祭は本日限りなのですから。明日纏めて休みます。」


「…………そうか。不粋なことを聞いたな、すまない。」


 …………あれ? あいつなんでここにいる?

 あいつの担当はここじゃない……。


「…………殿下。」


「あぁ、不自然だな。少し様子を見てみるか。」


 俺達は……例の転生してきた奴を尾行する。トイレもこっちじゃないし一人で行くには明らかに……。


「………………ぁ……。」


「どうかしたか?」


「あそこに倒れてるの、今回の目標です……。」


「なっ!? 急げ!」


 俺達はパニックにしないように静かに行動を開始する。

 しかし人混みが中々通れない。殿下効果が切れている。近すぎて顔を認識してないんだ。


 そうやってもたもたしているうちに奴は……鍵の言葉を発した。

 それはやけにはっきりと俺の耳に届く。


「ようこそ、お客様。楽しんでいってくださいね。」


 招き入れる言葉(・・・・・・・)


 その瞬間、倒れていた存在は外套を脱いでその外見を露にする。

 それはボサボサの髪にボロボロの服、血色の悪い顔。


 最初の敵、ヴァンパイア。奴は低位だが噛んで相手を吸血鬼にする能力だけ持っている!

 日光で灰になれよこの野郎!


 奴を招き入れた大馬鹿者は動かない。あいつ食われる気か!


「アクア!」


 俺は一番付き合いの長い相棒に全てを投げる。


 アクアは何を思ったかブリーズを動かし俺を空へ打ち上げた。


 というか現地までぶっ飛ばした。


 俺はアクアに時間稼ぎを頼んだつもりだったので目を白黒させるがすぐに体勢を整え突っ込んでいく。


 ヴァンパイアの牙が男の首に噛みつこうとして……させるかよ!


 俺は鞘のまま剣をぶん投げてヴァンパイアの顔面にぶつける。それで怯んだ瞬間に俺は現地に着地した。

 数メートルの高さから落ちたが頑丈な体は受け身を取れば怪我なく動いてくれる。


 俺の第一声は自然と口から飛び出た。


「お前は馬鹿か!?」


「な…………なんで……。」


「襲われて動かないアホがどこにいる! 危ないから避難してろ!」


「なんっ……なんだよお前は!」


「こっちの台詞だわ! あれどう見ても普通の人間じゃねぇだろうが! 死にたいのかお前は!」


「ふざけるな!」


「お前がふざけるんじゃない! アソエル! こいつ縛ってくれ! 後でぶん殴る!」


 俺は叫びながら投擲した剣を素早く回収して構える。


「おい! 一応聞くがお前は何者だ!」


「グウゥゥゥゥ…………コロス、コロス、ニンゲン、オソウ。」


「やっぱ話通じないか……。」


 俺が牽制しているうちに優秀な同級生達は一人は男を縛り上げて、一人はお前人間かって聞きたくなるような機動で連絡を取りに走り、一人はパニックを起こさないように避難誘導をしている。


「ウゥゥウゥゥゥゥゥ。」


 相手は唸ってばかりで行動しない。警戒している……?


 それならそれで好都合。俺は刺激しないように、尚且つ後ろに行かせないように。アクア達にも手伝ってもらって穴を潰す。


 しばらくはそうやって牽制しあっていたが痺れを切らしたのか吸血鬼は俺に襲い掛かってきた。


 俺はそれを捌いていく。力は強いが捌けない程じゃない。攻撃も単調だし……弱いな。


 俺一人でいけるか……? いや、増援を待とう。俺の慢心で死ぬのは俺じゃない。


「グォウ!」


 全身を使った四足獣のような牙での攻撃。今更それを受ける俺じゃない。


「…………強い。」


「俺はっ強くないっですよっ!」


 だから増援を待っている。会長なら既に灰にしているだろう。


 改造されて日光と増殖の能力が改善され付与された完全な鉄砲玉。こちらの威力偵察を兼ねた魔王と言うより邪神の尖兵。


 弱いが一度増殖を許したら雪だるま式だ。数がとことん増えていく。


 だから俺は慎重に増援を待つ。ミスはすなわち人類の滅亡となりかねないから。


「待たせた……が、これに出番はあるか?」


「会長は!?」


「今は執行部を指揮して立ち入り禁止区画を作っている。」


「避難状況は!」


「9割ってところだな。」


「了解!」


 ならあと1割耐えれば良い。時間的にはもう数分で完了するだろう。

 開始から10分前後、結果は上々だ。


「アソエル、みのむしどこやった!?」


「ここにいますよ。」


「よぉーし、そのまま大人しくしておけ馬鹿者! もうすぐぶん殴ってやる!」


 そうやって話ながら攻撃をいなしていく。なんのために調整してきたと思ってるんだこの野郎。


 俺は誰も泣かせないためにここにいんだよ。


 暫くはそうやっていなしていたのだが奴の動きが突然変わった。


 俺にフェイントをかけてきて後ろを狙われ、後ろに抜かれてしまった。これを慢心と呼ばずなんと呼ぶ!


 俺は背を向けたヴァンパイアの足を潰すよう剣を振るう。だが俺の攻撃は少しは改善されたとは言え相変わらずへっぽこだ。すんでで避けられた。


 無理に攻撃したものだから投擲するのに体勢が間に合わない……クソッ!


「まったくもぉ、しょうがない人ですねぇ。大見得切ってそれなんですからぁ。」


「……先生! 助かりました!」


 俺とアソエル達の中心近くに奴が辿り着くや否や、空からちっこく逞しい背中が落ちてきて奴の首をはねた。


「はいはい、助けましたぁ。先生は良いところで登場ですよぉ。まあ放置してもどうにでもなったでしょうけどねぇ。」


「でもどこから……。」


「あそこですねぇ。」


 ………………五階から落っこってきたのね。よくそれで無事だね? 流石先生。


「首はねちゃいましたけどこれ生きてますかねぇ? 私は燃やせませんよぉ?」


「……少し遅かったな。せめて燃やすのは請け負おう。」


「………………はぁぁぁぁ。」


 会長が来て俺は気が抜けたからか腰が抜けた。この二人の圧倒的安心感よ。


 会長はそちらを一瞥すると灰も残さず燃やし尽くした。

 火力高いなぁ……まあ首はねた時点で死んでるんだけどね。そいつに再生能力とかないから。


「お疲れ。ところでそこの拘束されている男は?」


「……あー、そうでした。一瞬忘れてましたよ。」


 俺は力の抜けた体を無理矢理動かしてみのむしの元へ向かう。


「おい、クソ野郎。」


「…………なんだよ、クズ。」


「お前、何をした?」


「どうでもいいだろ。」


「いや、倒れてる存在が急に動き出すのはおかしいだろう。」


「…………知ってるくせに白々しい。」


 俺は先生に目配せして防音してもらう。先生も正しく意図を受け取ってくれたのか防音が張られる。


「とりあえず、殴られろ。オラッ!」


 おぉー、良いの入ったな。


「尚更悪い。お前、自分が何をしたか分かってるのか? お前は鬼か? 悪魔か?」


「…………何が悪いって言うんだよ!? どうせこの世界は虚構だ! 虚構なんだよ!!」


 俺はもう一発殴ろうとして……やめた。男はやけに切実な顔で泣いていたのだ。

 それは痛みとか罪悪感で泣いてるわけじゃない。端から見ても深い悲しみに包まれている。


「作り物じゃなかったら……あれが本当なら!! あいつが死んじまうんだよ! あいつが! あいつが何をしたって言うんだよ……!」


「…………気の毒だがきっとそいつは……。」


「いいや、絶対生きてる! あいつはどんな状況でも前向きで、悪運の強い奴だ! 起きたらまた踏み切りで肩組みながら挨拶出来んだよ!! あんな良い奴が事故なんかで死ぬかよ!! 俺だってこうして意識があるんだ、死んでるはずがない!」


 肩組みながら挨拶……ね。


「女か?」


「男だよ! すげぇ……すげぇ良い奴なんだ! 自分は事故で両親無くしてんのに人の家庭の相談なんかに乗りやがってよ! あんな良い奴他にいねぇよ! なのに轢かれて体ぐちゃぐちゃになって死ぬとかねぇだろ!? だから生きてんだよ! 終わったら起きられるんだ!! 邪魔すんじゃえねぇよぉぉぉ!!!!」


 俺は黙って頭突きした。5回くらい。


「目ぇ覚めたかよ、馬鹿野郎。」


「何を! なに…………を………………?」


「そーやってすぐウダウダすんの止めろよ。俺は死んだ。お前も死んだ。それは変わんねぇだろ。というか可憐が巻き込まれてないって喜んでやれよ、馬鹿。」


「お前……お前、トモか? トモなのか!?」


「俺がトモかどうかは知らんがお前は多分茂だと分かった。」


「俺も自分の名前は覚えてないが……え、マジか?」


「担任の名前は中山だったな。」


「…………………………お前は……やっぱり、死んだのか?」


「多分? 死んだんじゃねぇの? 悪いな、気分悪いもの見せて。勘弁な。」


「………………あ……あぁぁ……あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「おー、よしよし。馬鹿野郎、やっと目が覚めたか。とりあえず泣き止んだら土下座な。日本人の本気見せてやれ。一緒に謝ってやるから。」


「トモ……トモォォ!」


「俺はロレンスだ馬鹿野郎。ちゃんと今世では前世の分も親孝行すんだから間違えるな。」


「お前、お前今度は親御さんいるのか!?」


「いるぞ、父親だけな。母親は俺を産んだときに死んだんだって。」


「それは……。」


「あーあー、そう暗くなるな。お前が落ち込んでどうする。」


 そこまではなんとか話になったがあとはもう言葉になってなかった。


 俺も世界を跨いだ旧友との再会に少しだけ喜んだ。


「………………すまん、落ち着いた。」


「よし、ならすることあんな?」


「……殿下、並びにお集まりの皆様。大変ご迷惑をお掛けしました。」


「すいませんでした、身内の不始末です。こいつは後でボコしておくので今回は見逃してもらえませんか。」


「…………ロレンス。お前も悪かった。その……。」


「気にすんな。実害は出てない。」


「…………とりあえず、いい?」


「どうぞ、先輩。」


「なんだかあまり責めると悪者にされそうだから一つだけ。」


 先輩は歩いてきて未だみのむしの男を蹴る。名前なんだっけなぁ……。


「これで許してあげる。」


「では私も。」


 会長のは凄く痛そう……。


「…………いや、蹴られるだけのことはやった自覚はあるんだが。ロレンス、お前本当何したんだ?」


「色々。」


「次、私達をゲームのキャラとして見たらこんなものじゃすまないから。後輩君が凄く嬉しそうだから今回は許す。」


「…………すいませんでした。」


「すいません。」


「君には言ってない。でもこの芋虫は不愉快。」


「違いはないと思うんですけど……。」


「後輩君を散々いじめた。嫌うのに十分。」


「…………記憶を悪用してとんでもないことをしてる悪人だと思ってました。全面的に俺が悪いです。許してくれなんて虫の良いこと言えませんけど……。」


「だから良いって、実害無いし。」


「………………お前、昔っからそうだよな。自分一人で抱え込んで。」


「まー長男だから?」


「通じねぇよ、そんなネタ。」


「これからは心を入れ替えるんだぞ。」


「………………でもなぜこの顔にお前が好かれてるのかは聞きたい。ほわい?」


「知らん。本人に聞いてくれ。」


「ちょっと実感が伴うと恐れ多くて……。」


「馬鹿め。」


「ちゃっかり全員揃ってるよな。」


「全員は揃ってないだろ?」


 遅れて何人か来たけど番人さんはいない。


「さっき窓からチラッと眺めてる姿が見えた。」


「マジか。」


「…………あー、いいだろうか?」


「いいぞ、ハロルド。」


 男がぎょっとする。そりゃそーだ。


「つまり……前世の友人? でいいのか?」


「幼馴染みの親友だよ。ちょっと方法は間違ったが友人の為に泣ける良い奴なんだ。何度も助けられた。」


「…………今回のことは君に免じて不問にしよう。何より君のそんな嬉しそうな顔は初めて見たからな。」


「そんなか?」


「我が子を前にした母親のようだった。」


「どんな形容詞だよ。……ところでお前の名前なんだっけ?」


「……セドリック・ハウンスポンド。」


「じゃあセドリック。次やったらただじゃおかねぇからな。お前には生きてる人間が見えないか?」


「………………悪い、血迷ってた。何せお前が目の前で肉塊になったのが見えたもんだからどうしても夢だと思いたくてな。認められなかったんだ。だからゲームだと思い込もうと思って…………終わったら起きられると思って、こんなことした。本当に申し訳ないと思ってる。」


「…………ちょっとだけ同情する。ちょっとだけ。でもそれで人類が滅べば良いとか思われても困る。」


「もう思いません。ロレンスに殺されます。……さっき言われてこんなことを言うのは申し訳ないんですけどこいつ、本当にこの世界が好きで。俺が勧めたのに俺より詳しくて。」


「殆ど攻略見てないからお前のが詳しいだろ?」


「攻略にすら乗ってない情報を平然と披露する歩く攻略サイトが何を言う。」


「………………あの、いいですか?」


「はい、どうぞ。」


「貴方も……その…………スリーサイズ……を、覚えていらっしゃるのですか?」


「……お前、そんなん覚えてたのかよ。」


「全員分覚えてる。先生は知らない。」


「引くわー。そんなん覚えてるのなんて世界中探してもこいつくらいです。」


「…………ちょっと、ロレンスさん?」


「いやぁー……全員知ってるとは言ってませんよ? 数字とか覚えにくいですからね。好物とかも覚えにくいですし。俺はその辺暗記してるので……。」


「……忘れてくれたんですよね?」


「覚えてないなー、いくつだったかなぁー? なぶっ。」


 早い、早すぎる。俺まだ7とすら言ってないのに。

 躊躇なく顎狙ってきたぞこの人。

 それに君70無いでしょ……?


「忘れるまで殴ります。」


「やめてください、死んでしまいます。」


「乙女の秘密を知る男は生かしておきません。」


「ひぃっ!?」


「……仲良いなぁ。」


「蹴るぞお前! あっぶ、あぶないって、マジで! その拳収めて!」


「貴方を殺して私も……。」


「早まらないでー!?」


「…………仲良いなぁ。」


「……マリアン、気持ちは分かりますけど落ち着いて。」


「だって暴露しようとしましたよこの男。」


「してないです。なんだったっけなーと言おうとしただけです。」


「…………本当ですね? 嘘だった時はただじゃおきません。」


「覚えてないです、はい。」


「大丈夫、まだ成長するから。」


「……しますでしょうか?」


 メインヒロインマリアンちゃん。通称絶壁。


「…………だ、れ、が、絶壁ですって?」


「なんのことですか?」


「………………もうこれは嫁に貰っていただくしか……。」


「もっと自分を大切にしてー。」


「これは私の。」


「…………お前、年下好きじゃなかったか?」


「お前は何故そう判断した。」


「可憐との夫婦漫才。」


「誰が夫婦だ誰が。あれは足癖の悪い妹だ。」


「…………何でハーレム作ってんだ?」


「ちゅ、ちゅくってにゃいし!」


「わざとだろ。一体誰なんだ?」


「当ててみて。」


「ミネリクト先輩とセルスター嬢。」


「私は違いますよ? 私のは冗談です。まあ変な幾つも年上の方の元へ嫁がされるよりも何十倍もマシなので流されてくれないかと思いながら言ってるだけです。」


「王子様ならそこにいるよ。」


「殿下は恐れ多いでしょう。」


 でも君仲良いよね? ルート決定は来年冬だしまだお互い異性として意識する程度でしょうよ。


「…………じゃあ、誰が……。」


「先輩、会長、先生。」


「…………………………マジで?」


「マジ。」


「……先生って、ミラベル教諭だよな? あの包丁の……。」


「それ有名なんですかぁ?」


「有名ですね。先生は何者だって事で考察班……言動などから推測する人達がいたくらいですから。結構人気高いんですよ。」


「…………複雑ですねぇ。」


「先生と会いたいが為にやる人々を通称生徒と呼びます。ロレンスは熱狂的な生徒でした。」


「失礼な。先生には癒されてただけでちゃんと別のこともやってた。」


「………………私は、何かないのか?」


「強いって言ってました。」


「私は……。」


「めん……いや、何にも言ってませんでしたね。」


「後輩君、私面倒?」


「あー……ゲームとしては大変でしたよ? でも出会ってから先輩を面倒だなんて思ったことは一度もありません。」


「……そっか、お前も頑張ったのか。」


「お前はおサボりだな。」


「そりゃあ現実逃避してたからな……目が覚めた。致命的なことになる前に止めてくれてありがとう。そして改めてごめん。」


「おうよ。知ったからにはお前も邪神討伐隊の一員にするから気張れよ。」


「………………邪神? なんだそれ?」


「あるだろ、邪神ルート。」


「いや…………俺は知らないな。またお前は変なもの見つけてたのか。」


「邪神倒して……あぁ、魔王ルートなら分かるか?」


「…………分からん。」


「えぇ……何で知らないの?」


「知らないものは知らない。」


「……trueは?」


「ハロ×マリ。」


「邪教徒め!」


「ちょっ、誤解されそうなこと言うな! え、魔王救えるの?」


「救える。」


「そっかぁ……分かった、出来ることは手伝う。」


「まず他言禁止な。したら幽閉する。」


「しない。……が、一応何かで縛っとくか。操られたら怖いからな。ロレンスはその辺大丈夫か?」


「多分。駄目だったときは全部知られるから……って考えるとなるほど? 確かに俺しか見つけてなかったのかもしれん。」


「…………今、凄く不愉快な会話をしませんでしたか?」


「してないですはい。まあ、そんな未来の可能性もあるだけです。とにかく、これが仲間に加わったので扱き使ってください。俺が許します。」


「よろしくお願いします。」


「…………本当に大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃなかったら俺の責任。ちゃんと調ky……もとい教育しておく。ほら、いつまで転がってるつもりだ?」


「あのですねロレンスさん。俺これ身動き取れないんです。」


「気合いだそんなもの。……ほら、ほどけた。」


「……改めてすいませんでした!」


「すいませんでした。」


「…………もういい。だが私も一発。」


「私もやらせていただきますわ。」


「私も一発……。」


 ということで全員からビンタをもらって顔の腫れた男が一人生まれたところで俺達の初めての文化祭は幕を閉じた。




 現在、午後6時。色々処理を終えて研究室。


 例の男、セドリックとはまた話すことにして帰した。その後解散し、今は四人だけだ。


「先生と会長は良いんですか?」


「あぁ。見ての通り今、今回の騒動の報告書を作っているよ。」


「私はまた忙しくなりそうな予感に辟易してますけど今日のお仕事は終わらせてきましたぁ。明日は修羅場ですねぇ。」


「明日の執行部はどうですか?」


「とんでもない速度で処理してくれた後輩がいるから問題ない。明日はゆっくり休め。」


「……ところで先輩。風呂入るまでは抱きつくの我慢してもらえませんか?」


「朝酷い態度を取ったから言うこと聞かない。」


「あれは本当すいません。」


「もっと頼って。」


「もう十分頼ってますよ。朝は寝不足で少しイライラして当たってしまったんです。すいませんでした。」


「……貴方が離れていってしまったら一年後や二年後に三年間一緒にいたって言えなくなる。時間はこれから積み重ねていけば良い。でも信頼はもうしてくれてると思ってた。まだしてなかった。」


「信頼してますって。」


「だって結局寝れないほど緊張して今だって甘えてくれない。失敗したら多分自分を責めて私には背負わせてくれない。」


「………………格好つけたいお年頃なんですよ。」


「なら格好つけないで。そのままで十分格好いいから。」


「嫌です。」


「頑固者。」


「なんとでも言ってください。」


「…………今日は何をしても動揺しないのは何で?」


「あー……反応する気力が無いんでしょうね。朝も驚きはしましたが嬉しくは……おかしな話ですね。」


「じゃあこのままでもいい?」


「…………はぁ。分かりました、いいですよ。」


「やった。」


「…………ズルいよなぁ、いつもいつも。役がいいんだから。」


「会長は今度デートしましょうね。先生も。しばらくは緊張しなくて済みますから。」


「……私だってたまにはプラトネスのように接したい。外だと出来ないからここがいい。」


「…………わかった。私、引っ込んでる。覗かない。」


「私は遠慮しておきますぅ。襲っちゃいますのでぇ。」


「襲われるんですか。」


「そうですよぉ。疲れてると人肌が恋しくなるんですよねぇ。」


「人肌にあまり触れたことのない先生が何か言ってる……。」


「無くてもそうなるんですよぉ。もう肌寒いですからねぇ。一人寂しい夜だってあるんですよぉ。……あ、じゃあ一晩先生のお部屋にいらっしゃいなぁ。」


「……教諭と二人きりで同じ部屋にいさせるのは危険だと思う。」


「そもそも教員の私室に生徒が入ったと分かればただではすまないな。私も普通に物申す。」


「じゃあロレンス君のお部屋にぃ……。」


「二人きり、駄目。」


「なにもしませんよぉ。私は我慢出来る大人なんですぅ。」


「……そういえば後輩君は年上好き?」


「んー……俺の初恋は先生でしたね。今世は伏せます。」


 角が立つからね。伏せとこ。


「年下は?」


「魅力的な年下の異性に出会ったことないですね。同級生も然りです。恋愛というもののイロハを知らない若造なんですよ。」


 いや、テクニックとしてなら知ってるよ? 知ってるけどゲームになっちゃう。本気の恋にはならない。


 師匠は運命の相手に巡り会えば自ずと恋に落ちるなんて言ってたけど……。


「……もしかして私達も恋愛とは違う?」


「そうですね。燃え上がるような感じではないです。ただ慈しみたいですね。」


「……なら異性として見てもらわないとヤバイ?」


「普通に尊敬してますから大丈夫です。貴方の好きなところ10個言えって言われたら言えますよ。」


「…………分かった。なんでこんなに不安なのか。そっか、そういうこと。」


「どういうことですか?」


「ねぇ、後輩君?」


「はい?」


「私は君を逃がさない、絶対に。どんな手を使ってでも必ず手に入れる。君は確かにあの師匠の弟子だよ。でもだからこそ、最後には私を止まり木にしてね。私は貴方を落とすから。」


 ……先輩は柔らかいな。



 続きます。


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